美紗緒と帽子と砂沙美と気持ち
キーンコーンカーンコーン・・・
桜の季節も終わり、学校の制服も少し暑く感じる様になったこの頃。
金曜の授業も終わり、土曜、日曜と今時の小学校はお休みが続く。
下校途中の美紗緒と砂沙美も明日からのお休みを考えてか笑顔がこぼれていた。
「美紗緒ちゃん・・・今日も暑いね〜」
「うん・・・私暑いの苦手だから・・・」
見上げた空の陽射しは、美紗緒の肌をじりじりとてらしている。
「ん・・・」
手をかざしまぶしげに空を見上げている美紗緒。
長い髪が風に少しなびいている。
砂沙美の脳裏に去年の夏の海の風景がオーバーラップしてゆく・・・。
・・・帽子・・・美紗緒ちゃんに似合いそうだな・・・
その時、ふと砂沙美は思いだした。
「砂沙美ちゃん・・・どうしたの?ぼーっとして・・・」
美紗緒の問いかけに、ふと我に戻る。
「え・・・なになに?美紗緒ちゃん」
「砂沙美ちゃんさっきからぼーっとしてるから・・・」
見ると、もういつもの分かれる曲がり角の所まで来ていたのだった。
「あ・・・じゃ、またね!美紗緒ちゃん!」
「うん。じゃあね」
ふたりは手を振って別れた。
砂沙美は美紗緒が帰って行くのを見届けると、勢いよく自分の家へと走りだした。
「ただいま!!・・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
玄関先で肩で息を切って居る砂沙美を出迎えたのは、呆れたような表情の魎皇鬼だった。
「砂沙美ちゃん・・・どうしたの?今日はいつにも増して元気いっぱいだけど」
砂沙美は返事もせずに、ひょいと魎皇鬼を鷲掴みにがばっと掴み上げる。
「ねぇ魎ちゃん!えっと・・・ママは?ママ居る?」
突然の事に怯えた様子の魎皇鬼。
「わわっぁ・・・マ、ママさんならお店の方にいると思うけど・・・」
「ありがと!魎ちゃん!」
そう言うと靴を器用に脱ぎ捨てて、魎皇鬼を放り出して砂沙美は店の方へ走っていった。
「あう〜・・・・砂沙美ちゃんったらどうしたんだろ?」
魎皇鬼は脱ぎ捨てた靴に埋もれながら砂沙美のことを見送った。
「ママ!」
バン!
勢いよく店へのドアを叩き開けた。
「あら・・・砂沙美ちゃんお帰りなさい」
しかし、ほのかは驚いた様子もなく砂沙美を見つめている。
・・・・・・
「えっとね・・・ママ・・・商店街のチケットなんだけど・・・」
「ああ、あの商品と交換してくれるチケット?」
チケットとは、お札ほどの大きさの紙に1000や5000の数字が印字されていて、商店街の判子が押してあるだけ簡単な物で、商店街で買い物をするとその金額に応じてもらえる様になっている。
で、ある程度点数を集めると景品がもらえる仕組みになっているのである。
ふたりは、店に客が居ないのをいいことに、レジのすぐ後ろの事務処理に使うカウンターに腰掛けて話していた。
「この前別に欲しい物無いって言ってたでしょ?砂沙美欲しい物があるの・・もらっちゃってもいい?」
砂沙美は、いかにも子供が親に物をねだる仕草で話している。
ほのかもそれに気づいてか、少し焦らすような素振りを見せるのだった。
「うーん・・・・別に構わないけど・・・砂沙美ちゃん、この前いらないって言ってなかった?」
顎に手をあてて首を傾げるほのかに、砂沙美は焦れったそうな手振りで話し続ける。
「あ〜いろいろ事情があるの!」
「ふーん・・・ま、いっか♪じゃ、今持ってくるからちょっとお店お願いね♪」
「うん!」
ほのかは住居の方へチケットを取りに行った。
その間、砂沙美は揚々とほのかが戻ってくるのを待つのだった。
「はい、砂沙美ちゃん。これの事でしょ」
「うん!これこれ!ママありがと!」
砂沙美は言うが早いかお店側に置いてある靴を履くと、そのままお店の出入り口から走っていってしまった。
「あらあら・・・そんなに急がなくても」
ほのかは微笑んで砂沙美を見送った。
商店街の中にある商店街事務所のショーウィンドウに並んでいるチケット交換用の景品。
砂沙美は景品を眺め、目的の物を見つけたのだった。
「やっぱり・・・確かあると思ったんだ・・・」
景品には高い物ではテレビや自転車、果ては温泉旅行券なんて物までならんでいた。
もちろん、その分点数は高めに設定されていて、ちょっとやそっとじゃ集められない点数といったところがミソである。
また、安い物ではぬいぐるみやタオル、ポットやスタンド等の電化製品や商店街で有効の商品券等、実生活に結びつくような物が多くならんでいた。
その中で、砂沙美の目的は「麦わら帽子とバッグのセット」だった。
つば広で丸い頭の麦わら帽子と、ピンクか青の2色が選べる小さなバッグのセットで、砂沙美は以前、チケットの話が家で出たときに見に来た時の事を覚えていたのだ。
「へへ・・これこれ・・・美紗緒ちゃんに似合うと思うんだよね・・・」
砂沙美の脳裏に、先ほどの眩しげに空を見上げている美紗緒の姿が浮かんできた・・・・
真っ白で袖のないサマードレス姿の美紗緒。
強い陽射しに、じりじりとその白い肩がやけているように見える。
その中に二人は立っていた・・・。
「美紗緒ちゃん・・・これ・・プレゼント!」
「わぁ・・砂沙美ちゃん・・・ありがとう!」
手渡された帽子をかぶってみる美紗緒・・・。
「えへへ・・・・」
「わぁ・・・・ねぇ・・似合うかな?」
砂沙美の前で簡単にポーズを取ってみせる。
「うん!」
砂沙美は満面の笑みでそれにこたえた。
美紗緒も笑顔をみせていた・・・・・・。
ふと、我に返る砂沙美。
「あ・・・そだ、これって何点あるんだろ?」
砂沙美は、もらったチケットを慣れない手つきで数えだした。
「・・・・39000・・・39500・・・40000!!」
数えてみると40000点ちょうどある。
で、次にショーウィンドウの景品の点数を見てみると・・・・
「で、この帽子は・・・・・えっと・・・」
点数のタグを見て砂沙美は言葉を失った。
「・・・・50000点・・・・」
ちょうど10000点。
金額で言うと1000円分の買い物をしないともらえない分の点数が足りなかった。
「10000点も足りないよ・・・・」
さっきまでの楽しかった思いが一気に沈んだ空気によって消されてゆく。
ショーウィンドウの景品も先ほどとは違い、恨めしくさえ思える。
「砂沙美・・・・1000円もお金持ってないよ・・・」
その時だった。
「そうだ!」
砂沙美は自分の店に向かって勢いよく走り出した。
「ママ!」
お店の出入り口から先ほど出ていったときと同じように、勢いよく入ってくる砂沙美に、驚きもせずほのかは見つめていた。
「あら、砂沙美ちゃんそんなに急いじゃって・・。
景品は何をもらってきたの?」
「ううん、ちがうのママ」
砂沙美は点数が足りないことを、ほのかに話すのだった。
「なるほど・・・・・それで?」
「それでね・・・」
砂沙美はすっと後ろに下がると頭を下げて言った。
「ママ!お願い!!お店のチケットちょうだい!」
砂沙美の店も商店街の中のお店なので、当然、買い物をするとチケットをくれる。
砂沙美はその分のチケットを欲しいと言っているのである。
だが、ほのかは砂沙美の視線の高さに腰を下ろすと優しい声で話し出した。
「うーん・・でもね、砂沙美ちゃん。
こういう風にずるをしちゃうのはダメなんじゃないかな?」
しかし、砂沙美はなおも食い下がる。
「でも・・・明日で今月も終わりだから・・・また景品が変わっちゃうから・・・」
砂沙美は少しぐずつきながらほのかのことをまっすぐに見つめている。
チケットの景品はマンネリ化を防ぐのと同時に、季節の景品なども並ぶ都合上、月に一回の割合で景品は交換されるようになっていて、もちろん、高額な景品や季節にあまり関係のない物はそのまま残るのだが、あの帽子が来月もあるとは限らない。
砂沙美はそのために、どうしても明日までに点数をそろえたかったのだ。
「そうしたら・・・帽子無くなっちゃうかもしれないから・・・どうしても、あの帽子・・・美紗緒ちゃんに・・・・あげたかったから・・・」
砂沙美は悔しさをこらえるように手をぎゅっと握り、やるせない表情を見せている。
ほのかは砂沙美の気持ちを悟って、砂沙美にひとつ提案をすることにした。
「じゃ、砂沙美ちゃん・・・こういうのはどう?」
「え・・・」
ほのかは砂沙美の肩に手を置いて、ゆっくり話し出した。
「砂沙美ちゃんが今日と明日、お店とかママのお手伝いをするの。
そうしたら、そのお駄賃にチケットを10000点分あげる。それでどうかな?」
砂沙美の表情がみるみる明るくなってゆく。
「うん!」
砂沙美は元気よくうなずいた。
その時、ほのかの後ろの住居へのドアのその隙間から・・・・銀次がその一部始終をのぞき見ていたのだった。
「さすがは、ほっきゅん・・・砂沙美もこれで大事な何かを学ぶことだろう・・」
その時、すっとほのかは振り返ると、住居へのドアに向かってウインクをしたのだった。
「・・・・お見通しって訳か・・・こりゃ一本取られたなあ!」
ほのかはにっこり微笑むのだった。
・・・・・・・
「じゃあ、早速だけど砂沙美ちゃん」
「なに?ママ」
「お台所にお夕飯の下準備がしてあるから、残りをお願いできるかしら?」
「うん!おまかせ!!」
砂沙美は勢いよく住居の方のドアを開け駆けてゆく。
「ちゃんと着替えるのよ砂沙美ちゃん!」
「うん!わかってる〜」
砂沙美は振り返らずに返事をして、階段を上っていった。
砂沙美は普段着に着替えると階段を駆け下りて台所へ向かった。
そこには下準備がしてあったカレーが鍋にかけてある。
砂沙美はそれを仕上げ、ご飯を炊いて夕飯の用意をした。
「魎ちゃん!そこにお皿ならべて!」
「ふにゃ〜」
「あ〜危ない危ない!」
「うにゃにゃにゃにゃ〜」
銀次もほのかも、砂沙美の好きなようにさせてやり、慣れない準備に手間取って時間が遅れても何も言わずに砂沙美を見守るのだった。
『ごちそうさまでした〜』
「あ、ママ!手伝うね!」
食事の片づけでも、ほのかを手伝ったりした。
その他にも、みんなが入った後にお風呂を掃除をしたり、ふたりの肩を揉んだりと、いつにも増して率先して動いていた。
砂沙美も最初は「お駄賃」が目的で動いていたが、ふたりの表情を見ていて、その気持ちが変わっていった・・・自分のしたことに対しての反応が・・・ふたりの喜んでくれる姿がうれしかった・・・だからこそ、砂沙美は率先して動けるのだった。
「あれ・・・砂沙美は・・砂沙美?」
銀次が部屋の中を見回している。
しかし、砂沙美の姿は見えない。
すると、居間の方でほのかが手招きしていた。
「銀ちゃん銀ちゃん・・・・ほら・・」
見ると砂沙美はソファーの上眠ってしまっていた。
「おやおや、あんまり張り切りすぎたのかな?」
「ふふ・・・そうみたいね」
すーすーと寝息をたてて眠る娘の姿がとても愛おしく、ふたりは微笑んだ。
「さて・・・そろそろ寝ようか、僕らも」
「そうね」
銀次はそっと砂沙美を抱き上げた。
「お、だいぶ砂沙美も重たくなったなあ・・」
「あら銀ちゃん。砂沙美ちゃんもレディなんだからそんな事言っちゃダメよ♪」
そのまま2階の砂沙美の部屋へ連れていきベッドに寝かせ付ける。
砂沙美は寝息を静かにたてている・・・そして、そっと布団を掛けてあげた。
「おやすみ・・砂沙美」
「おやすみなさい・・砂沙美ちゃん」
次の日・・・
「じゃ!配達に行って来ま〜す!」
その日も砂沙美は家の手伝いをしていた。
家の掃除や、庭のお花のお手入れ、そしてお店のお届け物などをしていて、時間はちょうど13時をまわった頃だった。
そして、その届け物の途中の事・・・。
「えっと・・・4丁目って・・・この辺だったと思うんだけど・・・」
「砂沙美ちゃんは方向音痴だからなあ・・・」
「じゃあ魎ちゃんはわかるの!」
簡単な地図を片手に右往左往している砂沙美と魎皇鬼。
そんな時、砂沙美は呼び止められた。
「砂沙美・・・ちゃん?」
「え?」
名前を呼ばれて振り返ると、そこには美紗緒が立っていた。
「あれ?美紗緒ちゃん!・・・・どうしたの?こんな所で・・・」
「え・・私は塾に行く途中なんだけど・・」
見ればくまのワンポイントの入った小さなカバンを持っている。
「砂沙美ちゃんこそどうしたの?こんなところで?」
普段会わないような所での砂沙美との出会いに、美紗緒の方もふしぎそうな表情をしている。
「あ・・私はね、お店のお手伝いで4丁目の方に行かなきゃ行けないんだ」
照れ笑いをしながら、手に持ったCDの入った袋をちらちらさせた。
「ふーん・・・大変だね。砂沙美ちゃん」
「ううん!そんなこと無いよ・・・・あはは」
「・・・すぐおだてに乗るんだから・・・」
そう言いながらも得意満面な表情で笑う砂沙美に、すかさず魎皇鬼は小声でつっこみを入れる。
「なんですって〜」
砂沙美がきっと魎皇鬼を睨むと、魎皇鬼は、ばつが悪そうに頭の上に逃げていった。
「でも・・・砂沙美ちゃん?」
「ほえ?なに・・美紗緒ちゃん?」
「あの・・・・」
美紗緒は少しもじもじと、言葉を選ぶようにして言った。
「4丁目って・・・・こっちじゃなくて、あっちの方だよ」
美紗緒の指し示す方向は、砂沙美の向かっていた方向とは正反対の方向だった。
つまり、最初から間違っていたのである。
「えー!ホントに〜!!」
砂沙美は大声を上げて驚いてみせる。
美紗緒もその声に驚いている。
「う・・・うん・・・私、4丁目のピアノの先生の所にも通ってるから・・・」
申し訳なさそうに話す美紗緒に、砂沙美はあきらめの表情を見せていた。
「あう〜・・・」
どっと疲れたようにその場にうなだれて座り込む・・・・道行く人が何気なく見ては通り過ぎて行く。
それが恥ずかしくて、美紗緒はきょろきょろと人の目を気にしながら顔を赤らめながら、振り絞るように言った。
「さ・・・砂沙美ちゃん・・・人が・・・見てるよ・・・」
「わ・・・わぁぁっ〜」
さすがに砂沙美も人の目に気が付いて立ち上がった。
「でも・・そっかぁ・・・・全然逆方向だったんだぁ・・・」
砂沙美らしくないしょんぼりした様子に美紗緒が心配げに話しかける。
「私もついていってあげたいんだけど・・・もう塾に行かないといけないし・・・・ごめんね、砂沙美ちゃん・・・」
そう言いながら、腕時計をちらっとのぞき込む。
「ううん!平気平気!美紗緒ちゃん気にしないで!」
砂沙美が元気よくこたえればこたえるほど、申し訳なく思えた。
「本当・・ごめんね、砂沙美ちゃん・・・」
「ホント気にしないで美紗緒ちゃん」
砂沙美はにっこり笑ってこたえた。
「それより時間の方は大丈夫?塾に遅れちゃわない?」
「あ・・・うん。そろそろ行かないと・・・」
「じゃ、美紗緒ちゃん、いってらっしゃい!」
「うん、いってきます♪」
そういって別れてすぐ、砂沙美は思い出したように美紗緒を呼び止めた。
「あ、美紗緒ちゃん!」
「・・・どうしたの?砂沙美ちゃん」
美紗緒が立ち止まり振り返る。
「明日・・・何か用事ある?」
「ううん・・・別になにもないけど・・・」
「じゃ、明日遊びに行っても良い?」
「うん!」
美紗緒の返事を聞いてうれしそうに砂沙美は笑った。
そして、ふたりはもう一度手を振ると別れていった。
結局・・・砂沙美がお店に戻ったのは、美紗緒と別れてから1時間以上たった後だった。
「はう〜・・・疲れた〜・・・・」
「いったいどこをどう歩くと、ああなるんだろ・・・」
魎皇鬼が頭の上でため息を付いていたが、つっこみを入れる余力さえ残っていなかった砂沙美だった。
お昼ご飯を食べて少し休みを取った後も、砂沙美はいろいろと店の手伝いなどをこなした。
ポスターを貼ったり、在庫の整理をしたりと働いた。
その様子を見ていて、ほのかも銀次も、お駄賃がかかってるからではなく、純粋に「美紗緒にプレゼントしたい!」という気持ちが素直に現れているのだと気が付いて、娘の成長を嬉しく思っていた。
「はい!おしまい!」
砂沙美はお届け物リストのファイルを閉じた。
道に迷った分だけ時間がかかってしまったが、その日の分のすべて配達が終了した。
椅子に座って首をこきこきと鳴らしている砂沙美に、ほのかが後ろからそっと肩に手をかけた。
「はい・・・・砂沙美ちゃん。一日お疲れさまでした」
「あ、ママ・・・後は何かある?」
ほのかは砂沙美からファイルを受け取ると、にっこり微笑んだ。
「ううん・・・今日は砂沙美ちゃんが頑張ってくれたからもうおしまい♪」
「じゃあ・・・」
「うん。砂沙美ちゃんご苦労様でした」
ほのかは、砂沙美の肩を優しく揉んであげるのだった。
・・・・・・
「はい。約束のチケット」
「やったぁ!ママありがとう!」
砂沙美はチケットを受け取ると喜び勇んで店を後にした。
「良い勉強になったんじゃないかな?・・・・なぁ、ほっきゅん!」
「そうね、銀ちゃん」
ふたりはそっと見つめ合い、微笑むのだった。
ショーウィンドウの前でチケットの点数を確認する。
「30000・・・40000・・・・50000!うん!!」
砂沙美は事務所に入っていった。
・・・・・・・
「はい、この帽子のセットだね」
おじさんはピンクのバッグのセットを取ってくれた。
砂沙美は箱を受け取ってにっこり笑った。
「うん!どうもありがとう!」
砂沙美は扉の前で軽く一礼をして事務所を後にした。
「えへへ・・・明日・・・美紗緒ちゃん喜んでくれるかなあ・・・」
帽子を見て、美紗緒の喜ぶ姿を想像するのだった・・・。
そして・・・次の日。
砂沙美はいつもより少し早めに目が覚めた。
魎皇鬼が窓辺で目をこすっている。
「あれ・・・砂沙美ちゃん今日は珍しく早起きだね」
「もう!珍しくだけ余計だよ!」
砂沙美はそう言いながら枕を投げると見事に魎皇鬼に当たった。
砂沙美はお気に入りのシャツを着て、美紗緒の家へと向かった・・・麦わら帽子にリボンをかけて・・・・。
ピンポーン
「みっさおちゃ〜ん♪」
間をおかずに扉が開く。
「いらっしゃい、砂沙美ちゃん」
・・・・・・・
「なに?その箱・・・」
美紗緒は紅茶とお菓子を持って来ながら砂沙美にたずねた。
「あ・・これはね・・・」
砂沙美が箱をテーブルの上に置く。
美紗緒もちょうど砂沙美の向かいのソファーに座る。
「わぁ・・・・」
砂沙美は帽子を取り出すと美紗緒に差し出した。
「美紗緒ちゃん♪はいプレゼントだよ♪」
「ありがとう。砂沙美ちゃん」
美紗緒の笑顔に砂沙美も満足げだった。
「でも・・・・」
美紗緒がふしぎそうに呟く。
「なに?美紗緒ちゃん」
「だって・・・お誕生日は過ぎちゃったし・・・特に何もないと思うのに・・・突然だったから・・・あ、でも、うれしくないってわけじゃないの・・」
美紗緒は少し困惑した様子を見せている。
しかし、砂沙美は焦ることなく話し出した。
「美紗緒ちゃん・・・前に砂沙美が商店街の景品でぬいぐるみを欲しがったときのこと憶えてる?」
「うん・・・砂沙美ちゃんがおっきなぞうさんのぬいぐるみを・・・・あ、もしかして・・・・この帽子も商店街の景品なの?」
「ピンポンピンポ〜ン♪美紗緒ちゃん大正解!
この帽子はね、一昨日、美紗緒ちゃんを見てて似合うんじゃないかなって思ったの・・これから陽射しも強くなるし、美紗緒ちゃん肌弱そうだから・・・」
「砂沙美ちゃん・・・ありがとう・・・私とっても嬉しい・・・・」
「あははは・・・・砂沙美なんか照れちゃうなあ・・・」
砂沙美は照れくさそうに頭をかきながら笑った。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・真っ白な砂浜・・・蒼く澄んだ空・・・照り返す陽射しの中、砂沙美と美紗緒は走っていた。
「美紗緒ちゃんはやくはやく!」
「砂沙美ちゃん・・・待ってよぉ」
振り返り手を振る砂沙美。
笑顔で追いかける美紗緒。
砂沙美が空を見上げる・・・見上げた空が眩しい・・・。
「綺麗な空だね・・・」
追いついた美紗緒も一緒に空を見上げている。
「うん・・・そうだね・・」
美紗緒は麦わら帽子を押さえながら眩しげに空を見上げるのだった・・・。
おしまい!
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