APM-8の写真
ESPRIT APM-8
ACCURATE PISTONIC MOTION
SPEAKER SYSTEM ¥1,000,000(1台)

1979年にソニーがー発売した大型のフロア型スピーカーシステム。エスプリブランドの第1号の製品である
とともに,ソニー独自の平面振動板スピーカー「APM」の第1号機でした。APM-8の個性的な外観と優れた
再生能力での登場は,当時衝撃的なものがありました。(今見ても個性的ですが・・・。)

APM-8の最大の特徴であるAPMユニットは,APM(Accurate Pistonic Motion)の略で,その名の通り
ソニーが正確な振動をする振動板を目指して開発した平面形ユニットで,四角い個性的な外観から想像され
るとおり独創的な構造で高性能を誇るユニットでした。
このAPMユニットは,特定の周波数で振動板の各部が一様な振動をしなくなる現象・「分割振動」の追放を
徹底的に追及したものでした。分割振動をなくすためにAPMユニットでは,軽量で高剛性ハニカム構造の平
面振動板を採用していました。さらに,振動板の形を正方形にすることで,分割振動の節目が一定の位置に
発生するようにし,その分割振動の節目4点をボイスコイルで駆動して分割振動の発生を抑えていました。ま
た,ボイスコイルを前面スキンに取り付けることにより,ダイレクトな駆動を実現していました。以上のように,
ソニーらしく非常に理詰めのアプローチがなされた独特のスピーカーユニットでした。

APMユニット断面図
APM-8のユニット

ウーファーは,面積807cmで,アルミスキンによるハニカムサンドイッチ振動板を4つの磁気回路・ボイスコ
イルで4点駆動する仕組みでした。磁気回路はセンターポールプレートにスリットや溝を切り,エディカレントを
おさえ低歪み化していました。ボイスコイルは無酸素銅リボン線のエッジワイズ巻きとしていました。

ローミッドレンジは,面積144cmで,カーボンファイバーシートスキンによるハニカムサンドイッチ振動板で,
ウーファーと同様の低歪み率磁気回路を採用し,ボイスコイル線材には,純アルミリボン線をエッジワイズ巻
きとし,軽量化を図っていました。ユニットに対してきわめて大口径のボイスコイルで駆動し,また,ヤング率の
高いマイカボビンによって,磁気回路の動きを振動板にロスなく伝えることで,ピストンモーション領域を,通常
のコーンスピーカーの約4倍に高めていました。
ハイミッドレンジは,面積24cmで,ローミッドレンジと同じーボンファイバーシートスキンによるハニカムサンド
イッチ振動板で,磁気回路,材料構成等も,ローミッドレンジと同様のものでした。

トゥイーターは,面積5.8cmで,これもカーボンファイバーシートスキンによるハニカムサンドイッチ振動板で,
磁気回路は,ポールピースにパーメンデュールを用いた磁束密度21,000ガウスの強力なものを搭載してい
ました。ボイスコイルは,マイカボビンに純アルミリボン線をエッジワイズ巻きにしたものでした。

APM-8のネットワーク

ネットワークは,機械的共振による音の劣化を抑えるため,すべてのコンデンサー,インダクターを内部損失の大
きいソニー自慢の音響素材SBMCで高圧成形していました。また,プリント基板にはきわめて厚い無酸素銅箔
を使用していました。内部配線には無酸素銅線を使い,平行線を多用して,ロス及びカラーレーションの低減を図
っていました。

キャビネットは,高密度パーチクルボードによる内容積200リットル,自重60kgにおよぶ堂々たるもので,各ボー
ドの輻射周波数を高速フーリェ変換によって算出し,板厚や補強材の材質をコントロールして輻射周波数が重な
るのを防いだり,各面の結合をできるだけすくなくするなど,箱鳴りをおさえた設計になっていました。

以上のように,APM-8は,ユニットの革新からスタートして,再生機としての性能を徹底的に追求した高性能な
スピーカーシステムでした。アンプを含め使いこなされた際の,レンジの広さ,音のクリアさは驚異的なものでし
た。APM方式のスタートを飾る超弩級の名機でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


50数年にわたるスピーカーの歴史を,
いささかなりとも変える音,
大自然の音の深さと安らぎに,
僅かなりとも届きうる音を創りたい・・・
ソニーの夢の現実への射影が,
APM-8です。

一瞬,すべての音群が
重層するフォルテのなかに,
無数の音符が散らばり見えてくる。
空間は部屋という物理的制約を超えて,
ふくれあがっていく。
 
 

●APM-8の主な規格●


 
形式 4ウェイ位相反転フロアー形
使用スピーカー 低音用807cm平面型
中低音用144cm平面型
中高音用24cm平面型
高音用5.8cm平面型
公称インピーダンス 8Ω
定格最大入力 150W
瞬間最大入力 500W
最大出力音圧レベル 92dB/W/m
実効周波数帯域 25Hz〜30,000Hz
クロスオーバー周波数 320Hz,1.25kHz,4.5kHz
レベルコントロール +0dB〜−6dB連続可変
大きさ 幅650×高さ1,105×奥行450mm
重さ 102kg
※本ページに掲載したAPM-8写真,仕様表等は1979年10月の
 ESPRITのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権
 があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をす
 ることは法律で禁じられていますのでご注意ください。
                        
 

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