ＳＡＮＳＵＩ ＣＡ-Ｆ１
ＳＴＥＲＥＯ ＰＲＥＡＭＰＬＩＦＩＥＲ ￥８０，０００
（別売専用ウッドケースＣＷ-１ ￥１０，０００）
１９７９年にサンスイが発売したプリアンプ。当時，各社から薄型の筐体のプリアンプが出されていまし
た。このＣＡ-Ｆ１もその中の１台で，高さ５０mmの筐体の中に「ダイヤモンド差動回路」など，サンスイ
自慢の技術が投入されたプリアンプでした。
イコライザーアンプ部は，ダイレクトカップル方式による「ダイヤモンド差動回路」搭載のＤＣ構成となって
いました。「ダイヤモンド差動回路」は，動特性の改善のためにサンスイが開発したもので，ＮＰＮ-ＰＮＰ
トランジスターで構成した差動増幅回路２組をシンメトリカルに配し，それぞれを対称の入力信号で駆動
させるもので，強力なドライブ能力を持った差動回路構成で，後のサンスイアンプにも使われている優れ
た回路でした。
初段は，ペア特性が良く，ローノイズ，ハイｇｍ，デュアルＦＥＴ使用の差動入力回路を採用し，入力イン
ピーダンスの影響を受けないカスコード・ブートストラップ回路を構成していました。また，ＮＰＮ-ＰＮＰトラ
ンジスターの組み合わせによる２段直結回路で構成した定電流回路により優れた動特性を確保していま
した。２〜３段目はダイヤモンド差動回路＋電流差動プッシュプルで構成し，出力段はダーリントン接続に
よるＳＥＰＰ回路で十分な電流の余裕と，低出力インピーダンス，低インピーダンスＮＦ回路設計による負
荷インピーダンスの変化に対する十分な余裕が確保されていました。
ＭＣカートリッジに対しては，ＭＣヘッドアンプが搭載されていました。ＣＡ-Ｆ１のヘッドアンプは，サンスイ
オリジナルのプッシュプル入力，プッシュプル出力による対称回路設計で，サンスイが世界で初めて開発
した，ローノイズ，ハイｇｍによるＰチャンネル，ＮチャンネルＦＥＴを組み合わせたパラレル接続で，しかも
シンメトリカル・サーキットをさらに進化させた対称回路を採用していました。動特性を大幅に改善したダイ
レクト・カップル方式で，左右チャンネル独立電源供給により，微少入力から過渡的な大入力まで安定し
た動作を実現していました。同時にＳＮ比重視のローノイズ設計で，定格入力０．１ｍＶに対して，入力換
算雑音−１５５dBＶを実現していました。
フラット/トーンアンプ部も，入力コンデンサーを排除したダイレクト・カップル方式のＤＣ構成となっていまし
た。初段は，新開発のローノイズ，ハイｇｍのデュアルＦＥＴによるカスコード接続，定電流付差動回路，
２段目は，カレントミラー付電流差動プッシュプル回路，出力段は，２段ダーリントン接続によるＳＥＰＰ構
成で，優れたオープンループ特性を実現していました。トーンコントロール回路はＮＦ型で，トーンコントロ
ール回路をパスする，トーンディフィートスイッチも装備されていました。
全体的なコンストラクションは，モノフォニック・コンストラクションで，左右独立配置でシンメトリカルな回路
構成をとっていました。スイッチ類にも左右独立のウエハーを使用するなど，セパレーションの改善を徹底
したコンストラクションになっていました。また，回路基板のパターンだけでなく，ジャンパー線も要所に使
用して動特性の向上を図っていました。
電源部には，特殊仕様の超薄型のトロイダルトランスを新開発して搭載していました。薄型ながら強力な
電源供給能力を発揮し，各ブロックに十分な余裕を持って電源供給を行い，低インピーダンスを実現してい
ました。
以上のように，ＣＡ-Ｆ１は，薄型のシンプルな筐体の中に，サンスイらしいこだわりを見せる中身を持った
使いやすいプリアンプでした。手ごろな価格ながら，しっかりしたクリアな音を持った１台でした。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
