B-70の写真
YAMAHA B-70
NATURAL S0UND STEREO POWER AMPLIFIER
                           ¥180,000

ヤマハが1981年に発売したパワーアンプ。X電源搭載のパワーアンプの2番手としてB-6についで
登場しました。型番としてB-7でなくB-70としたのは,ヤマハ自身新しいシリーズとして位置づけた
モデルだったようです。

B-70の基本的回路構成は,カスコードコンプリメンタリィA級プッシュプル差動増幅段,カスコードコン
プリメンタリィプリドライブ段による電圧増幅段→新開発ZDR搭載の3段ダーリントンコンプリメンタリィ,
4パラリニアトランスファ回路採用の出力段となっており,電源部は,X電源とX増幅によって構成され
ていました。

最大の特徴は,ヤマハのアンプとして初めて搭載された新技術「ZDR」でした。この「ZDR」は「Zero
Distortion Rule」の略で,NFBやFF(フィード・フォワード)とは異なるヤマハ自慢の新しい歪み低
減回路でした。ZDRは,歪検出回路と入力加算回路によって構成され,歪検出回路は,純抵抗から
なるブリッジによりリアルタイムで歪成分のみを検出するようになっていました。加算回路は,フローテ
ィング電源から,パワー段入力部へ,フローティングブリッジ回路として歪成分を直列に電圧加算して
いくことで,電圧増幅段からの駆動信号電流に悪影響を与えることなく正確な歪キャンセルが行われ
るようになっていました。当時,動特性にも優れた歪低減回路として高い評価がなされていました。

2つ目の大きな特徴は,「X電源」の搭載にありました。この「X電源」は,交流の通電位相角を制御
(Phase Angle Control)することによって交流電力をコントロールするTRIAC素子をトランスの一
次側に挿入し,二次側の出力直流電圧と比較した情報をTRIACのゲートにフィードバックし,二次側
の出力電圧を一定に保つという,一種のスイッチング電源でした。電源周波数に同期して,TRIAC素
子が電源トランスに入力する電流をスイッチング制御し,常に大電流をトランスに流しっぱなしにするの
ではなく,必要に応じて通電する仕組みになっていました。その結果,通常より小型のトランスでも,大
電力伝送が可能になり,高いレギュレーションが得られるというものでした。当時流行したこのようなス
イッチング電源は,スイッチングによるパルスが他に影響を与えることが嫌われたのか,あまり広まる
ことなく終わりました。現在では,たぶん採用しているアンプはほとんど皆無だと思います。しかし,CD
プレーヤー等デジタル機器が発達した今,デジタルノイズをシールドする技術も相当に発達しているは
ずです。地球環境を大切にするために省エネが言われる現在,エネルギーの無駄を防ぐこのような電
源部の技術も見直されるときが来ているのかもしれません。

B-70の内部

終段に搭載された「リニアトランスファ回路」は,パワーアンプB-5で開発されたもので,バイポーラトラ
ンジスターの持つ電流の少ない領域でのノンリニアな特性を補正し,小出力時の音質を改善する技術
でした。4パラ構成の出力段の各トランジスターのバイアス電圧は固定しておいて,並列接続された各
パワートランジスターの動作点をずらせて,合成特性を2乗特性に近づけ,リニアな総合伝達特性にす
るというものでした。

機能的には,前面に応答速度の速いLEDによるピークレベルメーターを搭載していました。この赤色の
メータ−がデザイン的にも一つのポイントとなっていました。レンジ切換スイッチやMETER OFFスイッ
チも備えていました。2組のスピーカー端子を備えていましたが,2組のスピーカー端子それぞれに独
立したレベルコントロールがついているのも特徴的でした。

以上のように,B-70は,X電源,リニアトランスファ回路などの,それまでヤマハが培ってきたアンプ
技術の上に,新たなZDRという歪み低減技術を投入し,比較的コンパクトながら200W+200Wと
いう大出力を実現した高性能アンプで,コストパフォーマンスの高さもあり,人気モデルとなりました。
弟機としてB-50(¥135,000)も登場し,ハイコストパフォーマンスを誇りました。

B-50の写真
YAMAHA B-50
NATURAL S0UND STEREO POWER AMPLIFIER
                           ¥135,000
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 
 

ゼロディストーションルールで
終段のあらゆる歪が消え失せ
スピーカシステムの純粋音楽
ドライブが初めて可能になった
リニアトランスファ搭載の
ハイパワー・音楽Xアンプ誕生
 
 

●主な規格●


 
B-70
B-50
定格出力  200W+200W(8Ω・20Hz〜20kHz・歪0.002%)
250W+250W(4Ω・クリッピングパワー)
120W+120W(8Ω・20Hz〜20kHz・歪0.002%)
200W+200W(4Ω・クリッピングパワー)
パワーバンド幅    10Hz〜100kHz(8Ω・100W×2・0.006%) 10Hz〜100kHz(8Ω・60W×2・0.01%)
ダンピングファクタ 200
入力感度/入力インピーダンス  1.41V/25kΩ 1.1V/25kΩ
周波数特性   DC〜100kHz−0.5dB

全高調波歪率
(100W・8Ω)
 
20Hz   0.0005%
1kHz   0.0005%
20kHz  0.001%
50kHz  0.003%
100kHz 0.006% 
20Hz   0.0005%
1kHz   0.0005%
20kHz  0.001%
50kHz  0.004%
100kHz 0.01%
混変調歪率 
  
0.002%(100W×2・8Ω,50Hz:7kHz) 0.002%(60W×2・8Ω,50Hz:7kHz)
SN比 IHF・Anet work 124dB 122dB
チャンネルセパレーション      20Hz 100dB
1kHz  95dB
20kHz 70dB
20Hz 100dB
1kHz  95dB
20kHz 70dB
スルーレイト 200V/μsec
定格電源電圧・周波数 AC100V・50/60Hz
消費電力 220W 200W
ACアウトレット UN SWITCHED 200W MAX
外形寸法 435(W)×133(H)×380(D)mm
重量 13.7kg 11.8kg
※本ページに掲載したB-70,B-50の写真,仕様表等は1981年10月
1982年2月のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,日本楽器製造
株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載
・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
    
 

★メニューにもどる           
 

★セパレートアンプPART2にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                      


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp