F-007の写真
PIONEER F-007
FM STEREO TUNER ¥95,000

1977年にパイオニアが発売したFM専用チューナー。同社が「クォーツロックシンセサイザー方式」と称していた
チューナーで,水晶発振器を利用してローカル発振周波数をロックするシンセサイザー方式ながら,5連バリコン
を搭載しているというもので,シンセサイザー方式とバリコン方式の両者のメリットを生かそうとした高性能チュー
ナーでした。

F-007の「クォーツロックシンセサイザー方式」のチューニングシステムはなかなかユニークなものでした。目盛
板と一体になっているコードパターンのビットに光を当てて,それをフォトトランジスターで読みとり,ローカル発振
周波数を指令する「フォトロジック方式」を採用していました。9個のフォトトランジスターと2個のランプを内蔵した
指針に来た位置のビットがローカル発振周波数を指令するため,目盛りズレがなく,しかも,水晶振動子でつくる
規準周波数とローカル発振周波数を分周したものを位相比較してローカル発振周波数をロックする「クォーツシン
セサイザ」であるため,高い精度のチューニングができ,ドリフト(周波数ズレ)も発生しないというものでした。
さらに,ダイヤルチューニングの採用によって,RF増幅部には選択度特性の高くとれる5連バリコンを搭載し,高
い妨害排除能力を実現していました。

シンセサイザー方式のチューナーで重要となるローカル発振回路は,バリキャップ(可変容量ダイオード)を2個搭
載したツインバリキャップとなっていました。これは,VCOの発振周波数をコントロールするバリキャップを1個で76
〜90MHzの全帯域をカバーすると,低い周波数帯域では低い電圧で使用することとなり,SN比が低下するため
バリキャップを2つにして,76〜83.2MHzと83.3〜90MHzに2分してバリキャップの受け持ち周波数範囲を
狭くしてSN比を改善するというものでした。

検波器は,従来からパイオニアが搭載してきた超広帯域直線検波器をさらに改良し,SN比,検波効率をともに
6dBアップさせた「パラレル・バランスド・リニア・ディテクタ」を搭載していました。F-007では,この検波器を,IF
部のWIDE,NARROWの両方に採用し,20〜15,000Hzの全帯域にわたって低歪み率を実現していました。

MPX部には,PLL回路に,19kHzのパイロット信号とともに,コンポジット信号(音声用の合成信号)が送られる
ことによりビートや変調歪みが発生することを防ぐために,純粋にパイロット信号だけを取り出してPLL回路に加え
る「クリーンパイロットシステム」が搭載され,すぐれた高域の音質と高いセパレーションに寄与していました。

MPX後不要になるパイロット信号が再生音に影響を与えないために「パイロット信号オートキャンセル回路」が搭
載されていました。これは,8%〜10%とレベルが必ずしも一定ではないパイロット信号の送信レベルの変動に
も自動的に追従して確実に打ち消すパイオニア独自の回路で,キャリア信号を減衰させるローパスフィルターにも
共振点を23kHzと十分な高域に設定したものを使用でき,20Hz〜15,000Hzと+0.1dB,−0.3dBと,高
域の周波数特性の改善を実現していました。

機能的にはオーソドックスで,20dBf〜100dBfまで直読できるシグナルメーター,RECレベルチェック,ミューテ
ィングスイッチ,マルチパス出力端子などが搭載されていました。

以上のように,F-007は,パイオニアがシンセサイザー方式へと移行する黎明期に登場した高級機で。アナログチ
ューナーのよさとシンセサイザー方式の良さをあわせもったような1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


フォトロジック方式・クォーツシンセサイザー
光が受信周波数を指令。
同調精度を一段と高めました。
◎水晶の精度を応用したクォーツシンセサイザー方式。
◎同調の目盛りずれがなく,しかも高い妨害排除能力を
 発揮するフォトロジック方式。
◎81dB(ステレオ)の高SN比を得て,
 より高い基本性能を実現。
◎音質を大きく左右する検波回路には,
 パラレル・バランスド・リニア・ディテクターを導入。
◎高域の音質とセパレーションを向上させた
 クリーンパイロットシステム。
◎送信レベルの変動にも確実に追従する
 パイオニア独自のパイロット信号オートキャンセル回路。
 
 

●主な仕様●
 

■FM部■


 
SN50dB感度 2.8μV  新IHF14.1dBf(モノ) 
35μV   新IHF36dBf(ステレオ) 
実用感度 1.8μV  新IHF10.3dBf
SN比 84dB(モノ,80dBf入力時) 
81dB(ステレオ,80dBf入力時)
高調波歪率 WIDE   モノ:0.04%(1kHz)
    ステレオ:0.05%(1kHz)
NARROW 
       モノ:0.08%(1kHz) 
    ステレオ:0.15%(1kHz) 
キャプチュアレシオ WIDE:0.8dB  NARROW:1.5dB
実効選択度 WIDE   :35dB(400kHz) 
NARROW:70dB(300kHz) 
ステレオセパレーション WIDE:55dB(1kHz) NARROW:50dB(1kHz)
周波数特性 20Hz〜15kHz+0.1dB,−0.3dB
イメージ妨害比 120dB
IF妨害比 120dB
スプリアス妨害比 120dB
AM抑圧比 65dB
サブキャリア抑圧比 75dB
ミューティング動作レベル 5μV,新IHF19.2dBf)
アンテナ入力インピーダンス 75Ω不平衡形

 

■出力部■


 
出力レベル/出力インピーダンス FM(100%変調) 650mV/2.2kΩ(FIXED) 
            50mV〜1.3V/3kΩ(VARIABLE)

 
 

■電源部その他■


 
電源電圧 AC100V 50/60Hz 
消費電力 21W(電気用品取締法)
外形寸法・重量 420(W)×155(H)×376(D)mm・9kg
※本ページに掲載したF−007の写真,仕様表等は1979年3月の
 PIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用
 等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。                        
 

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