Ｎａｋａｍｉｃｈｉ ＣＡ−７０
ＣＯＮＴＲＯＬ ＡＭＰＬＩＦＩＥＲ ￥３８０，０００
ナカミチが１９８６年に発売した高級コントロールアンプ。パワーアンプＰＡ−７０とペアになる設計でしたが単体
としても操作性，性能の優れたコントロールアンプでした。「ＳＹＳＴＥＭ ７０」という一種の高級コンポーネントシ
ステムを構成する製品としても作られており，リモコンでシステム全体をコントロールする機能もあわせもってい
ました。ＣＡ−７０は，パワーアンプＰＡ−７０と同様に多量のＮＦＢに頼らず，シンプルな回路構成で正確な信号
伝送を行うという設計になっていました。各セクションは，入力段にローノイズＦＥＴを採用し，終段はシンプルで
大きな電流供給能力を持つカレントブートストラップ付きエミッタフォロワーで構成し，ＤＣサーボ以外は高精度な
ディスクリートパーツを使用し，全段ＤＣアンプとしていました。ＭＣヘッドアンプは，徹底してローノイズ化を図るために，ローノイズ化の難しい一般的な差動入力を避け，超
Ｈｉ-gmＦＥＴによる片チャンネル当たり５パラレルのプッシュプル入力構成を採用し，また，信号系の抵抗値を最
小限に抑えてＳ／Ｎ比を高めていました。さらに，ＭＣヘッドアンプ専用のトランス巻線を設置し，他セクションか
らの干渉を抑えていました。イコライザーアンプとラインアンプは，差動アンプのもつリニアリティの良さを生かして，初段をデュアルＦＥＴによ
る差動入力，２段目もバイポーラトランジスタ−による差動増幅とした，２段差動アンプ構成を採用していました。
各アンプセクションの終段は，通常のカスケード接続よりシンプルな構成で大電流の得られるカレントブートスト
ラップ付きエミッタフォロワーを採用し，大電流を供給しながら，動作は完全なＡ級動作を保持する構成になって
いました。電源部は，各チャンネル間，ステージ間の相互干渉を抑えるために「マルチレギュレーテッド・パワー
サプライ」および「アイソレーテッドグランド方式」という技術を採用していました。「マルチレギュレーテッド・パワ
ーサプライ」は，レギュレーターを２段で使用する方式で，電源トランスの巻線および整流器をイコライザアンプ／
ラインアンプ用とＭＣヘッドアンプ用に分離し，電源は一旦マスターパワーレギュレーターにによって定電圧化さ
れた後，ＭＣヘッドアンプ，イコライザーアンプ，ラインアンプのＬ／Ｒチャンネルごとに設けられたローカルパワー
レギュレーターによって再び定電圧化され，各アンプ部に供給されるという方式でした。２段構えにすることによ
って，ひとつのアンプ部の動作が引き起こす電圧変動が他のアンプ部に影響を及ぼしにくくなるという方式でし
た。「アイソレーテッドグランド方式」は，＋→Ｇ→−という電流の流れによるグランドラインを通じての干渉を防ぐ
ために，電源ラインにＦＥＴによるバッファを組み込むことで，電流を＋→−というように流し，信号電流とアースラ
インを切り離し，グランドはアンプの電位を正確に保つためだけにはたらくという方式でした。コンストラクションの
うえからもプログラムソースの切替を入力端子と最短距離に設置されたクロスバーツイン方式のリレーで行って
信号系のシンプル化とストレート化を図り，Ｌ／Ｒツインモノ構造として優れたチャンネルセパレーションを実現し
ていました。
ＣＡ−７０はプリアンプとしての高性能に加え，コントロールアンプとしての多機能性も追求し，多彩な機能を搭載
していました。トーンコントロール機能として，ＡＦＴ（Ａｃｕｓｔｉｃａｌ Ｆｉｎｅ Ｔｕｎｉｎｇ）を搭載していました。これは，Ｌｏｗ
（２５Ｈｚ），Ｍｉｄ（２５０Ｈｚ），Ｈｉｇｈ（３０ｋＨｚ）の３ポイントで，０．５dbステップで±５dBの調整が可能なもので，一
般的なボリュームを用いずに，高信頼性の２１ステップロータリースイッチ，金属皮膜抵抗，フィルムコンデンサー
ローノイズＦＥＴ，トランジスターによるディスクリート構成のトーンコントロ−ルでした。また，ワイヤレスリモコンを装
備し，離れたところからの操作はもちろん，接続された「ＳＹＳＴＥＭ ７０」のコンポーネント（ＣＤプレーヤー，２台の
カセットデッキ，ＦＭチューナー）の基本操作もできる機能を持っていました。また，リモートコントロールのためのマ
イクロプロセッサーの悪影響を抑えるために，ロジック回路とリレーパートの間に１０系統のフォトカプラーを挿入し，
電気的に遮断していました。また，他の機器との間にピンコード以外に接続されるリモートコントロールケーブルに
よる相互干渉を抑えるために，リモートコントロ−ル端子とマイクロプロセッサーの間に３０系統ものフォトカプラーを
挿入して，電気的な遮断を図っていました。さらに，ロジックパートや電源パートをアルミシールド内に完全密封し，
アルミシールドパネルの多用とあわせて，シールド対策を徹底していました。パーツも厳選された高品位なものが投入されていました。ボリュームには，抵抗体に高精度なディテントタイプを採
用し，シールドによりボリュームユニット内でのＬ／Ｒ間のチャンネル間相互干渉を排除していました。リモコンによる
モータードライブ方式の欠点を避けるため，モーターと抵抗体の間に十分な距離をとり，ツマミのシャフトと抵抗体の
シャフトを分離してシャフトどうしを特殊なフレキシブルジョイントで接続し，モーターノイズや振動をシャットアウトし，
外部の音圧などの振動の影響も吸収する構造になっていました。バランスボリュームは，各チャンネル１０本の金属
皮膜抵抗によるディスクリート構成とし，抵抗を２１クリック，０．５dBステップで切り換える方式を採用していました。
増幅素子では，ＭＣヘッドアンプに超Ｈｉ-gmＦＥＴを，イコライザーアンプ／ラインアンプには特性の揃ったＦＥＴを採用
していました。受動素子では，金属皮膜抵抗，黄銅金メッキキャップ・カーボンモールド抵抗，精密な良質フィルム複
合巻コンデンサーなどを多量に投入していました。電源トランスは，アンプ系ロジック系それぞれに専用のトロイダル
トランスを搭載してました。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
ハイエンド・オーディオを，
もっと人間に近く。
パフォーマンスとコンビニエンスを
両立した次世代アンプ，ＣＡ−７０
| ◎多量のＮＦＢを排し，裸特性の向上と
ピュアな信号伝送に徹した回路構成。 |
| ◎チャンネル間，ステージ間の相互干渉を抑えた
独創の電源構成。 |
| ◎クオリティ劣化を抑えた音場補正システム
ＡＦＴ（Ａｃｏｕｓｔｉｃａｌ Ｆｉｎｅ Ｔｕｎｉｎｇ）。 |
| ◎相互干渉を徹底排除するコンストラクション。 |
| ◎近未来オーディオの予感を現実のものとする
トータルシステムコントロール。 |
| ◎音質を落とさずにコンビニエンスを実現する，
入念なロジック／アンプ系の分離対策。 |
| ◎特性と聴感で吟味を重ねた
高品位パーツを積極的に投入。 |
| ◎内外のカートリッジに幅広く対応。 |
| 入力感度／インピーダンス | Ｐｈｏｎｏ ＭＣ（ゲイン３６dB） ４０μＶ／１００Ω
（ゲイン３０dB） ８０μＶ／１００Ω （ゲイン２４dB） １６０μＶ／１００Ω Ｐｈｏｎｏ ＭＭ ２．５ｍＶ／５０ｋΩ Ｔｕｎｅｒ/ＣＤ/Ａｕｘ/Ｔａｐｅ １５０ｍＶ／１２．５ｋΩ |
| 入力感度（新ＩＨＦ） | Ｐｈｏｎｏ ＭＣ（ゲイン３６dB） １０μＶ
（ゲイン３０dB） ２０μＶ （ゲイン２４dB） ４０μＶ Ｐｈｏｎｏ ＭＭ ０．６２５ｍＶ Ｔｕｎｅｒ/ＣＤ/Ａｕｘ/Ｔａｐｅ ３７．５ｍＶ |
| 最大入力レベル
（１ｋＨｚ，ノンクリップレベル，新ＩＨＦ） |
Ｐｈｏｎｏ ＭＣ（ゲイン３６dB） ５ｍＶ
（ゲイン３０dB） １０ｍＶ （ゲイン２４dB） ２０ｍＶ Ｐｈｏｎｏ ＭＭ ３２０ｍＶ |
| 出力レベル／インピーダンス | Ｐｒｅ Ｏｕｔ ２Ｖ／１ｋΩ
Ｒｅｃ Ｏｕｔ １５０ｍＶ／２００Ω |
| 最大出力レベル | ７Ｖ（２０〜２０，０００Ｈｚ，１％ＴＨＤ，Ｐｒｅ Ｏｕｔ，新ＩＨＦ） |
| 全高調波歪率 | Ｐｈｏｎｏ ＭＣ→Ｒｅｃ Ｏｕｔ，１Ｖ（ゲイン３６dB） ０．００４％以下（２０〜２０，０００Ｈｚ）
（ゲイン２４dB） ０．００２％以下（２０〜２０，０００Ｈｚ） Ｐｈｏｎｏ ＭＭ→Ｒｅｃ Ｏｕｔ，１Ｖ ０．００２％以下（２０〜２０，０００Ｈｚ） Ｔｕｎｅｒ/ＣＤ/Ａｕｘ/Ｔａｐｅ→Ｐｒｅ Ｏｕｔ，２Ｖ ０．００２％以下（２０〜２０，０００Ｈｚ） |
| 周波数特性 | Ｔｕｎｅｒ/ＣＤ/Ａｕｘ/Ｔａｐｅ １〜１００，０００Ｈｚ ＋０，−３dB
１〜２０，０００Ｈｚ ＋０，−０．２dB |
| ＲＩＡＡ偏差 | Ｐｈｏｎｏ ＭＭ ２０〜２０，０００Ｈｚ ±０．２dB
Ｐｈｏｎｏ ＭＣ ２０〜２０，０００Ｈｚ ±０．２dB |
| Ｓ／Ｎ比（ＩＨＦ Ａ-ＷＴＤ） | Ｐｈｏｎｏ ＭＣ（０．５ｍＶ入力，０．５ＶＰｒｅ Ｏｕｔ，入力ショート）
（ゲイン３６dB） ８７dB以上 （ゲイン３０dB） ８６dB以上 （ゲイン２４dB） ８４dB以上 Ｐｈｏｎｏ ＭＭ（５ｍＶ入力，０．５ＶＰｒｅ Ｏｕｔ，入力ショート） ８８dB以上 Ｔｕｎｅｒ/ＣＤ/Ａｕｘ/Ｔａｐｅ（０．５Ｖ入力，０．５ＶＰｒｅ Ｏｕｔ，入力ショート） ９４dB以上 |
| ステレオセパレーション
（１００Ｈｚ／１ｋＨｚ／１０ｋＨｚ） |
Ｐｈｏｎｏ ＭＣ（０．５ｍＶ入力，０．５ＶＰｒｅ Ｏｕｔ，入力ショート）
（ゲイン３６dB） ９５／１００／９０dB （ゲイン２４dB） ９０／１００／９０dB Ｐｈｏｎｏ ＭＭ（５ｍＶ入力，０．５ＶＰｒｅ Ｏｕｔ，入力ショート） １００／１０５／９５dB Ｔｕｎｅｒ/ＣＤ/Ａｕｘ/Ｔａｐｅ（０．５Ｖ入力，０．５ＶＰｒｅ Ｏｕｔ，入力ショート） １２０／１１０／１００dB |
| ＡＦＴ（Acoustic Fine Tuning）特性 | Ｌｏｗ ２５Ｈｚ±５dB（０．５dBステップ）
Ｍｉｄ ２５０Ｈｚ±５dB（０．５dBステップ） Ｈｉｇｈ ３０ｋＨｚ±５dB（０．５dBステップ） |
| オーディオミュート | −２０dB |
| リモート電源Ｏｎ／Ｏｆｆコントロール出力 | ２４Ｖ ＤＣ |
| 電源 | １００Ｖ ５０／６０Ｈｚ |
| 消費電力 | 最大４２Ｗ |
| 大きさ | ４３５（幅）×８２（高さ）×３１０（奥行）mm |
| 重さ | 約７．２kg |
※本ページに掲載したＣＡ−７０の写真，仕様表等は１９８９年４月のＮａｋａｍｉｃｈｉの
カタログより抜粋したもので，ナカミチ株式会社に著作権があります。したがってこれ
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