ONKYO D-7
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥59,800
1981年にオンキョーが発売したブックシェルフ形スピーカーシステム。オンキョーはもともと
スピーカーを中心に展開してきたブランドで,幅広いスピーカーシステムやスピーカーユニット
を製品化していました。1970年代までのオンキョーは,ノンプレスコーン,回転鍛造コーンな
どパルプコーンを中心に展開していました。そんな中,オンキョーが初めて全ユニットをパルプ
コーン以外の素材で作り上げたスピーカーシステム「Dシリーズ」の最上級機がD-7でした。
D-7の最大の特徴は,オンキョーとして初めて紙パルプ以外の素材で作り上げられた「デルタ
オレフィンコーン」による32cm口径のウーファーでした。オレフィンの名の通りオレフィン系樹
脂のポリプロピレン樹脂をベースにした振動板を採用していました。素材的に丈夫なわりに内
部損失も大きく固有の響きが少なく,その固有の響きが消えるのも早いという特徴があり,振
動板素材として一歩前進を見せたものでした。「デルタオレフィン」のデルタは,内部損失を表
す値であるタンデルタからとられた呼称でした。同年,先に発売されていたD-5のウーファー
が28cmであったのに対し,32cmという大口径化による有害な振動モード発生の可能性を
低減するために,コルゲーションが付加され,素直で豊かな低音再生を実現していました。
スコーカーは12cm口径のコーン形で,ウーファーと同じ「デルタオレフィンコーン」が搭載され
スムーズな音のつながりが確保されていました。駆動系は直径90mmの大型マグネットと銅
キャップを用いた磁気回路で構成され,高能率と低歪を実現していました。
トゥィーターは,2.5cm口径のドーム型で,オンキョーが
Monitor100Rで
開発・搭載したマ
グネシウム合金振動板が採用されていました。マグネシウムは,密度が実用金属中最小
(1.74g/cm3) で,しかも内部損失が他の金属より大きいという特徴を持つというもので,
そのため,他のチタンなどより厚みを持たせて剛性を高めても軽量で,かつ内部ロスの大きさ
から振動の減衰特性がすぐれているなど振動板として優れた性質をもっていました。また,D-7
では,フレームと一体となったイコライザーが搭載され,指向性,レスポンス等が改善され,明る
くクリアな高音再生を実現していました。
キャビネットは,L・R対称型で,エアサスペンション型(密閉型)の内容積62リットルのもので,
フロントバッフル上には,トゥイーター,スコーカー用のレベルコントロールが設けられていました。
以上のように,D-7は,いわゆる598クラスへのオンキョーの新しい挑戦が感じられた1台で
ユニットに新しい素材を導入したその音は,明るく素直に伸びた音で,確かに新しさを感じるも
のでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
理想的なダイアフラムの三重奏です。
32cm3ウェイ・D-7新登場。
◎デルタオレフィン・サウンドの決定版です。
トゥイータにはマグネシウム合金ダイアフラムも採用
◎コルゲーション付デルタオレフィンコーン・ウーファー
大口径32cmによる迫力の低音を再現します。
◎12cmデルタオレフィンコーン・スコーカ
◎2.5cmマグネシウム合金振動板トゥイータ
●主要定格●
形式
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3ウェイエアサスペンション型
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インピーダンス
|
6Ω
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最大入力
|
120W
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出力音圧レベル
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92dB/W/m
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再生周波数範囲
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30〜45,000Hz
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クロスオーバー周波数
|
500,3000Hz
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キャビネット容積
|
62リットル
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使用スピーカー
|
ウーファ:32cmデルタオレフィンコーン型
スコーカ:12cmデルタオレフィンコーン型
トゥイータ:2.5cmドーム型(マグネシウム合金振動板)
|
外形寸法
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387W×694H×334D(ネット含む)mm
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重量
|
21.5kg
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その他
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L-R対称型キャビネット,サランネット着脱式
スコーカ,トゥイータ用独立レベルコントロール
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ONKYO D-7R
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥59,800
1982年にD-7はD-7Rへとモデルチェンジされました。基本的にはエンクロージャー等同一
でしたが,搭載スピーカーユニットの改良が行われていました。
スピーカーユニットの口径やエンクロージャーサイズは全く同一ですが,ウーファーとスコーカー
に使用されたデルタオレフィン振動板の改良が行われていました。改良された振動板は新た
に「デルタオレフィン・リファインド」と称され,添加加工物の配合の見直しで剛性(ヤング率)が
約4倍に高められていました。
トゥィーターには,振動板に,初の樹脂蒸着に成功したマグネシウム合金が採用され,酸化防
止のためのコーティングを6μという極薄の均一なコーティングとする事でマグネシウムの物性
がより生かされるとともに高能率化が図られていました。
以上のような改良の結果,よりクリアな再生音が実現されていました。
●主要定格●
形式
|
3ウェイエアサスペンション型
|
インピーダンス
|
6Ω
|
最大入力
|
120W
|
出力音圧レベル
|
92dB/W/m
|
再生周波数範囲
|
30〜45,000Hz
|
クロスオーバー周波数
|
500,3000Hz
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キャビネット容積
|
62リットル
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使用スピーカー
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ウーファ:32cmデルタオレフィン・リファインドコーン型
スコーカ:12cmデルタオレフィン・リファインドコーン型
トゥイータ:2.5cmドーム型(マグネシウム合金ダイアフラム)
|
外形寸法
|
387W×694H×334D(ネット含む)mm
|
重量
|
21.5kg
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その他
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L-R対称型キャビネット,サランネット着脱式
スコーカ,トゥイータ用独立レベルコントロール
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ONKYO D-7RX
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥65,000
1984年にD-7RはD-7RXへとモデルチェンジされました。外観上もD-7,D-7Rに対して
変化がはっきりと見られ,中身もユニット,エンクロージャーの両面でかなりの変化があり
新しいモデルといってもいい内容となっていました。
ウーファーは,新たに「ピュア・クロスカーボン振動板」が採用されていました。「ピュア・クロ
スカーボン振動板」は,前年の1983年に発売された
MONITOR2000で開発・商品化さ
れたもので,軽量で高い強度を誇るカーボンファイバーの特性を生かしたままコーン状に
成形することに成功した画期的なものでした。カーボンファイバー(つまりカーボン繊維)を
平織りにし,それを繊維の方向をクロスさせて重ねることで全ての方向にカーボン特有の
剛性を発揮させるというものでした。MONITOR2000では34cmという大口径振動板と
するために3層重ねとなっていましたが,D-7RXのウーファーは32cm口径でやや小型
であることと,中級機ということで,45°角度をずらして2層に重ね,エポキシ系樹脂で接
着された構造がとられ,より軽量な振動板となっていました。
12cm口径のデルタオレフィンリファインド・スコーカー,2.5cm口径のマグネシウム合金
ドーム型トゥイーターはD-7Rから継承されていました。
エンクロージャーは,強力なピュアクロスカーボンウーファーの搭載等に対応して構造的強
度がより高められていました。また,ウーファーユニット,スコーカーユニットとエンクロージャ
ーの接触部に剛性を持った防振材(マイカとブチルゴムの混合材)を充填して,不要な干渉
を抑えるように工夫されていました。
さらに,エンクロージャーの大きな変更点として,従来のエアサスペンション型(密閉型)から
ポートを持つバスレフタイプに変更され,MONITOR2000でも採用された背面ポートが採
用され,自然で豊かな低音再生を実現していました。
以上のように,D-7RXは,D-7Rを継承しつつ,新たにMONITOR2000で開発された技術
的成果を取り入れ,その弟機といえそうな内容を持ち,よりクリアで力強い音を持った強力な
スピーカーとなっていました。そして次世代の598戦争のきっかけを作ったD-77へとつなが
る1台でもありました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
ピュア・クロスカーボンの解像力を
得て,あらゆるスピーカー技術が
進化
システムとして結実した最先進・
音楽感覚への解答・・・・RX。
32cmピュア・クロスカーボン・ウーファーを
ベースに,再生音の純粋化を目指した
正統派システム。
●主要定格●
形式
|
3ウェイバスレフ型
|
インピーダンス
|
6Ω
|
最大入力
|
150W
|
出力音圧レベル
|
92dB/W/m
|
再生周波数範囲
|
28〜45,000Hz
|
クロスオーバー周波数
|
500,3500Hz
|
キャビネット容積
|
58リットル
|
使用スピーカー
|
ウーファ:32cmピュア・クロスカーボン・コーン
スコーカ:12cmデルタオレフィン・リファインドコーン
トゥイータ:2.5cmマグネシウム合金ダイアフラム・ドーム
|
外形寸法
|
376W×680H×324D(ネット含む)mm
|
重量
|
21kg
|
その他
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L-R対称型キャビネット,サランネット着脱式
スコーカ,トゥイータ用独立レベルコントロール
|
※本ページに掲載したD-7,D-7R,D-7RXの写真,仕様表等は,
1981年9月,1983年5月,1984年2月のONKYOのカタログ
より抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権があります。
したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
で禁じられていますのでご注意ください。
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