本文中の和音の表記法や和音の解釈法等は「和声 理論と実習」
〜
、
「総合和声 実技・分析・原理」(音楽之友社)に基づいております。
旋律のための音律/和音のための音律(純正律)/旋律と和音の整合/協和と不協和の対比/転調時の音高解釈/自然四和音の利用法
参考文献
「響きの考古学 音律の世界史」(音楽之友社)
「和声 理論と実習」
〜
(音楽之友社)
「総合和声 実技・分析・原理」(音楽之友社)
代表的な不協和音の解釈法
の属7、属9和音
次に
以外の属和音の解釈を行います。まずは
の属和音について。
の三度ずつ上の
と
を付加するとそれぞれ属7、属9和音となります。ただし、
以外の付加音は前の和音から保留される必要があります。
長調の例
長調の場合、前の和音から保留された
、
と純正協和(構成音同士の音程関係全てが16/15より単純)を考慮すると根音は常に
低(10/9、182.4cent)と解釈される事になります。
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 5/4×2 | 5/4×2 | 9/8×2 | 5/4×2 | |
| 386.3+1200 | 386.3+1200 | 203.9+1200 | 386.3+1200 | |
| T2 | ||||
| 1/1×2 | 1/1×2 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 0.0+1200 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| B1 | ||||
| 3/2 | 4/3 | 3/2 | 3/2 | |
| 702.0 | 498.0 | 702.0 | 702.0 | |
| B2 | ||||
| 1/1 | 10/9 | 3/2×1/2 | 1/1 | |
| 0.0 | 182.4 | 702.0-1200 | 0.0 |
| durの |
|||
|---|---|---|---|
| 5/3×2/3=10/9 | 182.4cent | ||
| 1/1×2/3×2=4/3 | 498.0cent | ||
| 1/1×5/6×2=5/3 | 884.4cent | ||
| 1/1 | 0.0cent | 先行和音から保留 | |
| 5/4 | 386.3cent | 先行和音から保留 | |
短調の場合は
の三和音がすでに純正協和しないため、根音の
は本来の 9/8、203.9centと解釈します。第三音、第五音は先行和音から保留される
、
と純正協和可能なのでそのままでよいでしょう。
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 6/5×2 | 4/3×2 | 9/8×2 | 6/5×2 | |
| 315.6+1200 | 498.0+1200 | 203.9+1200 | 315.6+1200 | |
| T2 | ||||
| 1/1×2 | 1/1×2 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 0.0+1200 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| B1 | ||||
| 3/2 | 8/5 | 3/2 | 3/2 | |
| 702.0 | 813.7 | 702.0 | 702.0 | |
| B2 | ||||
| 1/1 | 9/8 | 3/2 | 1/1 | |
| 0.0 | 203.9 | 702.0 | 0.0 |
| molの |
|||
|---|---|---|---|
| 9/8 | 203.9cent | ||
| 1/1×2/3×2=4/3 | 498.0cent | ||
| 4/3×6/5=8/5 | 813.7cent | ||
| 1/1 | 0.0cent | 先行和音から保留 | |
| 6/5 | 315.6cent | 先行和音から保留 | |
それ以外の各和音について。
以外の属7和音の場合は長短とも純正音階上の音程を重ねれば純正協和可能です。長調の
は純正協和しませんので、
の構成各音と同様と解釈します。
短調の
の属7和音や各和音の属9和音については研究中です。
上記では純正協和を念頭において解説を進めてきましたが、実際の楽曲上でこのように解釈する事が正しいとは必ずしも言えません。というのは、本項で何度か述べているように、西洋音楽では構造上、三和音以外は不協和音と解釈されています。また、不協和音の役割は、その特異な響きもさることながら、次の和音へ進行する力性を持っているという事が重要です。これは、不安定な響きから安定した三和音に解決しようとする事、付加音等の限定進行による次の音への移動欲求が楽曲にヨコの動きを想起するのです。
そうすると、これらの付加和音はむしろ協和しない方が良い場合もあるという事です。
本項を参照される上での注意点を記させて頂きます。近年、音楽理論を語る際、平均律蔓延の悪影響故か、オクターブ12音分割を前提に話を進める例が多いようですが、本項においてはそのような考えは根底から排除しております。
ここでは、より音楽の原点に立ち返り、各地方伝来の旋律に使用される、各音位間が不等分な五音階、七音階に和声効果が加わって発展し、転調やゆれ等の技法が加わって音楽が成立したという視点で考察し、そこに音響的な要素である純正和音を組み合わせて行きます。そのため、主に西洋音楽で使用されてきた長調、短調の七音階をベースに解説を進めていますが、日本の陽旋法、陰旋法等、ピタゴラス音律を元にする世界の様々な旋法にも応用可能だと考えています。
純正律、和音の話を始める前に、旋律のための音律を歴史的に考察しておく必要があります。
なぜならば、旋律と和音では好まれる音律が違うからです。
「響きの考古学 音律の世界史(音楽之友社)」によると、
音階を比率の組み合わせによって表現しようという試みは実に4000年も昔から行われていたそうです。
その中で、現在まで伝わっているピタゴラス音律が成立したのは古代ギリシア時代(約2500年前)との事です。
ピタゴラス音律とは純正完全五度によって音程関係を決定するというものです。以下に具体的に解説してみましょう。
まずは、基準となる一つの音(ここではドとします)を決めた上で、その音に対して3/2の周波数関係となる音をソと決めます。
(これを調整するのは容易です。同じ太さ、長さ、強さで張った弦を二つ用意し、
その片方の弦の2/3の位置を押さえて両方の弦を同時に弾きます。
そして、そのニ音を聞いて、唸りを生じなくなるように弦を押さえる位置か弦の張力を調整します。
これをギターで試す方法があります。低い方から2番目の弦をラに合わせ、一番低い弦をミではなくレ(低く)に合わせるため、
張力を緩めながら2弦を同時に鳴らしていくと唸りがなくなる瞬間が発生します。そこが純正完全五度の点です。)
そして、そのソからさらに3/2の周波数関係となる音をレとします。このレは最初のドよりオクターブ以上高い音なので、
オクターブ下の音にします。ソから見ると3/4の周波数関係となります。以下同じようにするとラ、ミが決められます。
ここまでの五音を並べ替えると日本の陽音階となります。
この作業をさらに繰り返していくと、その後シ、
ファ
、ド
、
ソ
、レ
、
ラ
、ミ
、
シ
と完全五度関係の音が出来て行きます。
このシ
の音は元のドより約23.46cent(平均律の半音の約1/4)高い音ですが、
これを同じ音とみなして作業を打ち切ったのがピタゴラス音律です。
オクターブを12音に分割するという慣例はこのピタゴラス音律に始まったと言えるでしょう。
(ちなみに、約23.46centの誤差を12個の五度に平均して分散させたのが12平均律です。)
ところで、現在も長調、短調として使用されている七音階にピタゴラス音律を使用する場合、
ミ
は高すぎるため、ドの完全四度上(完全五度下)、
4/3の周波数関係となるファの音を使用します。
よって、ピタゴラス音律による七音階は以下の通りです。
| ピタゴラス音律による七音階 | |||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ | |||||
| 1/1 | 9/8 | 81/64 | 4/3 | 3/2 | 27/16 | 243/128 | |||||
| 0.0 | 203.9 | 407.8 | 498.0 | 702.0 | 905.9 | 1109.8 | |||||
ところで、当時の音楽は単旋律の物が主流だったらしいですが、
現実の音楽には半音よりも狭い微分音程と呼ばれる音程幅が存在していました。
これらの音程幅はピタゴラス音律では表現できなかったため、
数比によらず、人の音感覚によって分割した音程幅を単位とした音律決定の試みも行われました。
また、比率の組み合わせによって表現する試みも行われました。
その後、紀元1世紀頃には微分音程は淘汰され、ピタゴラス音律のみが後世に伝えられて行きました。
この理由はピタゴラス音律による旋律効果が当時の人々の音感覚に合致したためと「響きの考古学」に記述されていますが、
それと同時に、ピタゴラス音律による音階決定方法が比較的簡単で、しかも時、場所を問わず、
同じ操作によって同じ効果を得られるという事が、広まっていくための大きな要因ではなかったかと想像します。
(人間の音感覚は個人差があるため、行う人、時、場所によって同じ結果がでるとは限らない)
また、この純正完全五度によって音律を決定するという方法は中国(三分損益法)や日本(順八逆六)でも昔から存在しており、
ピタゴラス音律の音程幅が欧州、中国、日本の人々の音感覚に受け入れられていたと言う事が出来ます。
無論、あくまで各民族の音感覚が大元にあり、その好まれる音感覚を数値として固定していく過程で創られたのが音律であり、
その創られた音律が人々に受け入れられる事によって、音楽の基盤として受け継がれて行ったという事は指摘しておくべきでしょう。
例えば、アラブ圏ではピタゴラス音律のみでは人々の音感覚に合致せず、
ミ
(32/27、294.1cent)とミ(81/64、407.8cent)の間に27/22、
354.5centの音を設定し、その音程幅がアラブ圏の人々に受け入れられたために、
こうした微分音(平均律やピタゴラス音律の半音よりも小さな音程幅)が音楽における重要な要素として受け継がれて行きました。
話が逸れましたが、結論として、欧州、中国、日本の人々の旋律において好まれる音感覚はピタゴラス音律の全音(9/8、203.9cent)と半音(256/243、90.2cent)であると言えます。
ただし、私の経験によると、横の旋律の音感覚は縦の和音のそれに比べると許容範囲が広い(ようするにいいかげん)ので、
全音、半音とも多少の誤差があっても問題はないようです。
その意味では、平均律の全音(200cent)、半音(100cent)を基準としても問題は余りないのですが、
以下の和音のための純正律と整合を図るために分数で表現可能なピタゴラス音律を主として話を進めて行きます。
また、こうした旋律においてピタゴラス音律が好まれるという事は声楽や合唱において無意識に取り入れられております。例えば半音下がって半音戻るという旋律の場合、歌手や指導者はその半音を意識的に平均律よりやや狭く歌ったり、指導する例があります。これはそのように半音を狭く歌う方が聴衆への聞こえ方が良いという事を認識しているためです。他にも導音(シ−ドの進行)進行時にも同様の配慮が良く見られます。こういったテクニックはバイオリンにもあるようで、音程を耳で聞いて決める楽器には共通して存在するようです。
10世紀以降、西洋音楽では旋律要素のみでなく、ハーモニーという縦の関係が取り入れられるようになりました。
当初はピタゴラス音律が包括している純正のオクターブ(2/1)、完全五度(3/2)、完全四度(4/3)のみが用いられていましたが、
やがて純正(長、短)三度が取り入れられていきました。ピタゴラス音律における三度は、長三度が81/64(407.8cent)、
短三度は32/27(294.1cent)といずれも複雑な比率になって心地よい協和を生み出しません。これに替わって、
より協和する三度(長三度、5/4、386.3cent、短三度、6/5、315.6cent)がハーモニーのなかに求められるようになりました。
ここで指摘しておきたいのは、ここまでハーモニーとして見なされていたのはオクターブ(2/1)、完全五度(3/2)、
完全四度(4/3)と、2と3の素数の組み合わせによる比率の関係で表せるものであり、
ピタゴラス音律もそれを組み合わせて創られているので、音階各音の相対周波数比率は全て2つの素数の組み合わせで表現されます。
しかし、ここで登場した純正(長、短)三度はどちらも5の素数を比率に使用しています。
西洋音楽は主にこの3つの素数の組み合わせで作られる比率の和音を基盤として構成されて行きました。
さて、それではこの純正和音を使用していく方法を古典和声学をベースに解説していきましょう。
基本和音
三和音は音階のそれぞれの音の上に音階に沿った一つ飛ばしの音を二つ重ねたものになります。

| D進行: | |
|---|---|
| T−D6−D5−D4−D3−D2−D1−T | |
| S進行: | |
| T−S6−S5−S4−S3−S2−S1−T |
しかし、常用範囲としては、長調では
が、
短調では
が完全五度をもたない事、
S進行が最小カデンツ以外、使用されなくなった事等から以下の3通りに簡略化されました。
| K(カデンツ)1 | T−D−T |
|---|---|
| K(カデンツ)2 | T−D2−D−T |
| K(カデンツ)3 | T−S−T |
これらの機能に各和音が振り分けられる訳です。そこから各和音の具体的音高を解釈していきましょう。
音階の基準となる
を基音とする三和音であり、
カデンツ、楽曲の終点として充分な安定性を求められます(T機能)。
そのため、その構成音の
、
は
に対して純正三度、
五度の関係と解釈できます。
| durの | molの |
||||
| 1/1 | 0.0cent | 1/1 | 0.0cent | ||
| 1/1×5/4=5/4 | 386.3cent | 1/1×6/5=6/5 | 315.6cent | ||
| 1/1×3/2=3/2 | 702.0cent | 1/1×3/2=3/2 | 702.0cent | ||
この和音は常にDとして機能します。
−
−
というK1の最小カデンツを考えてみましょう。これは短い音符で進行する場合、
の音を保留した上で
、
音が下方転位(ゆれ)(
が
へ、
が
へ)して元の位置(原位)に戻った(解決)ものと解釈できます。

| durの | molの |
||||
| 3/2×1/1=3/2 | 702.0cent | 3/2×1/1=3/2 | 702.0cent | ||
| 3/2×5/4=15/8 | 1088.3cent | 3/2×6/5=9/5 | 1017.6cent | ||
| 3/2×3/2×1/2=9/8 | 203.9cent | 3/2×3/2×1/2=9/8 | 203.9cent | ||
用語解説
上方転位、下方転位:和音の構成音のいずれかが七音階の隣り合う位置に移動している事
上方変位、下方変位:和音の構成音のいずれかが増一度関係(半音)の位置に移動している事(音階上にない音の可能性もある)
はSとして機能する場合と、
の根音省略形態としてD2の機能をになう場合があります。
Sとして解釈する場合、
の解釈時と同様、
−
−
の短い音符での進行は
音の保留の上で
、
音を上方転位して原位へ解決すると解釈できます。

一方、D2機能としての
はどのように解釈するべきか。
本来の
の根音省略形態に戻して考えます。
以外の属7は掛留和音(先行和音からの保続によって生じた転位音を含む和音)から発展したものであるため、
原理的には第7音(
)は先行する和音(T機能の
、
もしくは
)から保留された音という事になります。
そのため、この場合もS機能の場合と同じく
を第5音とした三和音として各構成音高を確定できます。(
の各構成音高については後述)

| durの | molの |
||||
| 1/1×2/3×2=4/3 | 498.0cent | 1/1×2/3×2=4/3 | 498.0cent | ||
| 1/1×5/6×2=5/3 | 884.4cent | 1/1×4/5×2=8/5 | 813.7cent | ||
| 1/1 | 0.0cent | 1/1 | 0.0cent | ||
| 相対音名 | ||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 周波数比率 | 1/1 | 9/8 | 5/4 | 4/3 | 3/2 | 5/3 | 15/8 | |||
| セント値 | 0.0 | 203.9 | 386.3 | 498.0 | 702.0 | 884.4 | 1088.3 | |||
| 平均律との誤差 | 0.0 | +3.9 | -13.7 | -2.0 | +2.0 | -15.6 | -11.7 | |||
| 相対音名 | ||||||||||
| 周波数比率 | 1/1 | 9/8 | 6/5 | 4/3 | 3/2 | 8/5 | 9/5 | |||
| セント値 | 0.0 | 203.9 | 315.6 | 498.0 | 702.0 | 813.7 | 1017.6 | |||
| 平均律との誤差 | 0.0 | +3.9 | +15.6 | -2.0 | +2.0 | +13.7 | +17.6 |
は一般的にTと解釈され、
に準ずる扱いを受けます。
(
−
進行は
が
の根音省略としてD4−D3進行と解釈されるものですが、
のDとしての性質が非常に強いため、
その後に続く
もTと解釈されるようになった。)よって、
に先行する和音としては主に
、
、
が、後続和音としては
、
、
等が考えられます。
中でも重要なのは
、
が先行する場合です。
また、ゆれとしては
和音の第5音が上方転位したものと考えられます。
以上を踏まえて解釈しましょう。
からの進行時は第5音の上方転位と考えられるので、
と共通する
を第3音とする三和音と解釈できます。
一方、
が先行する場合、D−T進行のT機能と解釈されるため、
−
の導音進行(短調の場合でも
を上方変位する例が多いので同様に考えられます)によって基本位置の
に到達すると解釈するのが適当でしょう。
よって、主に以下のように解釈されます。またこのように解釈すると、前述の純正音階で表現できるので非常に都合が良いのです。
| durの | molの |
||||
| 1/1×5/6×2=5/3 | 884.4cent | 1/1×4/5×2=8/5 | 813.7cent | ||
| 1/1 | 0.0cent | 1/1 | 0.0cent | ||
| 1/1×5/4=5/4 | 386.3cent | 1/1×6/5=6/5 | 315.6cent | ||
はほぼ常にD2として機能します。
主な先行和音は
、
、
、
後続和音は
です。
ここではひとまず長調のみ解釈します。短調では減三和音となり、純正和音を形成しないため、現段階では解釈不能です。
この和音は後の項で解説します。
、
が先行する場合、
と共通する
、
を保留するため、
根音である
は
の純正完全五度下、
の短三度下と解釈できます。
| durの |
||
|---|---|---|
| 5/3×2/3=10/9 | 182.4cent | |
| 1/1×2/3×2=4/3 | 498.0cent | |
| 1/1×5/6×2=5/3 | 884.4cent | |
| D進行: | |
|---|---|
| T−D6−D5−D4−D3−D2−D1−T |
| T1 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 1/1×2 | 1/1×2 | 10/9×2 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 0.0+1200 | 182.4+1200 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| T2 | |||||
| 3/2 | 5/3 | 5/3 | 3/2 | 3/2 | |
| 702.0 | 884.4 | 884.4 | 702.0 | 702.0 | |
| B1 | |||||
| 5/4 | 5/4 | 4/3 | 9/8 | 5/4 | |
| 386.3 | 386.3 | 498.0 | 203.9 | 386.3 | |
| B2 | |||||
| 1/1 | 5/3×1/2 | 10/9 | 3/2×1/2 | 1/1 | |
| 0.0 | 884.4-1200 | 182.4 | 702.0-1200 | 0.0 |
| T1 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 1/1×2 | 1/1×2 | 10/9×2 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 0.0+1200 | 182.4+1200 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| T2 | |||||
| 3/2 | 5/3 | 5/3 | 3/2 | 3/2 | |
| 702.0 | 884.4 | 884.4 | 702.0 | 702.0 | |
| B1 | |||||
| 5/4 | 4/3 | 4/3 | 9/8 | 5/4 | |
| 386.3 | 498.0 | 498.0 | 203.9 | 386.3 | |
| B2 | |||||
| 1/1 | 4/3×1/2 | 4/3×1/2 | 3/2×1/2 | 1/1 | |
| 0.0 | 498.0-1200 | 498.0-1200 | 702.0-1200 | 0.0 |
ところで、前述した本来の
の姿である、
の純正完全五度上の
を根音とする和音を使用する事はできないのでしょうか。
これが使えると、
−
進行において、
−
の根音進行が純正完全五度(四度)になるし、
を保留する事も可能となる。
以上のような利点があるので、こちらの方がD2機能としては自然でしょう。
前掲の
は先行和音から共通音を保留するためにこうした結果となりました。
それでは先行和音と共通音がない場合はどうでしょう。
その例としては
が先行する場合があります。
この場合は本来の
が使用できます(下例3)。
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 5/4×2 | 9/8×2 | 9/8×2 | 5/4×2 | |
| 386.3+1200 | 203.9+1200 | 203.9+1200 | 386.3+1200 | |
| T2 | ||||
| 1/1×2 | 27/16 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 905.9 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| B1 | ||||
| 3/2 | 27/20 | 3/2 | 3/2 | |
| 702.0 | 519.6 | 702.0 | 702.0 | |
| B2 | ||||
| 1/1 | 9/8 | 3/2×1/2 | 1/1 | |
| 0.0 | 203.9 | 702.0-1200 | 0.0 |
| durの |
||
|---|---|---|
| 3/2×3/2×1/2=9/8 | 203.9cent | |
| 9/8×6/5=27/20 | 519.6cent | |
| 9/8×3/2=27/16 | 905.9cent | |
は常用範囲ではD、T、2つの機能を持ちます。
本来のD4機能としては
へすすみますが、
その
が一般にTとして解釈されるため、
それへ進む
は、その影響でDと解釈される事になります。
また一方、
からすすむ(D5機能)
は
が
の根音省略(D機能)として解釈される場合がほとんどのため、
この場合、後に続く
も
の根音省略形態と解釈され、T機能を担います。
他にも、
の第5音上方転位形態としてD機能を担う(主に
へ進む)事もあります。
まず、
の根音省略形態としては
の第3音
を根音とする三和音と解釈できます。
へ進行する場合は
が共通するので、同じく
を根音とする三和音となります。
の第5音上方転位形態の場合は本来
和音という事で、
を第3音とする三和音と解釈できます。これは前述の解釈と同一の構成音です。
基本的に
の構成各音高は以下のように解釈されます。

| durの | molの |
||||
| 5/4 | 386.3cent | 6/5 | 315.6cent | ||
| 5/4×6/5=3/2 | 702.0cent | 6/5×5/4=3/2 | 702.0cent | ||
| 5/4×3/2=15/8 | 1088.3cent | 6/5×3/2=9/5 | 1017.6cent | ||
は本来のD5機能として
へ進行する場合の他、
の根音省略形態として機能する場合があります(通常範囲ではどちらもDと解釈される)。
長調の場合は減三和音となるため後述します。また、短調の場合、
の根音省略形態では
が上方変位される事が多いため、
これも同様に減三和音となるので後の項で解説します。
よって、現段階では短調において
に進行する
のみ解説します。
この場合は
の音が共通しているので、この音を根音とする三和音と解釈できます。
| molの |
||
|---|---|---|
| 9/5 | 1017.6cent | |
| 9/5×5/4×1/2=9/8 | 203.9cent | |
| 9/5×3/2×1/2=27/20 | 519.6cent | |
前項までで三和音の処理法を解説しました。そこで本項ではそれを踏まえて実際の楽曲における処理について解説していきます。先に述べているように、旋律と和音では好まれる音律が異なる(和音は純正律、旋律はピタゴラス律、ただし後者は多少不確定)ため、実際の楽曲上ではそれらが相反することになり、いかにしてそれらを処理するかを求められます。
この処理の基本的な考え方は以下の通りです。
・音程保持時間が短く、次々と音程が変化する場合(短い音符の連続、もしくはテンポが速い箇所)は和音よりも旋律が良く聞こえてくるため、その旋律が良好に聞こえる音律(ピタゴラス律)を用いる。
・音程保持時間が長く、一定時間一つの和音が発音される場合(長い音符が続く、もしくはテンポが遅い箇所)は和音が良く聞こえてくるため、和音が良好に聞こえる音律(純正律)を用いる。
以下に具体例を挙げます。(自作曲の一部)
この曲は男声四部でT1パートが常に主旋律を担当しており、下三声は和声を形作っているので下三声は全て純正律で構成します。主旋律のT1パートの処理が問題となります。
尚、参考として純正和音を楽曲に使用する他の方法について一例を後に挙げておきます。

| 構成各音高 | B2 | B1 | T2 | T1 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 音名 | G | G | G | G | ||
| 比率 | 3/2 | 3/2 | 3/2 | 3/2 | ||
| セント値 | 702.0 | 702.0 | 702.0 | 702.0 | ||
| 音名 | C | E | G | C | 1 | |
| 比率 | 1 | 5/4 | 3/2 | 1×2 | ||
| セント値 | 0.0 | 386.3 | 702.0 | 0.0+1200 | ||
| 音名 | F | D | ||||
| 比率 | 4/3 | 9/8×2 | ||||
| セント値 | 498.0 | 203.9+1200 | ||||
| 音名 | C | G | C | E | ||
| 比率 | 1 | 3/2 | 1×2 | 81/64×2 | ||
| セント値 | 0.0 | 702.0 | 0.0+1200 | 407.8+1200 | ||
| 音名 | H | D | F | |||
| 比率 | 15/8×1/2 | 9/8×2 | 4/3×2 | |||
| セント値 | 1088.3-1200 | 203.9+1200 | 498.0+1200 | |||
| 音名 | C | G | C | E | 2 | |
| 比率 | 1 | 3/2 | 1×2 | 5/4×2 | ||
| セント値 | 0.0 | 702.0 | 0.0+1200 | 386.3+1200 | ||
| 音名 | C | E | G | C | ||
| 比率 | 1 | 5/4 | 3/2 | 1×2 | ||
| セント値 | 0.0 | 386.3 | 702.0 | 0.0+1200 | ||
| 音名 | C | E | G | C | ||
| 比率 | 1 | 5/4 | 3/2 | 1×2 | ||
| セント値 | 0.0 | 386.3 | 702.0 | 0.0+1200 | ||
| 音名 | F | F | A | F | 3 | |
| 比率 | 4/3×1/2 | 4/3 | 5/3 | 4/3×2 | ||
| セント値 | 498.0-1200 | 498.0 | 884.4 | 498.0+1200 | ||
| 音名 | E | |||||
| 比率 | 81/64×2 | |||||
| セント値 | 407.8+1200 | |||||
| 音名 | F | F | A | D | ||
| 比率 | 4/3×1/2 | 4/3 | 5/3 | 9/8×2 | ||
| セント値 | 498.0-1200 | 498.0 | 884.4 | 203.9+1200 | ||
| 音名 | C | |||||
| 比率 | 1×2 | |||||
| セント値 | 0.0+1200 | |||||
| 音名 | G | D | G | H | 4 | |
| 比率 | 3/2×1/2 | 9/8 | 3/2 | 15/8 | ||
| セント値 | 702.0-1200 | 203.9 | 702.0 | 1088.3 | ||
| 音名 | C | A | ||||
| 比率 | 1 | 27/16 | ||||
| セント値 | 0.0 | 905.9 | ||||
| 音名 | G | H | G | G | ||
| 比率 | 3/2×1/2 | 15/8 | 3/2 | 3/2 | ||
| セント値 | 702.0-1200 | 1088.3-1200 | 702.0 | 702.0 | ||
| 音名 | G | G | G | G | ||
| 比率 | 3/2 | 3/2 | 3/2 | 3/2 | ||
| セント値 | 702.0 | 702.0 | 702.0 | 702.0 | ||
解説
1の箇所
最初のCで和音を決めた後は短い音符が続くので、旋律が聞こえるピタゴラス律を用いる。
2の箇所
4声とも長い音符で音程保持されるので和音が聞こえるため、純正律を用いる。
3の箇所
和音の上で短い音符の動き。ここは旋律を強調する。
の音を発音する箇所では不協和な響きがするが瞬間的なため、和音としては余り聞こえてこないので問題にはならない。むしろ後に続く
音で協和するため解決の快感を演出する事にもなる。(後の項で解説予定)
4の箇所
最初の
音で和音を決めた後、短い音符が続くので旋律を強調する。このような純正三度と根音間のように純正三度を長二度2つで分割する場合、低い方に広い長二度(大全音)を持ってきた方が旋律的に良好に聞こえます。
| 低い <= | 9/8 203.9 | 10/9 182.4 | => 高い |
その他の注意点
短二度は16/15、111.7centより広くなると気持ち悪くなるので常に避ける。そのため、短三度を長二度、短二度で分割する場合、長二度には必ず9/8、203.9centを用いる。
また、以上の事から、和声学において三和音の第三音重複が好ましくないとされる理由も推察される。
ピタゴラス律と純正律の音階を比べた場合、音程が異なるのはそれぞれ主要三和音の第三音である
、
、
である。(下表参照)
| 長調 | 音名 | C | D | E | F | G | A | H |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ピタゴラス律 | 1/1 0.0 | 9/8 203.9 | 81/64 407.8 | 4/3 498.0 | 3/2 702.0 | 27/16 905.9 | 243/128 1109.8 |
|
| 純正律 | 1/1 0.0 | 9/8 203.9 | 5/4 386.3 | 4/3 498.0 | 3/2 702.0 | 5/3 884.4 | 15/8 1088.3 |
|
| 短調 | 音名 | C | D | E | F | G | A | B |
| ピタゴラス律 | 1/1 0.0 | 9/8 203.9 | 32/27 294.1 | 4/3 498.0 | 3/2 702.0 | 128/81 792.2 | 16/9 996.1 |
|
| 純正律 | 1/1 0.0 | 9/8 203.9 | 6/5 315.6 | 4/3 498.0 | 3/2 702.0 | 8/5 813.7 | 9/5 1017.6 |
そのため、主要三和音発音時に旋律パートと和声パートの両方に第三音が同時発音されると、微差のある旋律的第三音と和声的第三音がぶつかって不快な音を生じるので、それを避けるためである。一方、根音や第五音の場合は誤差が少ないため許容される。
また、
、
において第三音重複を許容される例が存在する理由は、ピタゴラス律と純正律で誤差のない(旋律と和音で誤差が少ない)、
、
、
の音は音程の安定性が高く、これらを第三音とするためであると考えられる。
純正和音を楽曲に応用するに当たって最も単純な方法は、平均律でとった主旋律の音程に対して純正にとった音程で和音を構成する事です。 つまり、下図のように主旋律の要所要所で和音を出す際に、その箇所の主旋律の音に対する純正な音を取って和音を構成するのです。

| 和音箇所 | 1 | 2 | 3 | 6 | 7 | 8 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 構成各音高 | |||||||
| H | 比率 | 25/12×45/32 | 211/12 | 27/12×5/4 | |||
| セント値 | 1090.2 | 1100.0 | 1086.3 | ||||
| A | 比率 | 25/12×5/4 | |||||
| セント値 | 886.3 | ||||||
| G | 比率 | 1×3/2 | 24/12×6/5 | 25/12×9/8 | 2-1/12×8/5 | 27/12 | |
| セント値 | 702.0 | 715.6 | 703.9 | 713.7 | 700.0 | ||
| F | 比率 | 25/12 | 25/12 | ||||
| セント値 | 500.0 | 500.0 | |||||
| E | 比率 | 1×5/4 | 24/12 | ||||
| セント値 | 386.3 | 400.0 | |||||
| D | 比率 | 25/12×27/32 | 2-1/12×6/5 | 27/12×3/4 | |||
| セント値 | 205.8 | 215.6 | 201.9 | ||||
| C | 比率 | 1 | 24/12×4/5 | 25/12×3/4 | |||
| セント値 | 0.0 | 13.7 | 1.9 | ||||
これまで本文の解説の中で何度か和声学の記述や実習における原則的な公理の意味について書いてきましたが、これらは純正律を研究している内に気づいた事です。ここでは本文中で語れそうにない話をします。
各声部の進行の規則の中で平行進行(2声部が共に下行、もしくは共に上行、というように同じ方向へ進行する)よりも斜行(片方が保留している間にもう一方が移行する)や反行(お互いに反対方向に移行する)を推奨されるのはなぜか?(和声学よりはむしろ対位法に近い話か)
これは多声音楽全盛の頃の音楽の事情に起因する。
まずは連続五度の響きの特異性が挙げられる。純正五度でなければ感じる事はできないが、これはかなり気持ち悪い音である。ある曲の演奏中に偶然遭遇したのだが、演奏中は気持ち良かったが、録音を聞くと内臓を上下に揺さぶられるような不快感を抱いた。この響きが当時の音楽のそれと相容れなかった事が一つの原因であろう。現在ではその特異な響きも表現の一つとして使用可能であろう。
パレストリーナ等、この時代の人気曲を見ればゆったりしたテンポや三和音を多用している事が分かる。このような曲では、三和音が純正でハモると旋律はその中に埋没して聞こえにくくなってしまうのである(しかも演奏するのは教会等残響の多い場所!)。そのような中で平行進行をしたのでは複数声部が溶け合いすぎてそれぞれの旋律が聞こえなくなり、各声部の旋律の絡み合いという多声音楽のもう一つの要素が消えてしまう。そのため、声部の独立を保つためにこうした進行が奨励されたのである。
しかし、時代が下り(初期多声楽の頃の平行オルガヌムにも言えるが)一つの旋律とそれの色づけのための和声という形が主流になると特に内声部(和声部)においては上記のような配慮は不要となっていった。
ここからは不協和音の音程解釈を行っていきます。私自身にとって不協和音の響きの解釈は厄介なものでした。当初は隣り合う2音間を純正な比率にするものと解釈していたのですが、それでは特に
和音において第三音と第七音間に25:36、631.3centという音程関係が現れ、これがかなり強烈な唸りを生じて不快な響きになってしまうのでどうしたものかと途方にくれてしまいました。
一方、不協和音(ここでは三和音以外の事)のなかでも奇妙に充実した響きを生じる和音があるのがさらに悩まされました。しかし、それらは以下のように構成各音の2音間が全て単純な比率(15:16以下)で表現できる和音である事が分かりました。
![]() | 周波数比率 8:10:12:15 |
![]() | 周波数比率 10:12:15:18 |
![]() | 周波数比率 12:15:18:20 |
![]() | 周波数比率 6:8:9 |
![]() | 周波数比率 4:5:6:9 |
![]() |
![]() |
この事を考えた時、「では作曲者はどのようにイメージしていたのだろう?」という事に思い当たりました。
作曲者が楽譜を書いた時には当然なんらかの和音のイメージがあった筈ですし、
それを探ればこの和音のあるべき姿が見えて来るのではないかと考えたのです。
それを考えた時、雑感の反響感謝の項でT.T氏から御教授頂いたテーマが参考になります。
属七和音は三度を重ねた和音であり、最初の音律であるピタゴラス音律が五度、オクターブによって構成されている事を考えると違和感があります。
ところが、「音の後進国日本」(玉木宏樹著 文化創作出版)の中に「パレストリーナの頃にソシレファの和音が登場した。」という意味の記述があり、
その当時ミーントーン(中全音律)が普及してきていた事と奇妙な符合を感じます。
つまり、ミーントーンによる鍵盤楽器によってこの和音が成立したのではないかと考えられるのです。
一方、「絶対音感」(最相葉月著 小学館)を読んでいると各所で絶対音感によって和音をイメージしているらしい事が感じられ、
その大元の音が平均律調律楽器によるものである事は自明。
となれば、そうした絶対音感を持つ作曲家が書いた和音は平均律によるイメージであると考えるのが自然でしょう。
あくまで推論ですが、こうした不協和音は書いた作曲家の時代の音律によってイメージされており、
その音律の響きから「あるべき響き」が導き出されそうです。

そこで各音律による響きの差異を比べてみました。HD-81で上記の進行を平均律、ミーントーン、
ヴェルクマイスターについては調によって違いがあるので数種の調で行いました。また自説の純正律も加える。
問題となる減五度音程間のセント値は以下の通り。
| 平均律 | ミーントーン | ヴェルクマイスター | 自説の純正律 |
|---|---|---|---|
| 600 | 620.6 | 611.7〜588.3 | 631.3 |
| ちなみにキルンベルガーやヤングでも 似たような数値になります |
以後、いくつかの不協和音について実験してみましたが、和音の響きそのものはどの音律でも差異はほぼ感じられなかったので、細かく音程にこだわる必要はないと感じました。ただ、25:36、631.3centの響きは不快なのでその比率を避ける事を考えればよいでしょう。
理論編
上記実験を踏まえて改めて和声学の解釈を試みましょう。
上で問題にしていた
の原理について「総合和声 実技・分析・原理」(音楽之友社)に記述があります。この第7音は
の根音が下方転位した音であるとの事。

一方、古典和声においてこのような転位音を含む和音はなんらかの形で解決を必要とするが、それは三和音へ解決する事によって不協和音の不安定さと後に続く三和音の充実した響きとを対比させる事によって三和音の響きの美しさ、安定の喜びを強調する事ができるのである。ただし、これは三和音を純正協和する事が大前提であり、そうした音楽の時代に成立した和声法のためである。純正協和音を聞く機会のない近年に作曲された作品ではこうした協和音への解決という概念はおそらくないであろうから不協和音に関する考え方も異にする必要があるだろう。
このような協和と不協和の対比が上手く表現された演奏としては2002年に聞いたRenner Ensemble Regensburg(ドイツの男声合唱団)や2000年に聞いたアクースティックス(バーバーショップグループ)の演奏が挙げられる。
以上を踏まえると属七和音の響きの上では音程を確定する事はできないし、必要もないが、演奏上の便宜的に旋律面から考察を加えると、25:36、631.3centの響きを避け、
−
の短二度進行の音程幅を広げすぎないために第7音の
の音高は純正音階上と同一で
の完全四度関係(4/3、498.0cent)とするのが適切でしょう。
また、このように解釈すると、以下のような進行の場合、
を同一音高で保留できるので演奏上都合がよくなります(B1パート)。
| T1 | |||
|---|---|---|---|
| 15/8 | 1/1×2 | ||
| 1088.3 | 0.0+1200 | ||
| T2 | |||
| 3/2 | 3/2 | ||
| 702.0 | 702.0 | ||
| B1 | |||
| 4/3 | 4/3 | 5/4 | |
| 498.0 | 498.0 | 386.3 | |
| B2 | |||
| 3/2×1/2 | 1/1 | ||
| 702.0-1200 | 0.0 | ||
| 3/2×1/1=3/2 | 702.0cent | |
| 3/2×5/4=15/8 | 1088.3cent | |
| 3/2×3/2×1/2=9/8 | 203.9cent | |
| 3/2×16/9×1/2=4/3 | 498.0cent | |
それでは以前の項で保留していた減三和音の解釈を行いましょう。前項で解説したように不協和音の響きには音程を確定できる一点というものがないので、便宜上、決定的な問題となる25:36、631.3centの響きを避けつつ、前後の関係と旋律の都合を考慮して解釈するのが適当です。
短調の
においては長調のように低い
(10/9、182.4cent)を使うと![]()
(8/5、813.7cent)との間に問題の25:36、631.3centの響きを生じてしまうので不適当です。
むしろ、他の和音との展開時に同一音高で保留可能となり、色々と都合が良いので通常の
(9/8、203.9cent)を使う方が良いでしょう。
| molの |
||
|---|---|---|
| 3/2×3/2×1/2=9/8 | 203.9cent | |
| 1/1×2/3×2=4/3 | 498.0cent | |
| 1/1×5/6×2=5/3 | 813.7cent | |
続いて長調における
や短調の和声的(第3音上方変位)
の根音省略形体の解釈です。
この場合は
の項での解説と同様、第3音と第7音(
と
)を25:36、631.3centの響きを生じないように、かつ他の和音との保留の都合を考慮して
と同様の構成音高と解釈するのが適当でしょう。
| durの |
||
|---|---|---|
| 3/2×5/4=15/8 | 1088.3cent | |
| 3/2×3/2×1/2=9/8 | 203.9cent | |
| 3/2×16/9×1/2=4/3 | 498.0cent | |
前項を踏まえて、非和声音の一般的な解釈法を解説します。
協和する和音から構成音の一部が旋律効果のため一時的に転位、修飾、変位した後、その結果生じる不協和音が起こす緊張の緩和のために再び協和音に解決する事になる。
それを踏まえると転位部には協和を考慮する必要はなく、むしろ旋律効果を優先してピタゴラス律の全音(9/8、203.9cent)、半音(256/243、90.2cent)で音階を構成するのが適当となる。まとめると、旋律処理としては以下のようになる。
| 協和部 | 転位部 | 協和部 |
|---|---|---|
| 純正和音 | ピタゴラス律による旋律 | 純正和音 |
一部構成音を和音交代点の前後にずらす転位(先取音、掛留音)
| T1 | |||
|---|---|---|---|
| 9/8×2 | 5/4×2 | 5/4×2 | |
| 203.9+1200 | 386.3+1200 | 386.3+1200 | |
| T2 | |||
| 15/8 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 1088.3 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| B1 | |||
| 3/2 | 3/2 | 3/2 | |
| 702.0 | 702.0 | 702.0 | |
| B2 | |||
| 15/8×1/2 | 15/8×1/2 | 1/1 | |
| 702.0-1200 | 702.0-1200 | 0.0 |
| T1 | |||
|---|---|---|---|
| 9/8×2 | 9/8×2 | 1/1×2 | |
| 203.9+1200 | 203.9+1200 | 0.0+1200 | |
| T2 | |||
| 3/2 | 3/2 | 3/2 | |
| 702.0 | 702.0 | 702.0 | |
| B1 | |||
| 3/2 | 5/4 | 5/4 | |
| 702.0 | 386.3 | 386.3 | |
| B2 | |||
| 15/8×1/2 | 15/8×1/2 | 1/1 | |
| 1088.3-1200 | 1088.3-1200 | 0.0 |
| T | |||
|---|---|---|---|
| 3/2 | 27/16 | 15/8 | |
| 702.0 | 905.9 | 1088.3 | |
| B1 | |||
| 5/4 | 5/4 | 9/8 | |
| 386.3 | 386.3 | 203.9 | |
| B2 | |||
| 1/1 | 1/1 | 3/2×1/2 | |
| 0.0 | 0.0 | 702.0-1200 |
| T1 | |||
|---|---|---|---|
| 5/3 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 884.4 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| T2 | |||
| 4/3 | 4/3 | 3/2 | |
| 498.0 | 498.0 | 702.0 | |
| B1 | |||
| 4/3 | 4/3 | 5/4 | |
| 498.0 | 498.0 | 386.3 | |
| B2 | |||
| 4/3 | 4/3 | 1/1 | |
| 498.0 | 498.0 | 0.0 |
次いで
を含む和声展開における経過音の旋律解釈法を解説します。
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 1/1×2 | 10/9×2 | 10/9×2×8/9 | 15/8 | |
| 0.0+1200 | 182.4+1200 | 1178.5 | 1088.3 | |
| T2 | ||||
| 5/3 | 5/3 | 3/2 | ||
| 884.4 | 884.4 | 702.0 | ||
| B1 | ||||
| 4/3 | 4/3 | 9/8 | ||
| 498.0 | 498.0 | 203.9 | ||
| B2 | ||||
| 4/3 | 10/9 | 3/2×1/2 | ||
| 498.0 | 182.4 | 702.0-1200 | ||
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 4/3×2 | 4/3×8/9×2 | 9/8×2 | 9/8×2 | |
| 498.0+1200 | 294.1+1200 | 203.9+1200 | 203.9+1200 | |
| T2 | ||||
| 1/1×2 | 9/8×2 | 15/8 | ||
| 0.0+1200 | 203.9+1200 | 1088.3 | ||
| B1 | ||||
| 8/5 | 8/5 | 3/2 | ||
| 813.7 | 813.7 | 702.0 | ||
| B2 | ||||
| 4/3 | 4/3 | 3/2 | ||
| 498.0 | 498.0 | 702.0 | ||
これは下に示すように転位した方向と逆に三度跳躍して解決するパターン。
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 1/1×2 | 9/8×2 | 9/8×2×256/243 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 203.9+1200 | 294.1+1200 | 0.0+1200 | |
| T2 | ||||
| 1/1×2 | 15/8 | 1/1×2 | ||
| 0.0+1200 | 1088.3 | 0.0+1200 | ||
| B1 | ||||
| 8/5 | 3/2 | 6/5 | ||
| 813.7 | 702.0 | 315.6 | ||
| B2 | ||||
| 4/3×1/2 | 3/2×1/2 | 1/1 | ||
| 498.0-1200 | 702.0-1200 | 0.0 | ||
今回は複数の転位音が展開する場合の旋律解釈法を解説します。
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 3/2×2 | 4/3×2 | 9/8×2 | 5/4×2 | |
| 702.0+1200 | 498.0+1200 | 203.9+1200 | 386.3+1200 | |
| T2 | ||||
| 15/8 | 1/1×2 | |||
| 1088.3 | 0.0+1200 | |||
| B1 | ||||
| 3/2 | 3/2 | |||
| 702.0 | 702.0 | |||
| B2 | ||||
| 3/2×1/2 | 1/1 | |||
| 702.0-1200 | 0.0 | |||
2次転位を含み、複数の転位を行う例です。調性と音域の都合で3声体で表現します。
| T | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 3/2 | 27/16 | 243/128 | 27/16 | 3/2 | |
| 702.0 | 905.9 | 1109.8 | 905.9 | 702.0 | |
| B1 | |||||
| 5/4 | 9/8 | ||||
| 386.3 | 203.9 | ||||
| B2 | |||||
| 1/1 | 15/8×1/2 | ||||
| 0.0 | 1088.3-1200 | ||||
ここからは増一度進行等、半音進行で生じる変位音の解釈を行います。ただし、ここでは旋律進行の都合で生じる(転旋、転調によるものではない)例のみを扱い、転旋、転調を伴う(かつ一定の音程保持があって和声が聞こえる場合)ものは後の項で扱います。
本稿では各調性の7音階を基準に考察しており、変位音は各調性の音階から外れた音と考えています。そのため、各音位の確定度は以下のように右へ行く程低くなると考えます。
さて、こうした半音進行による変位音はその上下の音位のcent値における中間値と考えれば良さそうですが、事はそう単純ではありません。
実は合唱においてこうした半音進行がある場合、それが上行の場合は長く続く程下がって行きます。また、下行の場合は上手い人程下がりきらず、初心者程下がり過ぎる傾向があります。これらは発声、発音による事もありますが、もう一つの要素として旋律進行においては、半音(短二度、増一度)を平均律より狭くとった方が美しく聞こえる事を認識しているという事が挙げられます。そのため、半音を聞こえよく(狭く)進行している内に平均律との差が徐々に大きくなっていくために上記のような傾向が出てくるのです。
以上を踏まえ、また、変位音の意味を考えて解釈を行っていきます。
上行の場合
旋律においては上行は労力を必要とし、下行は自然な動きとして捉えられているので、下行は上行に比べて多彩な進行が許容され、属7音等転位音の多くが下行限定進行するのはこのためです。そのため、上行における変位音というのは下の音の上行の労力を最小限にするために多く行われます。このため、上行における変位音には下の音を増一度高めた表記を用います。また、この事は後の音位(上の音)に対する導音の役割を持っているといえます。こうした場合、後の音位(上の音)との間の方が前の音位(下の音)との間よりも狭い方が旋律的に聞こえが良くなります。
下行の場合
上記のように、下行は自然な動きなので変位音は単なる挿入音と解釈され、それに付される調号も当該調から最も近い調性からの音位を使用する事になります。この場合の解釈としては、後の音位(下の音)に到達するための音程幅は比較的自由に捉える事が可能です。むしろ前の音位(上の音)から離脱する場合に下がり過ぎると気持ち悪く感じられるようになります。そのため、この変位音は前の音位(上の音)との間の方が後の音位(下の音)との間よりも狭い方が旋律的に聞こえが良いと言えます。
具体的な数値解釈
以上を踏まえると変位音を含む進行は上の音位との間の半音をより狭く解釈するのが適当という事になります。そこで、各音位間の大全音(203.9cent)、小全音(182.4cent)の音程幅を具体的にどのように分割するのが適当でしょうか。狭い方の半音はできるだけピタゴラス半音(256/243、90.2cent)に近い方が適切です。
小全音の場合は上をピタゴラス半音の90.2centとすると下は92.2centとなるのでそのように解釈します。
大全音の場合は上をピタゴラス半音の90.2centとすると下は113.7centとなります。しかし、半音が余り広くなり過ぎるのは旋律的に好ましくありません。純正律の長調における
−
間等の短二度、16/15、111.7centを限界と考えた方が良いでしょう。そのため、この場合は下を16/15、111.7cent、上を92.2centと解釈します。
また、このように解釈すると以下のような進行の場合、半音進行中の協和度が高くなって良好となります。(旋律進行だけを考慮するならば![]()
と表記すべきですが、![]()
と表記されているのはより協和を意識しているとも解釈できる。)
| T | |||
|---|---|---|---|
| 1/1×2 | 16/15×2 | 9/8×2 | |
| 0.0+1200 | 111.7+1200 | 203.9+1200 | |
| B | |||
| 1/1 | 1/1 | ||
| 0.0 | 0.0 | ||
| T1 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 1/1×2 | 16/15×2 | 9/8×2 | 1215/1024×2 | 5/4×2 | |
| 0.0+1200 | 111.7+1200 | 203.9+1200 | 296.1+1200 | 386.3+1200 | |
| T2 | |||||
| 5/3 | 15/8 | 1/1×2 | |||
| 884.4 | 1088.3 | 0.0+1200 | |||
| B1 | |||||
| 5/4 | 3/2 | 3/2 | |||
| 386.3 | 702.0 | 702.0 | |||
| B2 | |||||
| 5/3×1/2 | 3/2×1/2 | 1/1 | |||
| 884.4-1200 | 702.0-1200 | 0.0 | |||
| T1 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5/3×2 | 405/256×2 | 3/2×2 | 64/45×2 | 4/3×2 | 5/4×2 | |
| 884.4+1200 | 794.2+1200 | 702.0+1200 | 609.8+1200 | 498.0+1200 | 386.3+1200 | |
| T2 | ||||||
| 1/1×2 | 15/8 | 1/1×2 | ||||
| 0.0+1200 | 1088.3 | 0.0+1200 | ||||
| B1 | ||||||
| 1/1 | 3/2 | 3/2 | ||||
| 0.0 | 702.0 | 702.0 | ||||
| B2 | ||||||
| 4/3×1/2 | 3/2×1/2 | 1/1 | ||||
| 498.0-1200 | 702.0-1200 | 0.0 | ||||
応用編
さらに応用として短二度音階と変位音が両方含まれる半音進行の旋律解釈を挙げておきます。この場合、まず音階をピタゴラス音律に修正し、変位音は全て大全音(9/8、203.9cent)を分割するので低い音位より純正律短二度分(16/15、111.7cent)高い音程と解釈します。
| T1 | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1/1×2 | 243/128 | 9/5 | 27/16 | 8/5 | 3/2 | 3/2 | |
| 0.0+1200 | 1109.8 | 1017.6 | 905.9 | 813.7 | 702.0 | 702.0 | |
| T2 | |||||||
| 3/2 | 4/3 | 5/4 | |||||
| 702.0 | 498.0 | 386.3 | |||||
| B1 | |||||||
| 5/4 | 9/8 | 3/2 | |||||
| 386.3 | 203.9 | 0.0 | |||||
| B2 | |||||||
| 1/1 | 15/8×1/2 | 1/1 | |||||
| 0.0 | 1088.3-1200 | 0.0 | |||||
ここまでの転位音の解釈を踏まえて、そうした転位音を含む代表的な不協和音の便宜的な音高の解釈を行っていきます。
すでに
の段階で純正協和を放棄し、妥協した音高をしている訳で、この上にどういった音程を載せればよいのでしょうか。また、自然五和音と解釈できる場合については後の項で解説します。
まずは長調の
。原理的には
の根音が上方転位した和音である事を考えると、旋律進行を考慮して根音
から大全音(9/8 203.9cent)上行した音程(27/16 905.9cent)と解釈する方法があります。

これらの和音を実際にHD-81に入力して発音して見ると、和音の響きとしては余り差異を感じません。勿論、旋律進行上は前者の方が良好に聞こえますが。という訳でこの
音に
音が先行する場合は前者(27/16 905.9cent)、先行和音から保留される場合は後者(5/3 884.4cent)と解釈するものとします。
| T1 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 5/4×2 | 4/3×2 | 3/2×2 | 27/16×2 | 3/2×2 | |
| 386.3+1200 | 498.0+1200 | 702.0+1200 | 905.9+1200 | 702.0+1200 | |
| T2 | |||||
| 1/1×2 | 1/1×2 | 15/8 | 1/1×2 | ||
| 0.0+1200 | 0.0+1200 | 1088.3 | 0.0+1200 | ||
| B1 | |||||
| 3/2 | 4/3 | 4/3 | 5/4 | ||
| 702.0 | 498.0 | 498.0 | 386.3 | ||
| B2 | |||||
| 1/1 | 5/3×1/2 | 3/2×1/2 | 1/1 | ||
| 0.0 | 884.4-1200 | 702.0-1200 | 0.0 | ||
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 5/4×2 | 5/4×2 | 4/3×2 | 5/4×2 | |
| 386.3+1200 | 386.3+1200 | 498.0+1200 | 386.3+1200 | |
| T2 | ||||
| 1/1×2 | 1/1×2 | 9/8×2 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 0.0+1200 | 203.9+1200 | 0.0+1200 | |
| B1 | ||||
| 3/2 | 5/3 | 5/3 | 3/2 | |
| 702.0 | 884.4 | 884.4 | 702.0 | |
| B2 | ||||
| 1/1 | 1/1 | 15/8×1/2 | 1/1 | |
| 0.0 | 0.0 | 1088.3-1200 | 0.0 |
| 長調の |
||
|---|---|---|
| 3/2×1/1=3/2 | 702.0cent | |
| 3/2×5/4=15/8 | 1088.3cent | |
| 3/2×3/2×1/2=9/8 | 203.9cent | |
| 3/2×16/9×1/2=4/3 | 498.0cent | |
| 3/2×9/8=27/16 または 3/2×10/9=5/3 | 905.9cent または 884.4cent |
|
続いて短調における
やこれを長調で借用する
(特に根音省略形体
が好んで使用される)の解釈です。
この場合は
の第3音と第7音(
と
)の関係と同様に第5音と第9音(
と![]()
)の間に25:36、631.3centの響きを生じないように音階上の![]()
と同じ(8/5 813.7cent)と解釈するのが適当となります。
| T1 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 6/5×2 | 4/3×2 | 4/3×2 | 9/8×2 | 1/1×2 | |
| 315.6+1200 | 498.0+1200 | 498.0+1200 | 203.9+1200 | 0.0+1200 | |
| T2 | |||||
| 1/1×2 | 1/1×2 | 9/8×2 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 0.0+1200 | 203.9+1200 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| B1 | |||||
| 3/2 | 8/5 | 8/5 | 8/5 | 3/2 | |
| 702.0 | 813.7 | 813.7 | 813.7 | 702.0 | |
| B2 | |||||
| 1/1 | 4/3 | 9/8 | 4/3 | 6/5 | |
| 0.0 | 498.0 | 203.9 | 498.0 | 315.6 |
| 短調の |
||
|---|---|---|
| 3/2×1/1=3/2 | 702.0cent | |
| 3/2×5/4=15/8 | 1088.3cent | |
| 3/2×3/2×1/2=9/8 | 203.9cent | |
| 3/2×16/9×1/2=4/3 | 498.0cent | |
| 3/2×16/9×6/5×1/2=8/5 | 813.7cent | |
また、第三音を上方変位させず、固有の
を使用する場合は第7音までは純正協和するため
和音の項で解説したような音高となります。第9音は第5音と減5度関係となるので、この間を25:36、631.3centの関係にしないよう音階上の
と同一とするのが適当でしょう。
| 短調の |
||
|---|---|---|
| 3/2×1/1=3/2 | 702.0cent | |
| 3/2×6/5=9/5 | 1017.6cent | |
| 3/2×3/2×1/2=9/8 | 203.9cent | |
| 3/2×6/5×3/2×1/2=27/20 | 519.5cent | |
| 3/2×16/9×6/5×1/2=8/5 | 813.7cent | |
変位音の解釈を受けて
、
の構成各音の具体的音高を考察します。
これらの和音の目的は和声協和よりも構成各音の指向性(どの音位に進行する目的を持つか)という旋律的な都合にあります。すなわち、
の第3音は導音として上行限定進行し、第7、第9音は下行限定進行としてそれぞれ指向性を持っていますが、第5音はそうした指向性を持っていない(そのため様々な進行が許容されるが)ので、人為的に増一度上げたり下げたりする事によって次にくる
の
や
への指向性を持たせるのです。

上方変位例
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 1/1×2 | 10/9×2 | 32/27×2 | 5/4×2 | |
| 0.0+1200 | 182.4+1200 | 294.1+1200 | 386.3+1200 | |
| T2 | ||||
| 5/3 | 5/3 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 884.4 | 884.4 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| B1 | ||||
| 5/4 | 4/3 | 3/2 | 3/2 | |
| 386.3 | 498.0 | 702.0 | 702.0 | |
| B2 | ||||
| 5/3×1/2 | 10/9 | 3/2×1/2 | 1/1 | |
| 884.4-1200 | 182.4 | 702.0-1200 | 0.0 |
また、
が協和しないという事は、より旋律効果を高めて
−
、![]()
−
の導音進行をいずれもピタゴラス半音(256/243、90.2cent)に近い音程幅に解釈する事も可能となります。上例では
−
間が広いので不可能ですが、下例のように本来の
を使用する等すると可能となります。
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 5/4×2 | 9/8×2 | 1215/1024×2 | 5/4×2 | |
| 386.3+1200 | 203.9+1200 | 296.1+1200 | 386.3+1200 | |
| T2 | ||||
| 1/1×2 | 27/16 | 486/256 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 905.9 | 1109.8 | 0.0+1200 | |
| B1 | ||||
| 3/2 | 45/32 | 3/2 | 3/2 | |
| 702.0 | 519.6 | 702.0 | 702.0 | |
| B2 | ||||
| 1/1 | 9/8 | 3/2×1/2 | 1/1 | |
| 0.0 | 203.9 | 702.0-1200 | 0.0 |
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 5/4×2 | 10/9×2 | 135/128×2 | 1/1×2 | |
| 386.3+1200 | 182.4+1200 | 92.2+1200 | 0.0+1200 | |
| T2 | ||||
| 1/1 | 5/3 | 3/2 | 3/2 | |
| 0.0 | 884.4 | 702.0 | 702.0 | |
| B1 | ||||
| 5/3 | 4/3 | 4/3 | 5/4 | |
| 884.4 | 498.0 | 498.0 | 386.3 | |
| B2 | ||||
| 1/1 | 10/9 | 15/8×1/2 | 1/1 | |
| 0.0 | 182.4 | 1088.3-1200 | 0.0 |
和音の解釈
さて、
和音を扱った以上、この和音を取り上げない訳にはいかないでしょう。本項の前身「純正律理論」内で扱って以降、解釈を休止していた和音です。以前は隣り合う音程を協和するように重ねていくと考えていたので意外な結論に達していました(それによって発見もありましたが)。その後、「続・純正律理論」で転調等の考察を経て、一定の結論に到達しました。
この和音使用法は元の調の音階では構成できない和音を他の調の和音と解釈して使用する技法で、使用された他調の和音を借用和音といいます。主調の音階各音位を主音とする調を属調といい、それらに属する和音を主調内でカデンツの一要素として使用するというのが借用和音の解釈法ですが、これは多分に音楽学者が技法をまとめる上で作られたものらしく、作曲者の「自在な和音選択」という実践が先にあるために現実の使用中では具体的音高考察にもう一工夫必要になります。
すなわち、借用和音を短い転調と解釈して、転調処理法を応用して主調と借用和音が属する調との関係から導き出す方法では、実際の解釈において色々と問題を生じる事があるのです。これらを解釈するためには前後関係から作曲者の意図を読み取り、根音の高さや進行に都合の良い構成各音高を考察する必要があります。
ここでは、
を
調の和音と解釈して根音の位置から考察すると
の音高が一致しない等、色々な問題が生じます。この場合、
が不協和音であるため、協和については余り考慮する必要はありません。また、この和音は構成各音全てが指向性を持っているため、旋律の都合を優先するのが適切です。
| T1 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 1/1×2 | 1/1×2 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 0.0+1200 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| T2 | ||||
| 5/3 | 405/256 (8/5) | 3/2 | 3/2 | |
| 884.4 | 794.2 (813.7) | 702.0 | 702.0 | |
| B1 | ||||
| 4/3 | 32/27 (6/5) | 9/8 | 5/4 | |
| 498.0 | 294.1 (315.6) | 203.9 | 386.3 | |
| B2 | ||||
| 4/3×1/2 | 64/45 | 3/2×1/2 | 1/1 | |
| 498.0-1200 | 609.8-1200 | 702.0-1200 | 0.0 |
これら借用和音の解釈法については色々な例がありますので、別項にて詳細を解説する予定です。
不協和音の解説に入ってから和音の各構成音高が不確定性が高くなり、便宜上の音程という表記が多くなってきました。これは純正協和しない事が主な原因なのですが、実はこの後、転調の話になると協和音であってもそうした傾向が高まっていきます。これは転調等の音楽技法成立時の状況が関係しています。
例えば短調の
和音の第3音
が音階上にない音程に上方変位するのは
−
進行を短二度上行(導音進行)にして到達感を出し、かつ
を長三和音化する事により後に続く
の短三和音との差を際立たせる事によって悲しみ等を演出しています。実は固有の
を使うと意外に明るいイメージになります。
こういった音階にない音を使用するという事は人為的な演出によるもので、同様な技法としてダブルドミナント
も
を長三和音化し、
への導音化するために
を上方変位したのが本来の目的でしょう。
ようするに音楽の技法というものは作曲家の「こうしたい」という意志によって人為的に作り上げられた後に理論家によって追加承認(転調等の理論付け)されて来たという歴史をもっており、これらの技法は作曲家が鍵盤楽器の音程(何らかの12音律)を元に作り上げられた例が多いので、純正律で考察する時に色々と矛盾が生じる事になるのです。
曲中で転調が行われるというのは純正律にとっては大変厄介な事です。各音間の音程幅が一定ではない純正律の場合、
転調が発生すると音階が変化するのでそれまでの音階とは違うものになってしまうのに加えて、
元の調との関係もあるので、互いの調の音程関係もそうそうでたらめにする訳にも行きません。
そこで、その転調関係を一つ一つ関連付けて行きます。
転調の可能性については「総合和声(音楽之友社)」を参考にしています。
一、同主短調(長調)への転調、準固有和音
Cdur<=>Cmol等の相互転調
まずは主音が同じ調同士の転調。固有和音とは一つの調の音階(7個)の各音を根音とした和音の事。 準固有和音というのは長調の曲中で一時的に同主短調の固有和音を使用する事があり、その同主短調の固有和音の事を言う。
この場合、主音をはじめとする音階の一部(
、
、
、
等)の音高が共通であるため、フラット、
ナチュラルがつく音階構成音を入れ替える事(
<=>![]()
、
等)で対応できます。
| パート | T1 | T2 | B1 | B2 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 音名 | C | G | E | C | |
| 比率 | 1/1×2 | 3/2 | 5/4 | 1/1 | |
| セント値 | 0.0+1200 | 702.0 | 386.3 | 0.0 | |
| 音名 | C | A | E | A | |
| 比率 | 1/1×2 | 5/3 | 5/4 | 5/3×1/2 | |
| セント値 | 0.0+1200 | 884.4 | 386.3 | 884.4-1200 | |
| 音名 | C | A | F | F | |
| 比率 | 1/1×2 | 8/5 | 4/3 | 4/3×1/2 | |
| セント値 | 0.0+1200 | 813.7 | 498.1 | 498.1-1200 | |
| 音名 | D | A | F | F | |
| 比率 | 16/15×2 | 8/5 | 4/3 | 4/3×1/2 | |
| セント値 | 111.7+1200 | 813.7 | 498.1 | 498.1-1200 | |
| 音名 | C | G | E | G | |
| 比率 | 1/1×2 | 3/2 | 5/4 | 3/2×1/2 | |
| セント値 | 0.0+1200 | 702.0 | 386.3 | 702.0-1200 | |
| 音名 | H | G | D | G | |
| 比率 | 15/8 | 3/2 | 9/8 | 3/2×1/2 | |
| セント値 | 1088.3 | 702.0 | 203.9 | 702.0-1200 | |
| 音名 | C | G | E | C | |
| 比率 | 1/1×2 | 3/2 | 5/4 | 1/1 | |
| セント値 | 0.0+1200 | 702.0 | 386.3 | 0.0 | |
ここからは主音が変更されるので、
移調した先の調が元の調に対してどういう関係になるのが適切かを考えて行く必要があります。
それを考えるには
調の
和音(ダブルドミナント)の処理法を考察する事が有効です。

| 長調 | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 3/2 | 5/3 | 27/16 | 15/8 | 1/1 | 9/8 | 5/4 | 45/32 | ||
| 702.0 | 884.4 | 905.9 | 1088.3 | 0.0 | 203.9 | 382.3 | 590.2 | ||
| +2.0 | -15.6 | +5.9 | -11.7 | 0.0 | +3.9 | -13.7 | -9.8 | ||
| 短調 | |||||||||
| 3/2 | 8/5 | 5/3 | 27/16 | 9/5 | 1/1 | 9/8 | 6/5 | 27/20 | |
| 702.0 | 813.7 | 884.4 | 905.9 | 1017.6 | 0.0 | 203.9 | 315.6 | 519.6 | |
| +2.0 | +13.7 | -15.6 | +5.9 | +17.6 | 0.0 | +3.9 | +15.6 | +19.6 |
| パート | T1 | T2 | B1 | B2 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 音名 | E | C | G | C | |
| 比率 | 5/4×2 | 1/1×2 | 3/2 | 1/1 | |
| セント値 | 386.3+1200 | 0.0+1200 | 702.0 | 0.0 | |
| 音名 | F | C | A | F | |
| 比率 | 4/3×2 | 1/1×2 | 5/3 | 4/3×1/2 | |
| セント値 | 498.1+1200 | 0.0+1200 | 884.4 | 498.1-1200 | |
| 音名 | D | C | A | F |
|
| 比率 | 9/8×2 | 1/1×2 | 27/16 | 45/32×1/2 | |
| セント値 | 203.9+1200 | 0.0+1200 | 905.9 | 590.2-1200 | |
| 音名 | D | H | G | G | |
| 比率 | 9/8×2 | 15/8 | 3/2 | 3/2×1/2 | |
| セント値 | 203.9+1200 | 1088.3 | 702.0 | 702.0-1200 | |
| 音名 | E | C | G | C | |
| 比率 | 5/4×2 | 1/1×2 | 3/2 | 1/1 | |
| セント値 | 386.3+1200 | 0.0+1200 | 702.0 | 0.0 | |
尚、上表のB1パートは表記音(A)は同一ながら微少な音高の差異が生じています。
(
調の
音884.4cent、
調の
音905.9cent)これはやむを得ません。
上例のような伴奏部ならともかく、主旋律ではこうした同名異音にならない方が旋律の聞こえ方が良好になります。
以下、1曲中での
調への転調と復帰は上表の音階で表現可能となるでしょう。
次は、見かけ上音階が同一になる平行調への移調の場合です。
これは調を相対的に見た場合、
の長調に対する
の短調、
の短調に対する
の長調という事になります。
まずは前者について考察してみましょう。
前項を発展させて考えてみると、
調は
調のさらに2つ上の調になるので、
各音階構成音の具体的音高は
調の各音階に9/8を掛けたものになります。
| 27/16 | 243/128 | 81/80 | 9/8 | 81/64 | 27/20 | 243/160 | |
| 905.9 | 1109.8 | 21.5 | 203.9 | 407.8 | 519.6 | 723.5 | |
| +5.9 | +9.8 | +21.5 | +3.9 | +7.8 | +19.6 | +23.5 | |
| 5/3 | 15/8 | 1/1 | 9/8 | 5/4 | 4/3 | 3/2 | |
| 884.4 | 1088.3 | 0.0 | 203.9 | 386.3 | 498.1 | 702.0 | |
| -15.6 | -11.7 | 0.0 | +3.9 | -13.7 | -1.9 | +2.0 |
この音階を
調のものと比べてみると(セント値で見ると解かりやすい)明らかに全体が微妙に高くなっている事が解かります。
これは調が上がるにつれて音階の一部が順番に高くシフトされていくためです。
しかしこれでは転調した瞬間に音階が高くシフトされて、大変気持ちの悪い展開になってしまいます。
ではどうするか。
調の
音を主音とする音階を構成すれば両方の間の共通音(音名)がほぼ同一になるため、
違和感なく転調が可能になります。
具体的音高は
調の各音階に5/3を掛けたものです。
| 5/3 | 15/8 | 1/1 | 10/9 | 5/4 | 4/3 | 3/2 | |
| 884.4 | 1088.3 | 0.0 | 182.4 | 386.3 | 498.1 | 702.0 | |
| -15.6 | -11.7 | 0.0 | -17.6 | -13.7 | -1.9 | +2.0 | |
| 5/3 | 15/8 | 1/1 | 9/8 | 5/4 | 4/3 | 3/2 | |
| 884.4 | 1088.3 | 0.0 | 203.9 | 386.3 | 498.1 | 702.0 | |
| -15.6 | -11.7 | 0.0 | +3.9 | -13.7 | -1.9 | +2.0 |
尚、
調の
音と
調の
音が違う音になっておりますが、
これは純正音階においては
と
は完全五度(完全四度)関係に設定していますが、
と
音は完全五度にはならない事に起因するものです。
これも
調で
和音を使用する際に
低の音(10/9、182.4cent)を使い、
これが
調の
音と同一なので問題はないでしょう。
また、
の短調に対する
の長調の場合も同様の現象が発生し、
これも同様の方法で修正できます。
(![]()
の音を主音とする音階を構成すれば良い。)
さらに、それら平行調の同主長(短)調に移調する場合を考慮すると、それぞれ
音、
![]()
音を主音とする長短両調の純正音階を用意する必要がある事が解ります。
それらを踏まえると下表の音階になります。
尚、下表ではそれぞれの
低の音(
調の
低は50/27、1066.8cent、
![]()
の調の
低は4/3、
498.1)は省略していますがそれは五度毎の音階を両隣に配置していくと五度下の調に存在するのでここでは外しておきました。
×5/3 |
||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1/1 | 25/24 | 10/9 | 5/4 | 4/3 | 25/18 | 3/2 | 25/16 | 5/3 | 16/9 | 15/8 | ||
| 0.0 | 70.7 | 182.4 | 386.3 | 498.1 | 568.7 | 702.0 | 772.6 | 884.4 | 996.1 | 1088.3 | ||
| 0.0 | -29.3 | -17.6 | -13.7 | -1.9 | -31.3 | +2.0 | -27.4 | -15.6 | -3.9 | -11.7 | ||
| 1/1 | 16/15 | 9/8 | 6/5 | 5/4 | 4/3 | 3/2 | 8/5 | 5/3 | 9/5 | 15/8 | ||
| 0.0 | 111.7 | 203.9 | 315.6 | 386.3 | 498.1 | 702.0 | 813.7 | 884.4 | 1017.6 | 1088.3 | ||
| 0.0 | +11.7 | +3.9 | +15.6 | -13.7 | -1.9 | +2.0 | +13.7 | -15.6 | +17.6 | -11.7 | ||
×6/5 |
||||||||||||
| 1/1 | 27/25 | 9/8 | 6/5 | 32/25 | 27/20 | 36/25 | 3/2 | 8/5 | 9/5 | 48/25 | ||
| 0.0 | 133.2 | 203.9 | 315.6 | 427.4 | 519.6 | 631.3 | 702.0 | 813.7 | 1017.6 | 1129.3 | ||
| 0.0 | +33.2 | +3.9 | +15.6 | +27.4 | +19.6 | +31.3 | +2.0 | +13.7 | +17.6 | +29.3 |

転入部(上段)
| パート | T1 | T2 | B1 | B2 |
|---|---|---|---|---|
| C | G | E | C | |
| 1/1×2 | 3/2 | 5/4 | 1/1 | |
| 0.0+1200 | 702.0 | 386.3 | 0.0 | |
| H | G | E | E | |
| 15/8 | 25/16 | 5/4 | 5/4 | |
| 1088.3 | 772.6 | 386.3 | 386.3 |
| パート | T1 | T2 | B1 | B2 |
|---|---|---|---|---|
| E | H | G | E | |
| 5/4×2 | 15/8 | 25/16 | 5/4 | |
| 386.3+1200 | 1088.3 | 772.6 | 386.3 | |
= |
E | C | A | A |
| 5/4×2 | 1/1×2 | 5/3 | 5/3×1/2 | |
| 386.3+1200 | 0.0+1200 | 884.4 | 884.4-1200 | |
| G | D | G | H | |
| 3/2×2 | 9/8×2 | 3/2 | 15/8×1/2 | |
| 702.0+1200 | 203.9+1200 | 702.0 | 1088.3-1200 |
上記サンプル譜は自作の一部で、実際はその前後に8小節ずつCdurの旋律がありますが、
ここでは転入、復帰部だけを抜き出しています。(適当に作った割りには上手く転調、復帰していて驚きました(笑))
上段の転入部で
の音(
調の
)が共通しており、
旋律の音階もほぼ共通であるためスムースに転調できます。
また、下段の復帰部は
調の
和音を
調の
和音に読み替える事で滑らかに繋げていますが、
ここでも両和音の構成音が共通しているために違和感なく転調する事ができます。
転調には同一の和音を異名同音解釈により別の調の和音と考える事によって行われるものもあります。 それらは本来、異名同音の読み替えが可能な音律(ヴェルクマイスター、キルンベルガー、ヤング等のウェルテンペラメント、 もしくは平均律)を前提に作り出されたものであるため、純正律とは相容れないものとも言えますが、 可能な限り解釈してみましょう。
、減五属七和音の読み替えによる転調
減五属七和音とは、ギターで言う所のディミニッシュ7コード。
和声学的には短調における
、
もしくはこれを同主長調で借用した
という事になります。
この和音は平均律で考えると、隣り合う構成各音間がいずれも半音3つとなるため、
構成各音それぞれを導音とみなした5つの調の和音(純正律では異名同音にはならないため)に置き換える事が可能になります。
また、ダブルドミナントの可能性
、
も含めると下図のように10の調の和音に置き換えられます。

・進行において旋律が不自然にならないようにする
・減五属七和音に耐え難い響きを生じないようにする(いずれの2音間にも25:36(音程幅631.3cent)の音程関係を生じさせない)
以上を考慮して下記転調進行における各パートの具体的音高を考えてみましょう。
左のC−E
転調において、
T1のFの音はE
調から考えると27/20(519.5cent)ともとれますが、
前のE音5/4(386.3cent)からの移動量133.2centは半音の音程幅としては広すぎて聞くにも演奏するにも不自然となるため、
前の調の音を使用しています。また、その影響でこの和音全体をC調の和音に統一した方が都合が良くなったので、
T2のH(C
)もC調の15/8(1088.3cent)とします。
結果として、この例においては異名同音となっておりますが、これは進行の都合を考慮したものであり、
先行和音(離脱和音)によってはF、
H(C
)ともE
調の音程を使用した方が良い場合もあります。
右のC−A転調の場合はA調の和音として考えて問題ありません。注目すべきはB2のD音。
これをC調の音9/8(203.9cent)とせず、
A調の音10/9(182.4cent)とする事によって後のC
へ自然な移行を達成しています。
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|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
|
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|
|
ところで、F
、
G
調の音階構成音確定法の根拠としては![]()
molと
dur、
![]()
durと
molの各音階の一部が同じ音名で同じ音高と判断できる点です。
まあ、はなはだ薄い根拠ではありますが・・・。
ただ、左上の和音をダブルドミナントへ読み替えした場合、
減五属七和音と解決和音はそれぞれHdur(
調)の
、
と判断できます。
そうなると主音H(
調の
音)は15/8(1088.3cent)となり、
これまで解説してきた内部調と一致します。このように他の調との関係を調整する上で都合が良いという事はできます。

| Cdurの相対音 | 絶対音 | Hdurの相対音 | 絶対音 | |
| D | 同音 | D | ||
| H | 同音 | H | ||
| G | 同音 | G | ||
| F | 異名同音 | E |

| T1 | G | G | F | D |
|---|---|---|---|---|
| 3/2×2 | 3/2×2 | 45/32×2 | 75/64×2 | |
| 702.0+1200 | 702.0+1200 | 590.2+1200 | 274.6+1200 | |
| T2 | C | D | C | H |
| 1/1×2 | 9/8×2 | 135/128×2 | 15/8 | |
| 0.0+1200 | 203.9+1200 | 92.2+1200 | 1088.3 | |
| B1 | E | F(E | F | F |
| 5/4 | 675/512 | 45/32 | 45/32 | |
| 386.3 | 478.5 | 590.2 | 590.2 | |
| B2 | C | H | A | H |
| 1/1 | 15/8×1/2 | 225/128×1/2 | 15/8×1/2 | |
| 0.0 | 1088.3-1200 | 976.7-1200 | 1088.3-1200 |
ところで、
の導音(この場合E
)は通常、
増一度進行をして
の第7音(この場合E)に進む事が多く、
また、転調前についても
の第7音(この場合F)は
の音(この場合G)から到達する事が多いので、そんな例を挙げてみます。
(
は進行や配置制限が多いので、
多少無理矢理ですが)

| T1 | E | G | F(E | E | D |
|---|---|---|---|---|---|
| 5/4×2 | 3/2×2 | 4/3×2 | 5/4×2×2 | 75/64×2 | |
| 386.3+1200 | 702.0+1200 | 498.1+1200 | 386.3+1200 | 274.6+1200 | |
| T2 | C | C | H | A | H |
| 1/1×2 | 1/1×2 | 15/8 | 225/128 | 15/8 | |
| 0.0+1200 | 0.0+1200 | 1088.3 | 976.7 | 1088.3 | |
| B1 | G | G | G | F | F |
| 3/2 | 3/2 | 3/2 | 45/32 | 45/32 | |
| 702.0 | 702.0 | 702.0 | 590.2 | 590.2 | |
| B2 | C | E | D | C | H |
| 1/1 | 5/4 | 9/8 | 135/128 | 15/8×1/2 | |
| 0.0 | 386.3 | 203.9 | 92.2 | 1088.3-1200 |


| T1 | G | F(E | F |
|---|---|---|---|
| 3/2×2 | 4/3×2 | 45/32×2 | |
| 702.0+1200 | 498.1+1200 | 590.2+1200 | |
| T2 | E | D | D |
| 5/4×2 | 9/8×2 | 9/8×2 | |
| 386.3+1200 | 203.9+1200 | 203.9+1200 | |
| B1 | C | H | A |
| 1/1×2 | 15/8 | 27/16 | |
| 0.0+1200 | 1088.3 | 905.9 | |
| B2 | C | G | D |
| 1/1 | 3/2 | 9/8 | |
| 0.0 | 702.0 | 203.9 |

| T1 | E | D | D | E |
|---|---|---|---|---|
| 6/5×2 | 9/8×2 | 9/8×2 | 6/5×2 | |
| 315.6+1200 | 203.9+1200 | 203.9+1200 | 315.6+1200 | |
| T2 | C | H | H | C |
| 1/1×2 | 15/8 | 15/8 | 1/1×2 | |
| 0.0+1200 | 1088.3 | 1088.3 | 0.0+1200 | |
| B1 | G | G | A | G |
| 3/2 | 3/2 | 8/5 | 3/2 | |
| 702.0 | 702.0 | 813.7 | 702.0 | |
| B2 | C | G | F | C |
| 1/1 | 3/2 | 4/3 | 1/1 | |
| 0.0 | 702.0 | 498.1 | 0.0 |



![]() |
|
問題は第五音の上方変位の場合。
この上方変位音は本来
−
展開において、
の第五音から
の第三音への上行進行を助けるための変位であるため、
和音の響きよりも旋律の都合が優先されます。
![]() |
|
これらを踏まえて転調進行を考察してみましょう。パターンが多すぎるので一部のみ例を上げる事にします。
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|


| E | ||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1/1 | 25/24 | 9/8 | 75/64 | 5/4 | 4/3 | 45/32 | 3/2 | 25/16 | 5/3 | 15/8 | ||
| 0.0 | 70.7 | 203.9 | 274.6 | 386.3 | 498.1 | 568.7 | 702.0 | 772.6 | 884.4 | 1088.3 | ||
| 0.0 | -29.3 | +3.9 | -25.4 | -13.7 | -1.9 | -31.3 | +2.0 | -27.4 | -15.6 | -11.7 | ||
| A | ||||||||||||
| 1/1 | 25/24 | 10/9 | 5/4 | 4/3 | 25/18 | 3/2 | 25/16 | 5/3 | 16/9 | 15/8 | ||
| 0.0 | 70.7 | 182.4 | 386.3 | 498.1 | 568.7 | 702.0 | 772.6 | 884.4 | 996.1 | 1088.3 | ||
| 0.0 | -29.3 | -17.6 | -13.7 | -1.9 | -31.3 | +2.0 | -27.4 | -15.6 | -3.9 | -11.7 | ||
| C | ||||||||||||
| 1/1 | 16/15 | 9/8 | 6/5 | 5/4 | 4/3 | 3/2 | 8/5 | 5/3 | 9/5 | 15/8 | ||
| 0.0 | 111.7 | 203.9 | 315.6 | 386.3 | 498.1 | 702.0 | 813.7 | 884.4 | 1017.6 | 1088.3 | ||
| 0.0 | +11.7 | +3.9 | +15.6 | -13.7 | -1.9 | +2.0 | +13.7 | -15.6 | +17.6 | -11.7 | ||
| B | ||||||||||||
| 81/80 | 27/25 | 9/8 | 6/5 | 27/20 | 36/25 | 3/2 | 81/50 | 27/16 | 9/5 | 48/25 | ||
| 21.5 | 133.2 | 203.9 | 315.6 | 519.6 | 631.3 | 702.0 | 835.2 | 905.9 | 1017.6 | 1129.3 | ||
| +21.5 | +33.2 | +3.9 | +15.6 | +19.6 | +31.3 | +2.0 | +35.2 | +5.9 | +17.6 | +29.3 | ||
| E |
||||||||||||
| 1/1 | 27/25 | 9/8 | 6/5 | 32/25 | 27/20 | 36/25 | 3/2 | 8/5 | 9/5 | 48/25 | ||
| 0.0 | 133.2 | 203.9 | 315.6 | 427.4 | 519.6 | 631.3 | 702.0 | 813.7 | 1017.6 | 1129.3 | ||
| 0.0 | +33.2 | +3.9 | +15.6 | +27.4 | +19.6 | +31.3 | +2.0 | +13.7 | +17.6 | +29.3 | ||
| G |
||||||||||||
| 16/15 | 256/225 | 32/27 | 32/25 | 4/3 | 64/45 | 1024/675 | 8/5 | 128/75 | 16/9 | 256/135 | ||
| 111.7 | 223.5 | 294.1 | 427.4 | 498.1 | 609.8 | 721.5 | 813.7 | 925.4 | 996.1 | 1107.8 | ||
| +11.7 | +23.5 | -5.9 | +27.4 | -1.9 | +9.8 | +21.5 | +13.7 | +25.4 | -3.9 | +7.8 |
![]() |
|
注意
本来、構成各音の具体的音高を正確に確定できるのは協和音だけであり、
不協和音(各構成音間の周波数比率の内、どれか一例でも15:16より複雑な比率になる和音)単独では構成各音の具体的音高を確定する事はできません。
現代和声内での減五度音程の実験を見ると解るように、
200年前後に渡って常に10〜20centの誤差がある音程関係を響き、機能ともに同義として扱ってきた歴史を考慮すると、
こうした音程関係を正確に決める事は必要ではないと考えます。
本項での処理はあくまで和音の機能的側面を考慮して、前後の和音との関係から和音の響き、旋律進行に破綻をきたさないように、
また、音階全体の音の数を減らそうという目的から、既存の音階構成音の組み合わせによって表現しているに過ぎません。
残念ながら、純正律でなんとか解釈できる転調技法は前項までです。
以下の技法はなんらかの方法で確定されている十二音階を前提としたものであるので、
純正律では音階、和音構成各音の具体的音高を確定する事ができません。
以下、各技法について簡単な解説をしておきます。


1 半ずれ調

2 半ずれ和音
同時に二つ以上の調が登場する事を複調といいます。
これの解釈は実曲例を余り見た事がないため確実な事は言えませんが、考えられる方法を述べておきます。
複調の場合、いずれか一つの調が主で他の調は従という関係があるようなので、 従となる調を主となる調の内部調と解釈する事によって処理が可能と考えられます。
これで純正律で可能な転調が出揃いました。そこで主調と転調可能調との比率関係を示してこの章のまとめとします。
第4項で示した内部調に加えて、第5項の転調技法で生じた調関係を加えて以下のようになります。
| (5/3)2(3/2)1 | ||||||
| 5/3(3/2)3 | 5/3(3/2)2 | 5/3(3/2)1 | 5/3 | 5/3(3/2)-1 | ||
| (3/2)2 | (3/2)1 | (基) | (3/2)-1 | |||
| 3/5(3/2)1 | 3/5 | 3/5(3/2)-1 | 3/5(3/2)-2 | 3/5(3/2)-3 | ||
| (5/3)-2(3/2)-1 |
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