父・樋出誠詢は自然科学が大好きでした。中学生のころニシキマイマイという貝の新種を発見しましたが、彼が鑑定を依頼した旧制中学校の教諭八幡先生のお名前から、ヤハタマイマイと命名されました。もちろん単に発見したというだけで、なんら研究実績も無い子供故それは当然のこととはいえ、やはり子供心にも残念だったのでしょう。そして趣味として単に貝を集めるだけでなく色々研究するうち、微小貝の魅力に取りつかれたようです。奄美大島や富山県に採集旅行に行ってはリュックサック一杯の砂!をかついで帰り、さらに段ボール数箱の砂を小包で送ってきていました。その山のような砂を顕微鏡で、それも実に診療の合間に(^_^;)観察し、その中に含まれる僅かな微小貝を選択・分別し研究していました。おかげで樋出の歯医者さんは口を開けさせたまま顕微鏡を覗いてる、と冗談交じりの悪口を言われていました。
その成果がここに掲載するヒノイデミジンツツガイ他の数種の新種で、波部忠重先生が鑑定、御考察の上、論文としてまとめられました。この場をおかりして、亡父に代わりまして心より御礼申し上げます。
参考文献
ヒノイデミジンツツガイ(Caecum hinoidei
) 体長(殻長)4.0mm、口径0.9mm
ラテン名のCaecumというのは盲腸という意味があるそうで、生前父は「俺は盲腸をいっぱい持っているんだ。」
とよく自慢していました。自然科学に疎いひのひのにはよくわかりませんが、亡父いわく和名はともかくラテン名まで付くのは非常に名誉なことで、おおげさに言うと人類が続く限りhinoideの名が残るのだそうです。ホントかな?
ひのひのの所属する東京歯科大学歯内療法学講座の淺井教授と中川講師の御好意で電子顕微鏡で撮影していただきました。
マガタマミジンツツガイ(Fartulum
magatama ) 体長1.8mm、口径0.6mm
父誠詢が奄美大島で採取したものです。近縁の新種として文献にはアマミミジンツツガイが同時に記載されていますが、そちらはオリジナルの写真が不明のため収録できませんでした。
モヨウミジンツツガイ(Pictcaecum
japonicum ) 体長2.2mm、口径0.5mm
樋出誠詢が能登と奄美大島で、坂下泰典氏が知覧にて、加藤繁富氏が伊豆半島で採取されているそうです。
マダラミジンギリギリツツガイ(Caecum
maculatum) 体長2.8mm
これは父が新種として認定されるにあたってなんら関与していない微小貝ではないかと思いますが掲載いたします。
もしかしたら波部先生のご成果かも知れませんが、門外漢のひのひのですのでわかりません。どなたか御教示ください。
Family
CTILOCERATIDAE ノシジガイ科(波部・樋出,1978)
Subfamily PARASTROPHINAE ノシジガイ亜科
Genus Parastrophia de
FOLIN,1869 ノシジガイ属(波部・樋出,1978)
Parastrophia japonica Hinoide &
Habe,1978(波部・樋出,1978)慰斗字貝
模式産地、奄美大島竜郷町土浜、分布・奄美大島、沖縄(潮間帯、砂底)
波部忠重:日本産ミジンギリギリツツガイ科の4新種,貝雑,37巻,1号,1978:1−6.
樋出誠詢、波部忠重:新種ノシジガイ(ノノジガイ科),貝雑,37巻,2号,1978:55−57.
波部忠重:日本新加入の「の」の字貝科,ちりぼたん,10巻,1号,1978:8−9.
樋出誠詢、波部忠重:シラタマアマガイ Pisulina
adamsiana G.&H.Nevill
の2型,ちりぼたん,22巻,2号,1991:49.