C-90の写真
PIONEER  C-90
STEREO CONTROL AMPLIFIER ¥170,000

1986年にパイオニアが発売したコントロールアンプ。M-90とのペアを想定されたコントロー
ルアンプで,セパレートアンプとしては比較的手頃な価格帯ながら,デジタルオーディオ,AV機
器等の活用を考慮した,多機能と性能をバランス良く追求したコストパフォーマンスの高い1台
でした。

C-90は,レーザーディスクのパイオニアらしく,ビデオ系も充実させたつくりをもち,オーディオ
用のコントロールアンプとしても本格的な内容を持つという,ある意味欲張りな設計でした。その
ため,内部は相互干渉を防ぐためにコンストラクションが工夫されていることが大きな特徴でした。
電源部は3トランスによるマルチ・パワーサプライで,これをベースとしてモノコンストラクションが
とられていました。L・Rの電源部をトランスごと独立させたのをはじめ,プリント基板上のレイアウ
トもブロックごとに分離されていました。また,ビデオ系の回路と電子制御系の電源は,オーディオ
系とは別の電源トランス,定電圧回路から供給されるようになっていました。

C-90の内部レイアウト

オーディオ系とビデオ系は回路基板,アースラインともに完全な分離が図られ,相互干渉を防いで
いました。また,オーディオソースのみを演奏中は,ファンクションスイッチと連動し,ビデオ系の電
源を自動的にOFFにする回路が搭載されていました。
ファンクションの切換などに,十分に吟味されたリレーや電子スイッチが使用され,フロントパネル
までの配線の引き回しを大幅に削減し,信号経路の最短化が図られ,信号のロスや劣化を抑えて
いました。

C-90のもう一つの大きな特徴は,振動による音質の劣化を抑えるために,防振のツボをおさえつ
つ防振対策がしっかりと施され,磁気歪み対策がとられていたことでした。
まず,シャーシ全体は銅メッキ処理され,磁気歪みが大幅に低減されると共に,異種金属(硬い金
属と柔らかい金属)を一体化することで振動を受けにくく,受けても振動が鎮まりやすいという特性
が確保され,防振対策ともなっていました。そして,インシュレーターには,内部損失が大きく振動を
効率よく吸収するポリカーボネートが使用されていました。回路基板は防振ゴムで固定され,シャー
シからの振動がパーツに伝わるのを防いでいました。トランスの受底には内部損失が大きく密着性
に優れた銅板が敷設され,微振動を防ぎ,磁気歪みを抑えるようになっていました。また,プリント基
板やシャーシ,トランス等の取付にも,銅メッキビスを使用し微振動の吸収と共に磁気歪みを抑えて
いました。さらに,メインボリュームの共振や振動を防ぐために,ボリュームノブに,110gという質量
の大きいアルミ無垢材削り出しのものを使用していました。

C-90のポリカーボネートインシュレーターハイブリッドMCトランスロータリー式ボリューム

C-90は,デジタル時代,オーディオビジュアル時代のアンプでしたが,フォノ入力もしっかりと搭載さ
れ,MCカートリッジにも対応していました。MCカートリッジに対しては,巻線比を従来の半分とした
MCトランスと昇圧比の減少分のゲインを高めたイコライザーアンプとの組み合わせによる「ハイブリ
ッドMCトランス方式」が採用されていました。

C-90は,多機能コントロールアンプらしく多機能なリモコンが装備されていました。メインボリューム
もリモコン操作が可能で,電子式ボリュームではなく,メカ式のハイグレードのボリュームをモーターで
ドライブするようになっていました。このボリュームとモーターは,クラッチ式で,マニュアル操作の際は
モーターが離れるため,スムーズな操作フィーリングが実現されていました。ボリュームの他,ファンク
ションの切換,接続機器(パイオニアの統一システムリモコン対応機種(SRマーク付き))の主要なリモ
コン操作が可能となっていました。
ビデオ機能も,充実した機能を持ち,ちょっとしたAVアンプ的な内容を持っていました。ビデオ系5系統
(うち3系統はREC付),ビデオアダプター1系統の入出力端子が備えられ,モニターも2台接続できる
ようになっていました。これらをオーディオ系と相互に関連を保ちながらコントロールでき,サイマルキャ
ストも自在にできるようになっていました。また,RCA端子を持たない普通のテレビにも接続できる5ピ
ンのRFコンバーター用端子も装備されていました。
さらに,シャープネス,ディテール,ノイズキャンセルがそれぞれ単独でコントロール可能な,本格的なビ
デオエンハンサーが内蔵され,コピー時の画質をきめ細かく調整できるようになっていました。また,
REC MONITOR OUTが装備され,録画時のエンハンス効果をモニターすることができるようになっ
ていました。

以上のように,C-90は,パイオニアブランドのセパレートアンプの入門機として,多機能なコントロール
センターとして充実した内容を持つコストパフォーマンスの高い1台でした。パイオニアらしく音のまとめ
方もうまく,音楽をしっかりした厚みのある音で聴かせてくれる実力機でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



”シンプル・イズ・ベスト”で
磨き,練り上げた音。
コントロールアンプC-90。


◎3トランス・マルチパワーサプライをベー
 スとしたモノコンストラクション構造。
◎オーディオソースのみ演奏中は,
 ビデオ系回路の電源はOFF。
◎磨かれた感性に裏打ちされた
 数々の防振パーツ。
◎信号経路の最短化を実現した
 電子コントロール方式。
◎ハイブリッドMCトランス方式による
 艶やかなアナログサウンド。
◎磁気歪を大幅に低減させる
 銅メッキシャーシ。
◎リモコン対応による
 ハイクオリティサウンド。
◎高音質という基本をベースに,
 豊富なビデオ機能を装備。
◎専用機なみの補正能力を持つ
 ビデオエンハンサー。




●SPECIFICATIONS●

入力端子(感度/入力インピーダンス)
PHONO MM:2.5mV/50kΩ
PHONO MC/40Ω:250μV/40Ω
PHONO MC/3Ω:125μV/3Ω
CD,TUNER,TAPE PLAY1.2
VDP,VIDEO1.2.3,TV TUNER:150mV/50kΩ
出力端子(レベル/出力インピーダンス)
TAPE REC:150mV/2.2kΩ
PRE OUT:1V/600Ω
PHONO最大許容入力
(1kHz,歪み率0.1%)
PHONO MM:200mV
PHONO MC/40Ω:20mV
PHONO MC/3Ω:10mV
トーンコントロール
BASS:±10dB(100Hz)
TREBLE:±10dB(10kHz)
SN比
(IHF,ショートサーキット・Aネットワーク)
PHONO MM:95dB(5mV)
PHONO MC:86dB(500μV)
TUNER,CD,TAPE PLAY
VDP,VIDEO:110dB
外形寸法
457W×124H×404Dmm
重量
9.7kg


C-90aの写真
PIONEER  C-90a
STEREO CONTROL AMPLIFIER ¥180,000

1988年に,C-90がモデルチェンジされC-90aが発売されました。フロントパネルの高さが9mm
増し,全体の重量が1.5kg増していることからも類推されるとおり,各部に改良が施されていました。

各部の防振対策の強化が図られ,ボンネット部にはアルミ厚板を採用し,防振性能の高い特殊セ
ルポリマー製充填タイプの大型ハニカムインシュレーター(@)が新たに搭載されていました。

インシュレーター

パーツの面でも各部に配慮がなされ,外部雑音の影響を抑えた極性表示付き無酸素銅線を用いた
ノンストレス電源コード(C),柔らかいコーティング材を用いた防振タイプのフィルム系コンデンサー
(E),キャップの振動を抑え,硫化ガス等の侵入を防ぐことで接点の信頼性を高めた高音質小信号
用密閉型リレー(D),L/R間を真鍮の非磁性体でシールドした高音質ボリューム,アルミ電解コンデ
ンサーの陰極とアルミケースをより確実に接続し,強力なシールドにより,外部からのノイズの飛び込
み,コンデンサー自身からのノイズの飛び出しを抑えた新開発シールデッド・キャパシターなど,音質
優先のパーツが使用されていました。

C-90aのパーツC-90aのAVプログラマブルリモコンユニット

付属の多機能リモコンも,新たに「AVプログラマブル・リモコンユニット」に強化され,パイオニアの統一シ
ステムリモコン対応機種(SRマーク付き)のみでなく,パイオニア以外のリモコン対応機器のリモコンコマ
ンドを学習することで,ほとんどのAV機器の操作が1台でできるようになりました。

さらに,AV機能の強化として,通常のビデオ5系統に加えて,新たに入力3系統,出力3系統のS端子が
装備されていました。C-90独自のビデオエンハンサー機能は継承されていましたが,このS端子には未
対応でした。

以上のように,C-90aは,C-90を受け継ぎ,オーディオ的にもAV対応機器としてもより強化された内容
をもっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



S端子を装備。
防振対策も徹底したコントロールアンプ。


◎3トランス・マルチパワーサプライをベー
 スにしたモノコンストラクション構造。
◎オーディオソースの演奏中は,
 ビデオ系回路の電源はOFF。
◎各部の防振対策をさらに徹底。
 原音再生に磨きをかけました。
◎信号経路の最短化を図った
 電子コントロール方式。
◎ハイブリッドMCトランス方式による
 艶やかなアナログサウンド。
◎磁気歪を大幅に低減させる
 銅メッキシャーシ。
◎AVプログラマブル・リモコンユニットで
 快適な操作性を実現。
◎精密な測定器ともいえる人間の感覚が
 厳選したオーディオ用パーツ。
◎デジタル時代の
 新開発シールデッド・キャパシター。
◎S-VHS,ED-βにも対応したS端子を装備。
 高画質なビデオ機能を搭載。




●SPECIFICATIONS●



■アンプ部■

入力端子(感度/入力インピーダンス)
PHONO MM:2.5mV/50kΩ
PHONO MC:250μV/40Ω
          125μV/3Ω
TUNER,CD,TAPE PLAY,ADAPTER:150mV/50kΩ
出力端子(レベル/出力インピーダンス)
TAPE REC:150mV/1kΩ
PRE OUT:1V/600Ω
ひずみ率
OUTPUT(20Hz〜20kHz,1V)
0.002%
混変調ひずみ率
OUTPUT(50Hz:7kHz=4:1,1V)
0.002%
最大出力
OUTPUT(20Hz〜20kHz,0.01%,10kΩ)
8V
周波数特性
PHONO MM:20Hz〜20kHz ±0.2dB
TUNER,CD,TAPE:20Hz〜20kHz +0,−0.1dB
トーンコントロール
BASS:±9dB(100Hz)
TREBLE:±9dB(10kHz)
フィルター
SUBSONIC:7Hz,6dB/oct
HIGH:10kHz,6dB/oct
ミューティング
−20dB
SN比
(IHF,ショートサーキット・Aネットワーク)
PHONO MM:95dB(5mV)
PHONO MC:86dB(500μV)
TUNER,CD,TAPE PLAY
VCR ADAPTER:119dB




■ビデオ部■

入力端子(感度/インピーダンス)
VDP,VCR1.2.3,ADAPTER,TV/AUX:1Vp- p/75Ω unbalanced
出力端子(出力レベル/インピーダンス)
VDP,VCR1.2.3,ADAPTER,
REC MONITOR MONITOR OUT:1Vp-p/75Ω unbalanced
DG
2%
DP
2°
周波数特性
10Hz〜10MHz +0dB,−3dB
SN比
60dB以上
シャープネス(2MHz)
+6dB
ディテール(0.5MHz)
±3dB




■S端子部■

入力端子(感度/インピーダンス) VCR1.3,TV/AUX(輝度信号):1Vp-p/75Ω  unbalanced
            (色信号):0.286Vp-p/75Ω unbalanced
出力端子(出力レベル/インピーダンス) VCR1.3,MONITOR:(輝度信号):1Vp-p/75Ω  unbalanced
              (色信号):0.286Vp-p/75Ω unbalanced
輝度信号周波数特性
10Hz〜10MHz +0dB,−1dB
SN比(輝度信号)
60dB以上





■電源部,その他■

電源電圧
AC100V 50/60Hz
消費電力(電気用品取締法)
41W
ACアウトレット
電源スイッチ連動(×1) 500W
電源スイッチ非連動(×2,リモコンによりON/OFF可能) 500W
外形寸法
457W×133H×404Dmm
重量
11.2kg


※本ページに掲載したC-90,C-90aの写真,仕様表等は1986年
 5月,1988年9月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,
 パイオニア株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真
 等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので
 ご注意ください。

 
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