12年12月24日 (産経新聞)

2000さぬき回顧  ウミガメ 環境の”生きた教材” 小豆島あげて大切に守る
今年の夏,小豆島・土庄町の砂浜で,瀬戸内海の島では例のない出来事が起きた。
ウミガメが砂浜で産卵し,55日後には,ふ化した赤ちゃんガメたちが海へ向かって泳ぎ出したのだ。
この”夏の夜の珍事”は,県内でも大きな話題となり,小豆島は”ウミガメの来る島”として,新しいイメージをアピールし始めた。
ウミガメの産卵とふ化は,子供たちに島の自然の美しさ,命の大切さを教え,新しい人と人との交流ももたらした。来
年もまた,来てくれるだろうかー。小豆島の人たちは,いまからウミガメを待ちわびている。
☆不思議な縁

 小豆島とウミガメとは,もともと不思議な縁で結ばれていた。
 小豆島はギリシアのミロス島と姉妹島提携を結んでいるが,その縁結び役を果たしたのが,ギリシア人のウミガメ保護家,リリー・E・ベリゼロス氏だった。内海町の太陽の丘にある「平和の鐘」のドーム屋根をウミガメのように思い,島を気に入ったベリゼロス氏が,二つの島の縁を取り持ってくれたのだった。
 そうした経緯から,島内の池田港と高松港を結ぶフェリーには,シンボルとしてウミッガメ像が設置されているし,土庄町では英語でカメを意味する言葉を名前にした「タートルマラソン」が毎秋,開催され,多くの人が汗を流している。
☆月下の珍客

 そんな小豆島にウミガメが訪れたのは今年7月8日だった。午後9時半ごろ,土庄町の砂浜でウミガメが産卵しているのを,町立戸形小学校の6年生が見つけた。海沿いの校庭で行われたスポーツ少年団の親睦会で,海を眺めていて,月明かりに照らされたウミガメを発見したのだった。
 ウミガメは,甲羅の長さ約80a,幅約60aで首から尾までが約1.2b。集まった児童ら約40人はウミガメが産卵を終えて帰るまで見守った。誰とはなく拍手が起こり子供たちは「また来てね」「元気でね」と声をかけた。感動的な一場面だった。
 55日後の8月31日,卵から生まれた赤ちゃんガメは瀬戸内海へ向かって泳ぎ出した。瀬戸内海の島では確認された例のないニュースは,いろいろなところで話題となったが,この”珍客”がもたらしたものは意外に大きかった。
☆広がる交流

 実は,産卵場所はふ化には条件が悪く,調査の結果,卵は移し替えられたり,一部,人工ふ化された。その際,手を貸してくれた神戸市須磨区の須磨海浜水族園でウミガメの飼育をしている大鹿達弥さん(28)たちと,戸形小児童とは,いまも交流が続いている。
 児童らは,ふ化を自由研究などの題材にしたが,学校でも生命の誕生の不思議さや,砂浜をきれいにしてウミガメの再来を願うなど,児童の環境問題への関心も高める”生きた”教材として利用。大鹿さんも,それに快く協力した。
 飼育のため神戸の水族園に持ち帰られた2匹の赤ちゃんガメと大鹿さんに会おうと,全校児童が水族園を訪問し,感謝の言葉を伝えたこともあった。
☆また来てね

 地元自治会も動きだした。子供たちの「ウミガメさんまたきてね。海をきれいにしておくからね」というメッセージと,産卵とふ化の記録を刻んだ記念碑を,ウミガメの発見地点に建立することにした。記念碑は来年2月18日,除幕式が行われるが,塩本淳平土庄町長も「町の貴重な出来事」と喜ぶなど,いまでは町をあげての事業となっている。
 来春,12人の6年生が戸形小を巣立つ。大鹿さんは「戸形の子どもたちの純真な瞳が印象的。ウミガメが繰り返し来る環境を考える人に育って欲しい」と願いを託す。”二十四の瞳”にとっても忘れることのできないウミガメたちが来年また,戻って来ることを願いたい。

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