翻訳者大西央士の作品紹介 |
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ドナルド・マッケイグの横顔 |
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| 1940年、モンタナ州ビュート生まれ(日本で言えば、「60年安保世代」になるか)。 モンタナはカナダに隣接したロッキー山中の州で、『名犬ノップ』や『名犬ホープ』の物語の起点となるヴァージニアよりさらに広大な空がひろがる牧草地帯。かつてはあの人気テレビドラマ『ローハイド』のなかで若き日のクリント・イーストウッドさんが演じたロディのような牧童たちが、テキサスで集めた野生の牛を追ってたどりついていた「アメリカの放牧地」だった。 ビュートという町の名前も、そんなだだっ広い原野のなかに「プッシュボタン」程度に隆起したテーブル状の低い丘の呼び名からきている。 ただし、この町はモンタナのなかではやや異色。別名「地上最大の鉱山町」。金、銀、銅、鉛などを産出し、緑のない地肌むき出しの山を背景に赤茶けた煉瓦のビルがならび立つ、そう、夜ともなれば牧童あがりの荒っぽい鉱夫たちがどこかのサルーンでカウンターの上にウエスタン・ブーツをどかっとのっけて1杯やっているような、そんなイメージの町。 地元の大学を卒業後、カナダやデトロイトの大学で教鞭をとったマッケイグさんは、そのうちデトロイトでコピーライターに。 となれば、やっぱりデトロイトじゃだめだ、ニューヨークへ行かなきゃ、それもマジソン街へ。 というわけで、大手広告代理店が集まるマジソン街でそのひとつにはいり、ラジオのプロデューサーなどをしながらグリニッチ・ヴィレッジに入りびたるようになれば、もう時代の最先端の動きと無縁ではいられない。 ときはまさにヒッピー全盛期。「われこそは時代の最先端」を自認する芸術家たちが集まるグリニッチ・ヴィレッジで詩を書き、アメリカン・カルチャーの本流に染まることをいさぎよしとしなかったマッケイグさんは、ドラッグなどを通して知り合った仲間たちとカウンター・カルチャー「ヒッピー・ムーヴメント」のひとつの理想だったコミューン建設に乗り出し、首都ワシントンから川をひとつわたったヴァージニアの田舎に移り住む。 それが、1971年のこと(だから、31歳のとき)。 でまあ、そこで、先に紹介したモンタナで育った自分を思い出すことになる。 そう、そう、わかる、わかる。自分がどういう人間かも忘れて時代の先端をきわめることに夢中になった時代━━60年代から70年代にかけては、そういう時代だった。 早くから小説を書く気はあり、ダシール・ハメットの『血の収穫』のような都会派ハードボイルドを書こうとしていたマッケイグさんが、このヴァージニアへの移住後、急におもむきを変えて書き上げたのが、『名犬ノップ』(原題: Nop's Trials)。 ノップの飼い主で、人間側の主人公を務めるヴァージニアの農場主ルイス・バークホルダーのセリフやしぐさの背後に感じられる朴訥で野太い人間味に接すれば、「まあまあ、マッケイグさん。あなたにはやっぱり最初からこういう話が合っていたんですよ」と言いたくもなる。 そのいい味が、1980年代の苦悩するアメリカで受け、この本は大ベストセラーに。 現在、マッケイグさんはNational Public Radio (NPR) という公共ラジオ放送のAll Things Consideredという番組でコメンテイターを務めている。 もちろん、小説やなにかも書いていて、1971年に買ったヴァージニアの自宅の歴史をたどったAn American Homeplace、南北戦争期に南部の農園の後継ぎと奴隷の娘との間にできた息子の生涯を描いたJacob's Ladderなどが新作として知られている。
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