C-21の写真
PIONEER C-21
STEREO PREAMPLIFIER ¥60,000

1976年にパイオニアが発売したプリアンプ。薄型でシンプルな筐体が特徴的でしたが,「20番シリーズ」
というシステムアンプの中の1台という位置づけにもなっていて,他の機器と組み合わせると,マルチアンプ
への発展や多くの機器の接続が可能となるなど,多彩な使い方にも発展できる1台でした。

C-21の最大の特徴は,そのシンプルなデザイン同様に,機能もシンプルなものにしぼられた,コントロー
ルアンプというよりプリアンプ=前置増幅器に徹していたことでした。入力は,フォノ,テープ各1系統とAUX
2系統だけで,トーンコントロールも省略されていました。そして,フォノ入力を充実した内容を持たせた構成
になっていました。

1系統だけにしぼられたフォノ入力を受けるイコライザー回路は,差動2段,カレントミラー回路A級SEPPと
なっていました。入力は,2段差動増幅の初段に特性の揃ったペアのスーパーローノイズトランジスタを使
用し,SN比を向上させ,差動増幅によってトランジスタのリニア領域の動作点を選ぶことで,歪みの低減を
はかっていました。中間増幅段にはカレントミラー回路を採用することで,直流的に定電流化して安定度を
高め,交流的には裸利得を上げて,NFBを十分にかけて歪みの低減をはかっていました。同時に,カレント
ミラー回路によってプッシュプルドライブとして偶数次の高調波歪み成分を打ち消していました。これらによ
り,イコライザー回路の歪み率は,0.006%と低く抑えられていました。また,イコライザー素子には,高精
度な特性を持った精密小型金属皮膜抵抗やポルプロピレンフィルムコンデンサーなど厳選した素子を使用し
きわめてフラットな特性を実現していました。さらに,このイコライザー回路には,±37Vの高電圧が供給さ
れ,最大出力18V,感度2.5mVに対して300mVと余裕あるダイナミックマージンが実現されていました。
この充実した内容を持つフォノ入力は,負荷抵抗,負荷容量をそれぞれ6種類単独で選べるようになってお
り,組み合わせで36種類のカートリッジロードの設定ができるようになっていました。また,FUNCTIONス
イッチの中には,PHONO SUBSONICのポジションがあり,15Hz以下を6dB/octでカットするサブソニッ
クフィルターが使えるようになっていました。

フラットアンプ部は,イコライザーアンプ部と同様に差動増幅2段という構成になっていました。初段には,同
じくペアのスーパーローノイズトランジスターを採用し,中間増幅はカレントミラー回路A級SEPPとなっていま
した。素子の選別と低歪み設計により,周波数特性10Hz〜100kHz,SN比100dB,歪率0.005%を実
現していました。

ボリュームは,接点が銀印刷された32ステップのアッテネーター式が採用され,L・R間のギャングエラー,
パネル面指示との誤差のいずれも0.5dB以内に抑えられた高精度なボリュームとなっていました。
フラットアンプの出力段には,L・R独立でバランスコントロールとしても使える22接点アッテネーターコントロ
ールによるゲインコントロールが装備されていました。このゲインコントロールは,各接点を銀パラジウム処理
とし,銀とパラジウムの合金で形成された抵抗によるスイッチ式パネル面との指示誤差0.1dB以内という高
精度なパワーアンプへの出力レベルコントロールが可能となっていました。

C-21の内部

電源部は,プリアンプとしては大型のオリエントコアによる電源トランスを搭載していました。この電源トランスは
左右独立巻き線として定電圧電源を構成し,チャンネル間の相互干渉を排除した設計になっていました。

以上のように,C-21は,シンプルなデザインと機能の中に,フォノ入力を中心とした優れたプリアンプとしての
性能を持たせた実用的な高性能アンプでした。デザイン同様に細部まですっきりとしたきれいな音をもっていま
した。
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


単機能に徹したシンプル・プリアンプ。
アンプの原点にかえって徹底的に音質を追求。
厳選した素子とすぐれた回路設計技術の駆使,
あえてトーンコントロールも省略しています。
◎音の純粋さを求めて,シンプル設計に徹したプリアンプ。
◎シンプルな構成のなかで,凝るべき部分は徹底して
 音質重視にまとを絞った入念な設計を展開。
◎イコライザーの回路特性は,
 フォノ周波数特性20〜20,000Hz±0.2dB
 ひずみ率0.006%(1V出力時)
 最大許容入力300mV(1kHz・歪率0.01%)
 SN比80dB(1V出力時・IHF-Aネットワーク)。
◎各種カートリッジの性能を最大に発揮させるため,
 カートリッジロード切換えスイッチ(負荷抵抗6種,
 負荷容量6種)を装備。
◎フラットアンプ部も差動2段,カレントミラー回路
 A級SEPPの音質重視回路。
◎フラットアンプ出力段には,LR独立の
 精密ゲインコントロールを装備。
◎チャンネル間の相互干渉を排除した電源部をはじめ,
 細部にいたるまで細心の配慮がゆきわたった設計。
●C-21の規格●
回路方式 イコライザーアンプ:差動2段カレントミラー増幅A級SEPP
フラットアンプ:差動2段カレントミラー増幅A級SEPP
入力端子 
(感度/入力インピーダンス)
PHONO    2.5mV/100Ω,10kΩ,25kΩ,50kΩ,
                75kΩ,100kΩ
 カートリッジ負荷容量:100pF,150pF,200pF,300pF
               400pF,500pF
AUX 1    150mV/50kΩ
AUX 2    150mV/50kΩ
TAPE PLAY 150mV/50kΩ
PHONO最大許容入力
(高調波歪率0.01%)
300mV(1kHz)
出力端子 
(レベル/出力インピーダンス)
TAPE REC 150mV/2.2kΩ
OUTPUT (RL:50kΩ)  定格1V/600Ω 最大20V/600Ω
高調波歪率
(20Hz〜20kHz)
PHONO 0.006%(1V出力時,ボリューム−20dB,ゲインコントロール0dB)
AUX
  ゲインコントロール−6dB:0.003%(1V),0.005%(5V)
               0dB:0.005%(1V),0.003%(5V),0.005%(10V)
             +6dB:0.008%(1V),0.003%(5V),0.003%(10V),0.005%(20V)
周波数特性 PHONO  20Hz〜20kHz±0.2dB
AUX    10Hz〜100kHz+0,−0.2dB
        3Hz〜300kHz+0,−1.0dB
SN比
(IHF,Aネットワーク,ショートサーキット)
PHONO(出力1V時)     80dB
AUX(出力1V時)      100dB
PHONOサブソニックフィルター 15Hz(6dB/oct)
使用半導体 トランジスター36,ダイオード他39
電源電圧 AC 100V,50/60Hz
消費電力(電気用品取締法) 10W
ACアウトレット 3(電源スイッチ連動),2(非連動)
外形寸法 420W×81H×357Dmm
重量 6.3kg


D-23の写真
PIONEER D-23
ELECTRONIC CROSSOVER NETWORK ¥100,000

「20番シリーズ」には,プリアンプC-21に続く型番で,パワーアンプM-22,エレクトロニック・クロスオーバーネ
ットワークD-23,プログラム・セレクターU-24・・・とありました。そして,このD-23を使うことにより,2ウェイから
4ウェイまで幅広いマルチアンプ化が可能になりました。

D-23は,主回路のバッファアンプに,ペア特性の揃ったローノイズトランジスタによる±2電源供給の,純コンプ
リメインタリーSEPP回路構成をとり,低歪み,高SN比を実現していました。また,この入力インピーダンスを高く
出力インピーダンスを低く設定して,CR素子の影響を抑えていました。

D-23の帯域分割は,LOW,MID-LOW,MID-HIGH,HIGHの4分割で,4ウェイまでのマルチアンプシステ
ムが可能となっていました。それぞれの帯域のカットオフ周波数は,1/3オクターブごとに11点のセレクトができ
ハイカット,ローカットも独立して設定できるようになっていました。
1/3オクターブごとの細かい周波数切換には左右チャンネル間のスペーサーを設けてセパレーションの劣化を
抑えた6連の精密ディテントボリュームを搭載していました。また,各帯域のレベルコントロールには,左右独立で
32ステップのアッテネーター式を使用していました。
遮断スロープの切換は,ローカット,ハイカット独立で,6,12,18dB/octの3種類のセレクトが可能となっており
さらに,FLATのポジションが設けられ,2ウェイ,3ウェイなど様々なクロスオーバー周波数によるマルチアンプシ
ステムが可能となっていました。

D-23の内部
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


あくまでも音質重視の思想で設計した
エレクトロニック・クロスオーバーネットワーク。
しかも2ウェイから4ウェイまで幅広く使える
多彩な機能を盛り込みました。
◎多彩な機能と徹底した基本性能重視の回路構成をもつ
 エレクトロニック・クロスオーバーネットワーク。
◎ひずみ率0.005%(20〜20,000Hz・1V出力時)
 SN比100dB(IHF-Aネットワーク・1kHz)
 チャンネルセパレーション60dB(20kHz)
 周波数特性10Hz〜100kHz+0dB−1dB。
◎4ウェイまでマルチアンプ化が可能。
 カットオフ周波数は各11点の選択ができ
 ハイカット/ローカット独立。
 レベルコントロールはLR独立1dBステップのアッテネーター式。
◎遮断スロープはローカット/ハイカット独立で
 6,12,18(dB/oct)の3種類セレクト。
◎2ウェイから4ウェイまで,さまざまに使い方を広げる
 フラットポジション。
●D-23の規格●


回路方式 バッファアンプ
  正負2電源A級SEPP
フィルター部
  CRパッシブフィルター(6dB/oct,12dB/oct)
  CRアクティブフィルター+CRパッシブフィルター(18dB/oct)
  2,3,4ウェイ可能
カットオフ周波数 LOW(HIGH CUT)
MID LOW(LOW CUT):63,80,100,125,160,200,250,320,400,500,630Hz
MID LOW(HIGH CUT)
MID HIGH(LOW CUT):320,400,500,630,800,1k,1.25k,1.6k,2k,2.5k,3.2kHz
MID HIGH(HIGH CUT)
HIGH(LOW CUT)    :1.6k,2k,2.5k,3.2k,4k,5k,6k,8k,10k,12.5k,16kHz
スロープ特性 6dB/oct,12dB/oct,18dB/oct
レベルコントロール 0〜−30dB(1kHzステップ),−∞
左右チャンネル独立可変
挿入損失 0〜−2dB
入力インピーダンス 100kΩ
出力インピーダンス 4kΩ(MAX)
出力(RL:50kΩ) 1V,10V(MAX)
高調波歪率
(20Hz〜20kHz)
0.005%(1V出力)
0.1%(10V出力)
周波数特性
(LOW END,HIGH END)
10Hz,100kHz+0−1dB
SN比(出力1V時) 100dB(IHF-Aネットワーク,ショートサーキット)
使用半導体 トランジスタ71,ダイオード他18
電源電圧 100V 50/60Hz
消費電力(電気用品取締法) 11W
ACアウトレット 1(電源スイッチ非連動)
外形寸法 420W×150H×352Dmm
重量 8.7kg


U-24の写真
PIONEER U-24
PROGRAM SELECTOR ¥20,000

薄型のプリアンプC-21にデザインを合わせた薄型のプログラムセレクターがU-24でした。C-21は機能を
絞った設計であるため,入力端子も最小限におさえられていました。このU-24を組み合わせることで,他種
類の機器を接続することが可能となりました。

U-24には,PHONO3系統,AUX2系統,TAPE入出力4系統,POWER AMP3系統の接続ができ,TAPE
は1〜4まですべての組み合わせのデュプリケートが可能となっていました。
切換スイッチは延長シャフトを用いることにより,端子の近くに配置され,線材の引き回しによる音質の劣化を
おさえていました。また,スイッチ自体も相互の距離を考えた配置で,相互の信号の干渉を避けていました。

U-24の内部
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


プリアンプC-21にデザインを合わせた
プログラムセレクター。
PHONO3系統,AUX2系統,
TAPE入出力4系統
POWER AMP3系統の接続と
テープ間デュプリケートが可能。
◎多くのコンポーネント接続やテープデュプリケートができる,
 プログラムセレクター。
◎内部設計には音質劣化をきたさぬよう十分な配慮。
●U-24の規格●


方式 オールプッシュボタンセレクター
切換数 PHONO       3
AUX          2
TAPE MONITOR 4
DUPLICATE    1〜4相互間
POWER AMP   3
接続アンプ用端子 PHONO,AUX,TAPE PLAY,REC,PRE OUT各1
外形寸法 420W×81H×329Dmm
重量 4.4kg



※本ページに掲載したC-21,D-23,U-24の写真,仕様表等は1976年8月の
  PIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があ
  ります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁
  じられていますのでご注意ください。
 
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