C-2aの写真
YAMAHA C-2a
NATURAL SOUND PRE-AMPLIFIER ¥170,000

ヤマハが1978年に発売したプリアンプ。1976年発売のC-2の改良型で,当時の最先端の素子を使い,最高の
特性を得ようとして作り上げられたヤマハの意欲作でした。特に,フォノ系の音は抜群のものがありました。同社の
コントロールアンプの最高級機C-1の超多機能とは対極をなすシンプルな回路と機能でプリアンプとして徹底して
音質を重視したのがこのC-2aでした。

C-2aの基本的な回路構成は,MCカートリッジ用ローノイズヘッドアンプ,電流雑音低減回路を備えたローノイズイ
コライザーアンプ,高精度トーンコントロールアンプというシンプルな構成になっていました。全てのアンプは,平衡型
全段プッシュプルで低歪みを追求し,かつ全段DCアンプ構成になっていました。
また,C-2aは,設計上の困難を排してオーバーオールのゲインを通常のプリアンプの約2倍に設定し,出力に低い
カートリッジでカッティングレベルの低いレコードをかけた場合や感度の低いメインアンプと組み合わせても充分なゲ
インが得られるように定格レベルが2Vに設定されていました。
このような当時として究極的に優れた特性を実現するために,新たにコンピュータとスペクトラムアナライザーを組み
合わせた測定器を開発し,従来の測定器では測れなかったレベルまで測定を可能にすることで,残留歪に隠れてい
た特性も明らかにしたという意欲作でした。

イコライザ回路初段は,C-2aの初段のために新開発されたローノイズHigh gm DUAL FETによる差動増幅回路
となっていました。このHigh gm DUAL FET(2SK-101)はC-2aのために新開発された優れた素子で,卓抜な
ローノイズ特性に加え,当時DUAL FETの中で恐らく世界最高のHigh gm(高い相互コンタクタンス)を持ち,しか
もDC構成アンプの初段に要求されるシビアな電気的,温度的ペア特性をそろえたジャンクションFETでした。
この優れた素子を生かすために,DCドリフトの改善,カートリッジ実装時の信号インピーダンス上昇による歪率の劣
化防止,周波数特性の向上,電流雑音の低減に有効な新カスコードブートストラップ回路と歪率の低減に効果のあ
る自動バランス形アクティブロードを配して初段を構成していました。
プリドライブ段は,歪の発生が少ないカレントミラー差動プッシュプル回路,出力段はfγが高く十分なコレクタ損失を
持つトランジスタによる2段エミッタフォロアコンプリメンタリープッシュプル回路となっていました。2段エミッタフォロア
コンプリメンタリープッシュプル回路の採用により,100Ωという低い出力インピーダンスを得つつ,充分の出力電圧
を低歪で得ることができていました。
イコライザの精度を決定するRIAA素子には,高精度大容量金属皮膜抵抗と新開発の高精度ポリプロピレンフィルム
温度補償型コンデンサーを使用し,RIAA偏差は±0.2dB(20Hz〜20kHz)以内という高精度を実現していました。
さらに,C-2aのイコライザでは,徹底したローノイズ化ということで,カートリッジの負荷抵抗でもあるアンプの入力イン
ピーダンス設定抵抗から発生する熱雑音電流にも着目して「電流雑音低減回路」を搭載して対策を講じていました。こ
れは,カートリッジを実装したときのSN比の改善のために負荷抵抗の値を大きく設定し,電流雑音低減回路のはたら
きでみかけ上で希望の負荷抵抗を得るというもので,大きく設定された負荷抵抗による周波数特性への影響を押さえ
かつ使用抵抗の数分の1が負荷抵抗になるために,入力換算ノイズ電流密度が低くなり等価的にノイズの少ない負
荷抵抗が得られるというもので,カートリッジ実装時のSN比の劣化が抑えられるというものでした。このようにイコライザ
回路全体はパワーアンプ並の贅沢な構成で,DCアンプ構成となっていました。

C-2aのヘッドアンプは,電圧性ノイズの少ないローノイズトランジスタをNPN,PNPそれぞれ4個ずつパラレル接続し,
さらに1石をカスコード接続した新しいカスコードコンプリメンタリープッシュプル回路のDCアンプ構成となっていました。
入力換算雑音−158dB・V,SN比78dB(定格100μV)という優れた低ノイズ特性と,0.01%以下(20Hz〜20kHz
MC→REC OUT・IV)という優れた低歪率特性を実現していました。
C-2aのPHONO-1回路は使用するカートリッジに合わせて負荷抵抗と負荷容量が設定できるようになっており,負荷
抵抗は,前面パネルのPHONO SELECTORにより47kΩ,68kΩ,100kΩとさらに高出力MC専用に100Ωの
4段階に切換えられ,負荷容量はリアパネル面のCARTRIDGE LOAD端子にコンデンサーを接続することができるよ
うになっていました。

C-2aのリアパネル

C-2aは機能を絞った設計でしたが,高性能なトーンコントロールアンプを搭載した非常に高精度なトーンコントロールを装
備していました。トーンコントロールアンプの回路構成はイコライザ回路とほぼ同様という豪華なもので,中点ディフィートの
NF型トーンコントロール回路となっていました。初段に熱平衡性に優れたワンチップのローノイズDUAL FETを採用した差
動増幅回路を搭載し,これにカスコードブートストラップ回路をアセンブリーし,ボリュームを操作した場合の信号インピーダ
ンスの変化に対しても中点電圧のドリフトや歪の極めて少ない安定したDCアンプ構成としていました。初段以降では,平
衡型エミッタフォロアによるローインピーダンスドライブのカレントミラーカスコード差動プリドライバーでミラー効果による周波
数特性の劣化を防いでいました。さらに出力段は,ピュアコンSEPP OCLとして出力インピーダンスを十分に低く抑えてい
ました。このトーンコントロールアンプは,トーンコントロールボリュームが中点のときは,時定数を持つ素子が信号経路から
完全にはずれフラットなバッファアンプとして動作し,トーンコントロール操作時でも,周波数特性設定用ポリプロピレンフィル
ムコンデンサー以外は回路に挿入されないDCアンプ構成となっていました。トーンコントロール用の時定数素子には,RIAA
素子と同じポリプロピレンフィルムコンデンサーや金属皮膜抵抗を採用し,コントロールボリュームには新開発の高精度で特
殊カーブを持つコンダクティブプラスティックボリュームを使用して,精密で微細なコントロールを可能にしていました。以上の
ようなトーンコントロール回路は,数値的にも,歪率0.0007%(TUNER→PRE OUT,20Hz〜20kHz,2V出力時),
SN比105dB(TUNER・IHF-A),周波数特性10Hz〜100kHz(PRE OUTにて)という非常に高度な特性を誇りました。

C-2aの内部

電源部は,電源トランスに小型で非常にレギュレーションが良く,リーケージフラックス(磁束漏れ)の少ないOIコアトランスを
搭載していました。電源回路は,デュアルトランジスタによる低ドリフト比較増幅器に,カスコードブートストラップアクティブロ
ードをアセンブリーし基準電圧発生用のダイオードには,通常のツェナーダイオードを使用せず,ローノイズのアバランシェ効果
ダイオードを使用し,低歪率・ローノイズの高連応答定電圧電源回路を構成していました。また,高感度であるため,電源の
変動の影響を受けやすいMCヘッドアンプ用の電源は,ローカル電源によってさらに低インピーダンス化されていました。さら
に,フィルターコンデンサーには,歪の少ないオーディオ用ローノイズシリーズのケミコンを使用していました。

全体のコンストラクションは,プリント基板上に各回路がユニット別にモノラルコンストラクションで左右対称にレイアウトされ,
各パーツも厳選されたものが使用されていました。インピーダンスの低い70μ厚プリント基板+純銅ブスアース,IOコアトラ
ンス,ヤマハオリジナルオーディオ用カップリングコンデンサー,高精度コンダクティブプラスティックボリューム,操作フィーリン
グの良い新機構ロータリースイッチ,その他金属皮膜抵抗やポリプロピレンフィルムコンデンサーの採用,そして信頼性向上
のための金メッキ切削型ピンジャックやコネクタなど各部に贅を尽くした作りでした。

以上のように,C-2aは全体として実使用時の特性を重視して設計がなされたプリアンプでした。そこで,ボリュームを絞った
ときの歪率やクロストーク,SN比などの特性の劣化を抑えるために高精度4連コンダクティブプラスティックボリュームを採用
し,フラットアンプの前段と後段で絞り込むことによってボリュームを絞ったときのSN比を大幅に改善していました。このため
ボリュームを絞りきったときの残留ノイズは原理的に0になっていました。また,REC OUT 100Ω,PRE OUT 250Ω
という低インピーダンス設計により,シールド線の影響を受けにくい安定動作を実現していました。

C-2aは,ヤマハが名機C-2のデザインをそのまま受け継ぎ,ブラックパネルの薄型の筐体の内部には当時最新のパーツと
回路構成を投入して作り上げた高性能プリアンプでした。特に,PHONO系の性能が素晴らしく,アナログソースを透明で格
調高い音で再生してくれる名機だったと思います。現在でも,特にこのPHONO系の実力は相当なものだと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 

ローノイズHigh-gm DUAL FETを初め,
主要なパーツの新開発や新しい測定器によって
0.00005%オーダで吟味された回路構成で
銘機「C-2」からさえ,はるかに飛躍した
−プリアンプの芸術品−
 
 

●C-2aの主な規格●


入力感度/インピーダンス PHONO 1(MM) 2.5mV/可変
        (MC)  100μV/50Ω
       
PHONO 2(MM) 2.5mV/47kΩ
AUX・TUNER・TAPE PB1,2 150mV/47kΩ
カートリッジロード 100kΩ,68kΩ,47kΩ,100Ω
最大許容入力 PHONO 1(MC)   10mV以上(20kHz,0.03%)
PHONO 1,2(MM) 350mV以上(1kHz,0.01%)
AUX・TUNER・TAPE PB1,2 30V以上(Vol.−34dB以上)
定格出力/インピーダンス/最大出力 PRE OUT 1,2 2V/250Ω/15V以上
REC OUT 1,2 150mV/100Ω/20V以上
周波数特性 PHONO 1,2(MM) 20Hz〜20kHz0±0.2dB(RIAA)
PHONO 1(MC)   20Hz〜20kHz0±0.3dB(RIAA)
AUX・TUNER・TAPE PB1,2 10Hz〜100kHz 0±0.2dB
トーンコントロール特性 ターンオーバー周波数 BASS   350Hz
               TREBLE 3.5kHz
最大可変幅        BASS   ±10dB at 20Hz
               TREBLE ±10dB at 50kHz
サブソニックフィルタ 15Hz 12dB/oct
全高調波歪率 PHONO 1,2(MM) 0.003%以下(20Hz〜20kHz)
PHONO 1(MC)    0.01%以下(20Hz〜20kHz)
AUX・TUNER・TAPE PB1,2 0.003%以下(20Hz〜20kHz)
混変調歪率 AUX・TUNER・TAPE PB1,2 0.003%以下(10V出力)
高調波歪率
(20Hz〜20kHz,2〜10次の総和)
PHONO(MM)→REC OUT(1.5V) 0.0007%以下
AUX・TUNER・TAPE1,2→PRE OUT 0.0007%以下
SN比(IHF-A net work) PHONO 1,2(MM) 92dB以上
PHONO 1(MC)   78dB以上
AUX・TUNER・TAPE PB1,2 103dB以上
残留ノイズ 0.03μV以下
チャンネルセパレーション(1kHz) PHONO 1,2(MM) 90dB以上(Vol.Max)
PHONO 1(MC)   60dB以上(Vol.Max)
AUX・TUNER・TAPE PB1,2 90dB以上(Vol.Max)
ファンクションセパレーション PHONO 1,2(MM)→TUNER 90dB以上
TUNER→PHONO 1,2(MM) 95dB以上
AUX→TUNER 90dB以上
PHONO 1,2→TAPE 1,2 90dB以上
オーディオミューティング −20dB
主な使用部品 FET5,半導体101
ツェナーダイオード10,ダイオード32
LED1
ACアウトレット 連動合計   400Wmax
非連動合計 400Wmax
定格電圧・周波数 100V・50/60Hz
消費電力 36W
外形寸法 435W×72H×320Dmm
重量 7.9kg

 ※本ページに掲載したC-2aの写真,仕様表等は1978年10月のYAMAHA
  のカタログより抜粋したもので,日本楽器製造株式会社に著作権があります。
  したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられて
  いますのでご注意ください。

 ※なお,本ページは,koyama様の資料ご提供により作成することができました。
  本当にありがとうございました。

                                            
 

★メニューにもどる           
 
 

★セパレートアンプPART2にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                      


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp