Victor FB-7
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥179,000
1976年にビクターが発売したフロア型スピーカーシステム。同社が1975年より発売していたFB-5
の上級機といった位置づけでした。1975年より各社からバックロードホーン型が相次いで発売され,
一種の流行が起こりました。その中でも,オーディオメーカー製の業務用ではないスピーカーシステム
としては数少ないバックロードホーン型の高級機として異彩を放っていた1台でした。
ウーファーには,アメリカのホーレー社製の軽量・高剛性コーン紙を使用した30cmユニットを搭載し
ていました。このウーファーユニットは,等価質量が35gに満たないきわめて軽い振動系を総磁束
339,000マックスウェル,磁束密度12,000ガウスに達するアルニコVリング・マグネットの内磁型
磁気回路で駆動するもので,小入力から大入力までリニアリティに優れた高能率タイプでした。ボイス
コイルは直径100mmのエッジ・ワイズド巻きのもので,特殊鋼製の一体型ボトムヨーク,アルミダイキ
ャストの堅牢なフレームなど,200Wの大入力に耐えるキャパシティを誇りました。
トゥイーターは,開口径100mmのアルミ製のエクスポーネンシャル・ホーン(断面が円形または楕円形
のホーン)をもつコンプレッションタイプのものが搭載されていました。ダイアフラムは,アメリカ製の耐蝕
アルミニウムを使用し,機械歪みの少ないビクター独自のエア成型法で精密に加工されたものが搭載
されていました。磁気回路は,ウーファーと同様にボトム・ヨークの内磁型で,アルニコマグネットを使用
し,磁束密度は14,000ガウスに達するものでした。また,ホーン開口部には,ドリップ(水滴)形イコラ
イザーが通常のスロートイコライザーに対向した位置に設けられ,音像を前進させる働きにより,ホーン
の奥から音が聞こえる現象やホーン臭さを抑え,指向特性を改善していました。
エンクロージャーは,響きが美しいといわれる針葉樹系高密度パーティクル・ボードで,ホーン開口部の
曲線部分は特殊な熱成型合板を使用してスムーズな曲面を実現していました。エンクロージャーの形式
は,カットオフ周波数35HzのCW(Constant Width=幅が一定な)ホーンで,コンピュータ制御のNC
ルーターによって0.01mmの精度で加工され,正確に組み立てられたものでした。また,移動に便利な
キャスター付きとなっていました。
ネットワークは,ケイ素鋼板コア入りの低損失・ハイQコイルとネットワーク専用に設計されたコンデンサー
等で構成されていました。特にハイパス・フィルターには誘電損失が無極性ケミコンの1/100,一般的な
フィルム・コンデンサーの1/10という新開発のフィルムコンデンサーが用いられていました。
以上のように,FB-7は,バックローディングホーンという特徴的なエンクロージャーを持ち,100dBを超
える圧倒的な能率の高さを誇りました。そして,ホーン臭さの少ない,バランスが良く,明るく力強い音を持
った実力機でした。