DA-300の写真
STAX  DA-300
STEREO DC POWER AMPLIFIER ¥570,000

1974年にスタックスが発売したパワーアンプ。1938年に昭和光音工業として創立されたスタックスは
現在「イヤースピーカー」と称されるコンデンサー型ヘッドホンで有名なブランドですが,創立以来,コンデ
ンサー型のマイク,カートリッジ,スピーカー,ヘッドホンなどを頑固に作り続けてきたブランドで,多数派
ではないものの,独特の高品位な音は熱心なファンをつくってきました。そんなスタックスがいくつかの機
種のアンプを作ってきたことも知られています。そして,他社とはひと味違った個性的なものが多かった
のも事実でした。そんな中で,このDA-300は,スタックス初のトランジスターアンプの製品であり,初の
パワーアンプでもありました。

DA-300の最大の特徴は,純A級動作で150W+150Wという大出力を実現していたことでした。当時
はもちろん,現在でも純A級動作でこれだけの大出力をもつパワーアンプは数少なく,このDA-300は,
あのマークレビンソンも所有し,後に同社が発売した純A級パワーアンプML-2Lにも何らかの影響を与
えたといわれています。

DA-300の出力段は,チャンネルあたりシリコン・トランジスター12個による6パラレルプッシュプルで,
低歪み(THD0.02%以下)のトランジスターの使用により,すぐれた特性を実現していました。
また,段間だけでなく入力側,出力側も含め信号経路からコンデンサーを追放したDCアンプ構成で,0Hz
〜500kHzの広帯域にわたって位相特性,歪み率をはじめ,すぐれた性能を発揮するようになっていまし
た。

DA-300のブロックダイアグラム

電源部には,1kVAもの容量を持つ大型の高品質なカットコアトランスと33,000μFのケミコン×2が搭
載され,定電流回路とあいまって安定した動作が確保されていました。以上のような強力な出力段と電源部
等により,2Ω以上のスピーカーに対して安定した動作を確保し,1000以上ものダンピングファクターを実
現していました。
また,入力段にはデュアルFETが使用され,ドリフト(電源電圧/時間/温度/信号源インピーダンス)が極少
に抑えられ,入力インピーダンスは,各種のプリアンプに適合できる100kΩに設定されていました。

DA-300の内部

奥行きより高さが大きいパワーアンプとして独特な筐体は,非常に個性的な外観をもたらしていました。
フロントパネル上にはL・R独立のVUメーターが設けられ,スイッチにより0dB,−10dB,−20dBにレン
ジが切替えられるようになっていました。また,小音量で聴く場合に,最大出力と同時に消費電力を1/4
に節約できるパワー・リミッタースイッチも備えられていました。L・R独立の入力レベル調整は,信頼性の
高いスイッチ式アッテネーターが使用されていました。

以上のように,DA-300は,一見個性的ながら,しっかりと正攻法で作り上げられた,スタックスの思いが
込められた力作でした。同社が発売していたコンデンサー型スピーカーは,一般的にアンプの実力を要す
るといわれていますが,そんなコンデンサー型スピーカーを駆動することを考えて設計されていたDA-300
は各種のスピーカーに対しても高い実力を持っていたことは当然のことでした。同社の「イヤースピーカー」
にも通じる,どこか繊細な音は,神経質ととる人もいますが,独自の魅力を持ったものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



極点−それすらスタックスは原点と考えます。
原点か?極点か?

■DA-300の特長

1.忠実度
(1)歪率最小のトランジスターによるA級動作/完全なDCアンプ
 という回路設計で,150W+150Wの高出力。
(2)周波数特性/位相特性のいづれもきわめて広帯域。
(3)すぐれたスルーレイト/パワー・バンド・ワイズをもち,どのような
 プログラム・ソースも正しく再現。
(4)ダンピング・ファクター1,000以上。

2.使用部品
(1)電源部は極上の大型カット・コア・トランス(1kVA規格)および
 33,000μFのケミコン(2個)を使用。
(2)特に音質を微妙に左右する部品−抵抗/コンデンサー/トランジ
 スター等は,長期にわたるテストの結果,最良品を選択。

3.使いやすさ
(1)入力段にデュアルFETを使用。各ドリフト(電源電圧/時間/温度
 信号源インピーダンス)が極小であり,また入力インピーダンスが
 100kΩで,どのようなプリアンプにもマッチする。
(2)2Ω以上のスピーカー負荷に対し,常に安定に動作する。
(3)入力のレベル調整は高信頼性のSW式アッテネーター使用。
(4)電源スイッチはリモート・コントロール可能。
(5)小音量で聴く場合,最大出力と同時に消費電力もまた1/4に 
 節約できるパワー・リミッターをもつ。
(6)正確かつ見やすい大型VUメーターをもつ。

4.保護回路
(1)SP端子間をショートしてもアンプは安全。
(2)万一アンプが破損しても電源が自動的に切れるので,SPの
 ボイス・コイルは安全。
(3)最大出力に必要な入力1.7Vに対し,間違って50V加えても
 アンプは安全。
(4)周囲温度の異常上昇があれば,電源が自動的に切れてアン
 プは安全。





●DA-300の規格●

形式
オール・シリコン・トランジスター/ステレオ・パワー・アンプ
回路方式
±2電源使用
初段FET差動によるピュア・コンプリメンタリー方式
A級動作/DCアンプ
トランジスター
53石(内デュアルFET×2,デュアルTR×2)
ダイオード
25石(内ブリッジ・ダイオード×1)
入力感度
1.7V/最大出力時
入力インピーダンス
100kΩ/100pF
ダンピング・ファクター
1800/100Hz,700/1kHz
利得
26.3dB
最大出力
150W+150W
歪率
0.025%以下/20Hz&20kHz/150W出力時
0.01%以下/1kHz/150W出力時
負荷
2Ω以上/音楽再生時
4Ω以上/テスト時
パワー・バンド・ワイズ
75W/0.1%歪率/5Hz〜50kHz
スルー・レイト
20V/μsec
周波数特性
DC〜1MHz+0,−3dB/DCの場合
3Hz〜1MHz+0,−3dB/ACの場合
位相推移
−10°/100KHz
SN比
102dB
クロストーク
50dB/20kHz
電源ドリフト
±3mV ±10%
時間ドリフト
±25mV SW-ON後 10分で安定する
温度ドリフト
±10mV 0℃〜40℃
信号源ドリフト
検知不能
消費電力
700W(出力150W規格時)
*180W(リミッター使用/出力40W規格時)
発熱量
550Kcal/H
*150Kcal/H
放熱ファン・騒音レベル
40dB以下/距離1m
電源電圧
100V/115V/200V/230V,±10%
電源周波数
48〜62Hz
使用温度範囲
0℃〜40℃
最大入力電圧
50V(AC/DC共)
ショート保護回路
2Ω以下で動作
スピーカー保護回路
約±5Vで動作
温度保護回路
トランジスター・ケース温度/約120℃で動作
アイドリング電流ドリフト
約130%/SW-ON時 100%/ON後8分
ポップ・ノイズ
0.3V以下
外形寸法
428W×358H×250Dmm
重量
36kg


※本ページに掲載したDA-300の写真,仕様表等は1974年の
 STAXのカタログより抜粋したもので,有限会社スタックスに著
 作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 
★メニューにもどる            
 
 

★セパレートアンプPART5にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた 方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp