Ａ＆Ｄ ＤＡ-Ｆ９０００
ＱＵＡＲＴＺ ＳＹＮＴＨＥＳＩＺＥＲ ＴＵＮＥＲ ￥５９，８００
１９８８年にＡ＆Ｄが発売したシンセサイザーチューナー。Ａ＆ＤはＡＫＡＩとＤＩＡＴＯＮＥ（三菱）が共同で
立ち上げたオーディオブランドで，ＡＫＡＩ以来の伝統の高性能なデッキをはじめ，ＤＡＴ，アンプなど魅力
的な機器を発売していました。チューナーではあまり知られていなかったＡＫＡＩとＤＩＡＴＯＮＥでしたが，
このＤＡ-Ｆ９０００は使いやすく高性能な実力派のチューナーでした。
フロントエンドは，オールＭＯＳ ＦＥＴ構成で，５連バリコン相当になっていました。とくにＲＦ部，ミキサー
部にはデュアルゲートＭＯＳ ＦＥＴを搭載して，過大入力に対しても強い設計になっていました。
ＩＦ段のＷＩＤＥ/ＮＡＲＲＯＷ両回路にリニアフェイズフィルター，検波段には効率のよいショットキーバリア
ダイオードなど，受信回路の各ステージには当時最新のディバイスが投入されていました。
アンテナ入力はＡ／Ｂ２系統を備え，その切換はＰＩＮダイオードによる純電子式となっていました。
ＤＡ-Ｆ９０００の大きな特徴は，オーディオ機器としてオーディオ部の充実が図られていたことでした。オ
ーディオ部の中心にあたるマルチプレックス回路には，ＮＦＢを排したシンプルな無帰還型ＤＣアンプで構
成した「オープンループサーキット」を採用していました。しかも，完全ディスクリート構成というチューナー
としては贅沢な構成となっていました。
また，検波段より出力まですべてのカップリングコンデンサーを排除し，２ポールのＤＣサーボをかけるこ
とで，５Ｈｚという超低域までの再生能力を実現していました。
さらに，いっそう伸びのある高域再生を確保するために，パイロットキャンセル回路およびローパスフィル
ターのゼロ周波数を２０ｋＨｚに設定し，低域から高域まで十分ワイドな周波数特性を実現していました。
電源部は，オーディオ部と高周波部がトランスの巻線から完全独立された構成で，整流回路は３系統，
さらに，安定化電源回路を，マイコン用，ディスプレイ用，高周波用など合計５カ所に独立することで，電
源まわりの相互干渉を抑えていました。また，電源トランスを３mm厚のアルミ板，フロントエンド基板も
２mm厚のアルミ板に固定したほか，大型ペデスタル，サイドウッドなどコンストラクションの面でもしっか
りした作りとなっていました。
機能的には，Ａ/Ｂアンテナ切換，ＷＩＤＯ/ＮＡＲＲＯＷのＩＦバンド切換，電波状態に応じて左右チャンネ
ルのブレンド量を３段階に切り替えられるブレンドコントロール，高域ノイズをカットするハイカットフィルター
が備えられ，２０局ランダムプリセット機能を備えていました。また，プリセット局を選ぶだけで，これらの
Ａ/Ｂアンテナ切換ＩＦバンド切換，ブレンドコントロール，ハイカットフィルターを自動的に最適ポジションに
設定するマルチモードレセプションが装備されていました。また，４秒間隔で記憶した放送局を順番に自
動選局するプリセット・チャンネル・スキャン，タイマーとの組み合わせで，３局まで放送局を変えてエア
チェックができるシーケンシャルステーションコントロールなども搭載されていました。
以上のように，ＤＡ-Ｆ９０００は，シンセサイザーチューナーとして優れた受信性能とオーディオ機器とし
ての優れた音質，機能性を実現していた，使いやすいチューナーでした。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
