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Technics SB-AFP1000
AUDIO FLAT PANEL ¥2,500,0001987年,テクニクスが発売したスピーカーシステム。「オーディオ・フラット・パネル」の名の通り,大面積の
平面振動板による高忠実度再生をめざしたスピーカーのシリーズの中の最上級機で,スピーカーから始まっ
たテクニクスブランドならではの力の入った1台でした。AFP(オーディオ・フラット・パネル)の発想は,大面積の振動板は最小限の振幅動作で十分な音圧が得られ
理想的な再生が可能であるというところにありました。AFP1000のウーファーでは,直径152cmのウーファー
に相当する大面積振動板の採用により,最大音圧レベル124dB時の振幅はわずか1.27mm(50Hz)で,
小振幅,低歪みを実現していました。
また,AFPは,平面波状に低音を放射するため,球面波状に低音を放射する通常のスピーカーに比べ,室内
の反射等の影響を受けにくく,距離による減衰も少ないという特徴があり,空気の揺らぎまで再生する,整った
力強い低音が空間の中に展開されるというものでした。さらに,AFPでは,密閉型と開放型の両者を兼ね備えた構造の,ツイン・キャビ方式のエンクロージャーを採用
していました。これは,一つのキャビネットの中に密閉部と開放部を同時に存在させるもので,ユニット自身の
背面を,密閉された部分と開放された部分に分割した構造になっていました。全部を密閉型にしたものに比べ
キャビネットのスティフネスが小さくなり,システム全体の最低共振周波数を低く設定でき,より低い周波数か
ら大きな音圧を得られるようになっていました。また,開放部においては,背面に放射される音をキャビネット
に設けられた後方ダクトから放射することで,前後に放射される音の位相差が大きくとれ,逆位相による音圧
の低下を防ぐ効果が得られていました。このツイン・キャビ方式により,厚さわずか6.4cmというキャビネット
が実現していました。
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AFP1000は,4ウェイ構成で,シリーズの最上級機として全部で20個ものユニットが搭載された大規模なスピ
ーカーシステムでした。
ウーファーは30cm×80cmの長方形の平面型が8個,ミッドローは13cm×32cmの長方形の平面型が4個
搭載されていました。ウーファーとミッドローに使用されている振動板は,内部損失の大きい発泡マイカ(雲母),
天然高分子(キチン質)を重ね合わせた多層構造となっていました。キチン質はカニやエビなど,甲殻類の外皮
に含まれる天然高分子で,パルプの主成分であるセルロースと似た構造をしており,架橋剤を加えて抄造加熱
することで剛性で従来の1.2倍,内部損失は3倍と,振動板素材としてより理想に近づくことができていました。
ウーファーとミッドローの振動板の表面は,染料として日本伝統の藍染めが使用され,色あせを防ぐとともに,振
動板の耐久性を高めていました。
ウーファーとミッドロー振動板は大面積の平面振動板を,コンピューターでの3次元解析による独自の4点駆動方
式をとることで,振動板の固有振動を生じさせない4点を4つのボイスコイルで駆動し,共振モードが排除され,広
帯域化を実現していました。ミッドハイは8cm口径の平面型で,マイカ振動板の上に日本伝統の漆をコーティングしたものでした。粘弾性素
材である漆が振動板の必要以外の振動を抑止する効果を持っていました。
トゥイーターは2.7cm口径で,マイカ振動板の上にダイヤモンドをコーティングしたもので,すぐれた高域の再生
能力を実現していました。システム内部の内部配線材やチョークコイルの線材,ネットワーク素子間の直結配線はLC-OFC(線型結晶無
酸素銅)が使用されていました。また,ウーファー用からトゥイーター用までの各ネットワークを分離独立することに
よりクロストークを避けていました。スピーカー端子も,4mm端子の極太コードが接続可能な大型金メッキ端子が
搭載されていました。
キャビネットは,独自の薄型設計に加え,ピアノフィニッシュ(黒色塗装鏡面仕上げ)で,気品と風格のある外観を
実現していました。
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以上のように,AFP1000は,リニアフェイズスピーカー,ハニカムディスク平面ユニットと着実な歩みを続けてきた
テクニクスならではの高い技術力から生まれた高級機でした。当時,ウィーンの国立歌劇場にもいち早くモニター
として納入され,リハーサル等で使用された際,生に近いと高い評価を受けていました。まさに超弩級の逸品だっ
たといえるでしょう。
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Technics SB-AFP10 SB-AFP100
¥500,000 ¥1,500,000AFPシリーズには弟機としてAFP10,AFP100も発売され,こちらも優れた性能を持つスピーカーシステムと
して高い評価を得ました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
新世代スピーカーシステムを
代表するシリーズ最高峰。
音響理論から導き出した
独創のツイン・キャビ方式が,
平面波伝送による高忠実度低歪の
低域再生を実現しました。
◎80種に及ぶテストモデルの検討と
徹底したコンピュータシミュレーション
◎薄型キャビネットが繰り出す
重低音のスケール感,息づかい
◎直径152cmのウーハにも相当する
世界最大の大面積振動板
◎空気のゆらぎまでを表現する
平面波状の重低音
◎天然高分子(キチン層)を用いた
多層構造(低音用ユニット)
◎日本伝統の藍染め,漆(うるし)を
振動板に使用
◎独自の4点駆動方式により
再生帯域を拡大
◎高品位パーツ使用
デバイディングネットワーク
◎ピアノフィニッシュによる
薄型キャビネット
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型式 | 4ウェイ20スピーカー,密閉開放併用型 | 4ウェイ10スピーカー,密閉開放併用型 | 4ウェイ5スピーカー,密閉開放併用型 |
使用スピーカー | ウーハ:30cm×80cm平面型(×8)
ミッドロー:13cm×32cm平面型(×4) ミッドハイ:8cm口径平面型(×4) ツィータ:2.7cm口径平面型(×4) |
ウーハ:30cm×80cm平面型(×4)
ミッドロー:13cm×32cm平面型(×2) ミッドハイ:8cm口径平面型(×2) ツィータ:2.7cm口径平面型(×2) |
ウーハ:30cm×80cm平面型(×2)
ミッドロー:13cm×32cm平面型(×1) ミッドハイ:8cm口径平面型(×1) ツィータ:2.7cm口径平面型(×1) |
インピーダンス | 6Ω/12Ω | 6Ω/12Ω | 6Ω |
出力音圧レベル | 93dB/W/m | 92dB/W/m | 90dB/W/m |
許容入力 | 1,400W(MUSIC),600W(DIN) | 700W(MUSIC),300W(DIN) | 350W(MUSIC),150W(DIN) |
クロスオーバー
周波数 |
180Hz,500Hz,3kHz | 180Hz,500Hz,3kHz | 180Hz,500Hz,3kHz |
再生周波数帯域 | 35Hz〜40kHz(−10dB) | 35Hz〜40kHz(−10dB) | 35Hz〜40kHz(−10dB) |
外形寸法 | 220W×225H×94Dcm
(スタンド脚付) |
120W×225H×94Dcm
(スタンド脚付) |
100W×117H×47.6Dcm
(スタンド脚付) |
重量 | 320kg(スタンド脚付) | 170kg(スタンド脚付) | 73.5kg(スタンド脚付) |
※本ページに掲載したSB-AFP1000,SB-AFP100,SB-AFP10
の写真,仕様表等は1988年1月のTechnicsのカタログより抜粋した
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