純正律実践編(発声法)


Single Singersでの練習法を綴って行きます。
所詮は素人の浅知恵ですので当てにはならないかも(^^;)

基本考察

 高校時代、合唱を始めた頃には、よく仲間とオペラ等のCDを買い漁って声楽家の「良い声」というモノを参考にしていたのですが、 大学時代にはスッカリやめてしまい、現在ではむしろ聴かないようにしています。
 なぜ、そのようになったのかと言えば、それらの演奏は「ハモッていない」からでした。
 大学時代にアカペラで「ハモる」という現象を覚えてからは、次第にそういった「ハモらない音楽」に興味を失っていったのですが、 当時はまだ、それら声楽家の音程に疑問を持つ程、音感も良くはなかったので、むしろ彼らの声に疑問を持ちました。
 その一方で、当時は男声合唱の演奏会巡礼を行っていたのですが、むしろ学生団体の、 それも有名ではない団体の演奏に「ハモる」味わいを感じました。 それらの団体の発声は声楽家のように響きを前に「飛ばす」のではなく、むしろ高く柔らかい響きを真上に広げるというイメージでした。 もっとも、それらの学生団体はまだまだ不完全な発声だったので、残念ながら音程の不安定さの方が目立ってしまいましたが。
 そのため、そういった団体の発声を土台にして、自分なりに「ハモる声」というものを工夫してきました。 しかしながら、明確な完成形が例としてある訳ではなく、自分の中にある「こんな感じの声」というイメージだけが頼りだったので、 自分で試行錯誤しつつも、「これで良い響きになっているのか?」という迷いが常にありました。
 ところが、グリークラブ香川に入団した後、初めてソロを担当する事になった時、自分の演奏を聞いてみて、 意外にも「自分がイメージしていた声」にかなり近い声になっていた事に気づき、驚きました。

 そうした経験もあり、Single Singersで「純正律ハーモニー構築」を目指すようになってからは、 この「高く柔らかい響きを真上に広げる声」を伝える方法を考えるようになりました。

 尚、Single Singersは「合唱はグリークラブ香川が初めて」というメンバーも多いため、基礎からの指導について述べていきます。


指針

 ひとまず、色々な団体を聞いた中で考えたハーモニー構築にふさわしい発声法について書いてみましょう。実現するための具体的な方法についてはまだ研究中です。

ビブラート厳禁
 なにはなくともこれは絶対条件。ビブラートというのはヴァイオリンのそれを見れば明白なように「音程の激しいゆれ」です。複数の声が混ざり合うためには「安定的に保続された音程」が必要なのでビブラートはあると邪魔になります。
 「ハモネプ」に代表されるアカペラグループの演奏が日本の合唱団や声楽家の演奏よりもハモッて聞こえるのはこれが原因。アカペラグループの三和音の音程に関しては問題がありますが、これらの編曲は不協和音が多いのでそれほど問題にはならないのでしょう。

バス、テナー、カウンターテナーまで共通の発声法(頭声重視)
 ヨーロッパの男声合唱団(ヘルシンキ大学男声合唱団、Svanholm Singers、Renner Ensemble Regensburgなど)の演奏を聞いていると、カウンターテナーが必要な曲を演奏する場合、どうやらトップテナーがカウンターパートを担当しているようです。日本の合唱団では、下のテナーパートの音域の問題等でバス系のメンバーがカウンターを担当する例があり、私自身も長い間その方が適切だろうと考えていたので、これはかなり意外でした。
 しかし、Home Page of Yutaka Maekawa/前川 裕ヘルシンキ大学留学日記のページでヘルシンキ大学男声合唱団の発声法について書かれた箇所を熟読すると、高い音でファルセットを多用する等、テナーとカウンターの発声法が似ている事が分かりました。これならばトップテナーがカウンターを担当するというのも自然な事であると感じられます。
 また、これらの合唱団ではバスの発声も頭声を多用していてテナー、バスの発声に余り差は感じられません。むしろ全員が全く同じ発声をして、音域の違いだけで各パートに振り分けていると考えた方が適切でしょう。確かに同じ響きの方が良く混ざるし、頭声が多いという事は倍音が良く出ているのでハーモニーの快感がより強調されると言う事ができます。
 ちなみに日本の合唱団でよくあるバス系に胸声を強調させる発声法(テナー系でも所謂「前に飛ばす声」がこれに当たる)は、他に韓国の合唱団が行っていますが、ヨーロッパではオペラ合唱(声楽家の集合)で見られる位で世界的に見ると小数派です。この発声は旋律を強調するには向いているが、ビブラートがかかり易く他の声と混ざりにくい声です。ようするにハーモニーよりも旋律を強調する音楽を演奏する場合に有利な発声法と言えるでしょう。


脱・初心者編

 歌い始めた頃は、どうしても音程が下がり気味になるもの。これはただ前に声を出しているだけで、 響きを上に持って行くという感覚が欠如している事に起因します。 まずは鼻控共鳴を体得、つまり「口より上に響きが乗る」という感覚を具体的に体験する必要があります。 しかし、これを説明する方法については学生時代から悩んでおりました。

 これについては、幸いΚΟΣΜΟΣ時代にヒントを得ていたので、それを土台にして指導する事にしました。
「鼻を指でつまんだ状態でフン!と鼻を鳴らすと、鼻の上部や額に響きが当たるのを体感できる。」
というもので、最初はこれで響きの当たる位置を体験してもらいました。 その後、より直接発声に生かせるようにアレンジを加えました。

・まずはハミングで鼻から息と響きが出ている事を確認。
・続いてオープンハミングにして、鼻で響かせながら口を開けるという状態を認識する。
・イやウで発声を行う。息や響きは鼻から流す事を意識しながら声を出す。
・以下、オ、エ、アと段々口を開けて馴らして行く。

ワンポイントアドバイス
 音程が下がっている事を指摘すると、メンバーは大抵の場合、音量を大きくしようとしますが、 これは大抵歌っている本人にとってのみ音程が上がったように感じるだけです。 そういう場合は下がる箇所で頬や眉毛を上げるように指導すると効果があるようです。

応用編

 前項の発声ができるようになれば、後は声の出す方向を変える事により、色々な発声に対応する事ができるようになります。 鼻の響きを強調して行けば、前に出る強い声になるし、後ろや真上に響きを持って行くようにすれば柔かい声になります。 この二つの出し方を複合して、額に響きを当てるように意識すれば、声楽家のような声になるでしょう。 バス系ならば、さらに胸の響きを意識して混ぜれば、幅広い声が出せるようになるでしょう。

 さて、我々が求めるのは柔かくハモりやすい声ですので、以下は上に響かせる声の作り方について解説していきます。


ハモる声へ

 ひとまず、鼻控共鳴をつかむ事に成功したメンバーではありましたが、さらに高い響きの声を指導しようとすると、 「後ろに引っ張るように声を出す」「頭の上から声が出ていくイメージで」といった抽象的な表現をするしかありませんでした。
 そんなある日、 Home Page of Yutaka Maekawa/前川 裕ヘルシンキ大学留学日記のページを見ると、 前川氏がYL(ヘルシンキ大学男声合唱団)でヴォイストレーニングを受けた様子が書かれていました。 (11/21-11/30 (52k): YLでのボイストレーニング 11月24日付)
 前川氏は本来バス系のようですが、YLでは入団テストの結果セカンドテナーを担当されていたので、 テナーとしての発声訓練を受けています。
 その中で、ヴォイストレーナー、マッティ・ペロ氏の指導について以下のように述べられています。

 途中で、発声の個人レッスンを予約してあったので、別室に行く。ひげおじさんはマッティ・ペロというそうだ。 YLのメンバー表には載っていない。改めて挨拶をしてから、英語での説明で進めていく。 最初は姿勢で、少し膝を緩めた姿勢になるのが特徴的。直立だと、腰のあたりがうまく使えないとか。 発声に使う筋肉を意識しながら体を開いていくことを説明してくれる。時々「横隔膜」などの解剖学的な用語が出てくるが、 それは文脈で理解できる。胸郭を開き、それを保持することを力説していた。下腹の緊張を維持し続ける、ということも。 呼吸については、「お」の口で吸って軟口蓋の高さを意識するといういわゆる「うどんの口」で、 これは麺を食べる日本人の方が説明しやすいかも(笑)。吸気によって「自然に」解放された体から、「力をいれないまま」で再び吐く。 少しずつ音をつけていくが、そこでは「自由な声(フリーなボイス)」という言葉を使っていた。下降音形では最低音に力が入っている、 と注意される。また高い部分では、ファルセットを積極的に使い、無駄が無いように声を使うべきだ、 胸声にはどうしても限界があるから、ソロでは必要だが、合唱ではファルセットを使うべきだ、という。 さらに、ファルセットから普通の声に移る時にわからないようにしよう、という。これはちょっと練習が必要。

 特に「高い部分では、ファルセットを積極的に使い、無駄が無いように声を使うべきだ、 胸声にはどうしても限界があるから、ソロでは必要だが、合唱ではファルセットを使うべきだ」という箇所に目が止まりました。 私の高校時代に「高い部分ではファルセットと地声を混ぜて出す」という指導を受けた事もあり、 それまで、ファルセットを指導に使う事になんとなく抵抗を感じていたのですが、これでふっきれました。
 そして、これを参考に、ファルセットを使った発声指導を行うようになりました。具体的には以下のような練習を行います。

・高音部でファルセット発声をして、その「上へ抜ける感覚」を体験してもらう。
・ファルセットのまま、ある程度まで音程を下げて(少し苦しくなる所)そこで鼻控共鳴等を混ぜていき、 ファルセットと地声を混ぜる訓練をする。コツとしては、ファルセットしながら口の奥を開けたり、 鼻控共鳴を強めて声の出る方向を前の方にしていくと良いでしょう。
・この発声が可能になれば、次は音程を上下に動かし、上ではファルセット、下がってくると地声を混ぜていき、 低い所では鼻控共鳴のみにする。このファルセットと鼻控共鳴のブレンドを滑らかに変化していくように訓練します。

 この練習によって、メンバーは高く柔かい響きが出せるようになりました。

以下試行錯誤中

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