原発バイバイCM裁判続行中


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 ■ テレビCM 原発バイバイ ■

放映中止の批判的検討

渡辺武達 同志社大学教授/ジャーナリズム論

 

 はじめに 


本稿では、メディア・ホークス(Media Hoax=偽情報の送出)の政治的社会的結構の解明素材として、いわゆるテレビCM「原発バイバイ」の放映中止問題をとりあげる。これは1990年6月、(株)瀬戸内海放送が日本民間放送連盟放送基準をたてに、CM提供者である(有)ちろりん村の合意なくしてその放映を突然中止したその措置を了承しない(有)ちろりん村が放映継続をもとめて現在裁判であらそっている事件である。

本稿ではこの事件の構造と意味をメディアと社会の相関という視座から、

 1 問題の所在とその発端

 2 広告論

 3 ジャーナリズムの社会的使命

 4 マスノディアの法制

 5 テレビ局の編成権とマスメディアの編集権

 6 当該CMの意味論

 7 放送法と放送番組の現状

 8 原子力発電と科学情報のとらえ方

 9 原発論議の社会的背景

10 テレビ番組と広吉主

などの項目についてとりあげ、その放映中止の不当性、ならびにそれを許してしまうことがメディアをますます市民の手からはなれさせてしまう危険性について明らかにしたい。

いうまでもなく、私が前回『「やらせ」番組の社会的構造』(同志社大学人文学会発行『評論・社会科学』第47号、93年7月刊)でNHKの「やらせ」をとりあげたのは決してNHK批判だけをするためではなく、日本のジャーナリズムとマスメディアの根本的欠陥をえぐりだし、その質的向上に資するためであった。

その意味では今回の「原発バイパイ」CM論のモチーフも当該(株)瀬戸内海放送を批判するためではなく、その背後で日本の放送界を支配する論理とその力学的実態をあきらかにし、日々の膨大な情報提供によって私たちが何について考えたらよいのかについてまで規定してしまいかねないほどの影響力を持ちだしたマスメディアの本来のあり方の追究である。そのことが、メディアを真に市民にたいする奉仕機関にするためになると考えるからである。


 この論稿は1〜10まで続いています (5と7は省略)


1 問題の所在とその発端
2 「原発バイバイ」についての広告論
3 マスメディア・ジヤーナリズムの社会的使命
4 メデイアの法制
5 テレビ局の「編成権」と自主的判断について(略)
6 「原発バイバイ」の意味論的検討
7 現行テレビ番組の放送法、および放送基準違反(略)
8 原子力発電の科学的・社会的位置づけ
9 「バイバイCM」中止の社会的背景
10 広告主の存在




 むすび 

以上のべてきたことから明らかなように、(株)瀬戸内海放送による(有)ちろりん村提供の「原発パイバイ」という文言を含んだテレビ・コマーシャルの放映中止の理由は、その表向きにいわれた日本民間放送連盟の放送基準に抵触するということではない。じっさいには、これは現行日本の政府と電力事業団体の意向、そして上述のさまざまな癒着構造から、それをおもんばからざるを得ない仕組みの中にとりこまれている一地方放送局の(株)瀬戸内海放送によって中止された。

このことは明確な憲法違反、放送法関連法規の違反、民放連放送基準の違反、ジャーナリズムの倫理違反であり、あるべきジャーナリズムの社会的位置づけからもおおいに疑義がある措置であったということである。

その意味では、この「原発パイバイ」CMの放映中止の社会構造は前章でとりあげた「やらせ」を招来するジャーナリズムの根本的欠陥と通底する。このような巨大かつ理不尽な力によって市民の多様な言論を保障すべき公共の財産である電波を使った放送が、公共の福祉と利益に背反するかたちでコントロールされることを私たちは許してはいけないのである。

そうした立場から、ジャーナリズムの従事者およびその事業者をふくめたすべてのマスメディア関係者は、(株)瀬戸内海放送にたいして(有)ちろりん村提供による「バイバイCM」の放映中止の不当性を指摘し、同時にその放映再開を訴えていくべきであると私は考える。

最後に、社団法人日本広告業協会広告倫理綱領と民放連放送基準のつぎの規定の再読を(株)瀬戸内海放送と(株)KSBウオークによびかけると同時に、自らもその意味をかみしめておきたい。

「広告は、関係法規や倫理規制を尊重し、公正な表現をしよう」「番組およびスポットの提供については公正な自由競争に反する独占的利用を認めない」

(補記)93年12月10日、高松高等裁判所は本件控訴を棄却した。原告は即最高裁へ上告したが判決は、いまだ無し。

(補記の補記)97年10月15日、最高裁は「ちろりん村」に対して判決を下す。原発バイバ〜イ!CM裁判判決主文 『本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。』判決理由『ちろりん村の上告理由について所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。これによれば、本件コマーシャル放映契約は被上告人の解除により終了したとの原審の判断は正当として是認することができる。そして、記録に現われた訴訟の経過に照らせば、原審が所論の証拠調べをしなかったことに所論の違法があるということはできない。論旨は、違憲をいう点を含め、帰するところ、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難し、原判決を正解しないでこれを非難するか、または独自の見解に基づいて原判決の法令違背をいうものであって、採用することができない。よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。』

ううう・・・これでは腹の虫が治まらぬわい!
世界中から裁判の資料を見たいという人々の願いも寄せられておることだし、このさい仮処分から最高裁までの全ての資料を暫時公開してやる!まずはこれから↓


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