TA-N901の写真
ESPRIT  TA-N901
STEREO POWER AMPLIFIER ¥350,000

ソニーが設立した高級品ブランド「エスプリ」のパワーアンプとして第2弾のモデルで,モノラル機であった
TA-N900に対してステレオパワーアンプとして仕上げられ,よりソフィストケートされた使い易いパワー
アンプとなっていました。

パワーステージは,小電力トランジスターを無限大個集積した構造を持ち,高周波特性のすぐれたHi-fT
トランジスターによるトリプルプッシュ・ソースホロワのSEPP出力となっていました。パワーステージのリニ
アリティを補正するようにドライブ電圧をコントロールしながら,パワー素子をほとんどの領域でAクラス動
作させる歪み低減回路を採用し,プリステージへのNFB回路を取り除いていました。

プリステージの初段はFETによるダブルカスコード・ブートストラップ回路で,FETの帰還容量の非直線性
による高域の歪みを減少させ,さらにカレントミラー負荷との組み合わせで温度変化に対する安定度と電
源リジェクション特性の向上が図られていました。
2段目は,バイポーラトランジスターのカスコード・ブートストラップ型の反転増幅回路で,優れたリニアリテ
ィと高い電源リジェクション特性を実現していました。
終段は,コンプリメンタリーエミッタホロワSEPP出力で,この出力端子から初段へのNFBループは設け
られていましたが,扱う信号が小さくスピーカー負荷からも切り離されているため,音質への影響は無視
できるレベルに抑えられていました。
インピーダンスの異なるスピーカーを効率よくドライブできるように,スピーカーインピーダンス切替スイッ
チ(4Ω/8Ω〜16Ω)が背面に設けられ,パルスロック電源のパワーステージへの電圧供給が各ポジシ
ョンで定格出力になるようにコントロールされ,負荷の違いに支障なく対応するようになっていました。

TA-N901のパルスロック電源

電源部は,ソニー自慢の「パルスロック電源」が搭載されていました。これは,トランスレス整流回路で直
流(正確には脈流)を作り,これをスイッチングにより20kHzの方形波に変換,小型のトランスを通して電
源とするもので,50Hz,60Hz等のハムが発生せず,パルス幅で一定電圧になるよう制御しているので,
たとえ,AC電源90V〜130Vまで変動しても小出力時から大出力時まで極めて安定した電源供給能力
が得られるという利点を持っていました。逆にスイッチングによるパルスから発生するバズの影響が問題
となるため,シールドは厳重に行われていました。この「パルスロック電源」は「デジタル電源とも」言われ
そのメリットは大きかったものの,上記の問題点が嫌われ,消えていってしまいました。しかし,最近にな
ってクレル,リンなどの海外製の高級アンプにも採用されるなど,もう一度脚光を浴びつつあります。デジ
タル技術が発達した今,シールド技術も高くなり,そのメリットをより生かせるようになってきたからでしょう。
TA-N901では,パワーステージの+側,−側の各々にパルス幅制御型電圧回路が設置され,その低周
波領域での出力インピーダンスは約0.05Ωと,従来の大型トランスを使用した場合に比べて1/10以下
となっていました。また,整流回路には応答特性のすぐれた高速ダイオードが使用されていました。
プリステージ用には,パワーステージとは独立した安定化電源がプリステージに近接して設置され,ステー
ジ間の干渉が抑えられ,安定した動作が確保されていました。
電源コードには,伝送特性のよりスターカッド構造線が採用されていました。

TA-N901の内部

TA-N901は,L・Rチャンネル間の信号系の交錯を一切避けたツインモノラルのコンストラクションとなって
いました。L・Rの信号系の間にはシールドが施され,磁気的なわずかな漏れもシャットアウトする構造となっ
ていました。同一チャンネル内についても,入力から出力まで最短距離で結び,かつ各部の干渉を防ぐレイ
アウトがとられていました。シャーシは非磁性体が採用され,信号の流れを乱す磁性材が一切排除されてい
ました。そして,ユニットアンプには,信号電流による振動を防止し,熱的安定を図ったオーディオモジュール
が採用され,パワーステージには有害振動を防止する重量級のヒートシンクが採用されていました。

TA-N901のフロントパネル
TA-N901のディスプレイ

フロントパネルには,TA-N900にはなかったコミュニケーション・ディスプレイが設けられ,TA-N901の大き
な特徴となっていました。このコミュニケーション・ディスプレイは,アンプの音質に影響を与える負荷や温度の
動作状態を表示するもので,PROTECTION(保護回路の働いている状態を示す),OVERLOAD(過大入力
や異常に重い負荷で出力がクリップ状態を示す),TEMPERATURE(パワーON後バイアスその他が安定す
るまでは青,約20分後安定すると緑が点灯し,温度が上がりすぎた場合赤が点灯して警告を示す)が備えら
れていました。

以上のように,TA-N901はエスプリブランドのパワーアンプ第2弾として,TA-N900の弟機としてだけでなく
独自の魅力も盛り込まれたステレオパワーアンプとなっていました。音の方も,TA-N900同様に色づけの少
ない,しかし硬すぎず明るすぎないほどよいバランスの音を持った1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



No NFB Loop,Aクラス動作の
シンプルな回路構成で
音の素顔を磨きあげ,
実用性という意味でも
十分に練り上げられた
150W+150Wのステレオパワーアンプです。





●主な仕様●

回路方式 (プリステージ段) 
  初段FET差動ダブルカスコードブートストラップ入力カレントミラーロード 
  2段目カスコードブートストラップ反転増幅 
  終段エミッタホロアSEPP出力 
(パワーステージ段) 
  Hi-fTトランジスタ クワドルプルソースホロアSEPP出力,
  ノンスイッチング型Aクラス動作,No NFBループ 
(電源部) 
  パルスロック電源 
実効出力 150W+150W(20Hz〜20,000Hz,8Ω負荷時)
130W+130W(20Hz〜20,000Hz,4Ω負荷時)
高調波ひずみ率 
(実効出力時)
0.1%(8Ω),0.2%(4Ω)
混変調ひずみ率 
(60Hz:7kHz=4:1 実効出力時)
0.1%(8Ω),0.2%(4Ω)
ダンピングファクター 50以上(1kHz,8Ω)
残留雑音 30μV以下(8Ω Aネットワーク)
SN比 120dB以上(8Ωクローズドサーキット Aネットワーク)
周波数特性 DC〜100kHz+0−3dB(ダイレクト時)
入力感度 1.4V,インピーダンス50kΩ
出力端子 4Ω〜16Ωのスピーカーに適合 
(スピーカーインピーダンススイッチで切替え)
電源
AC100V,50/60Hz
消費電力 230W
大きさ 480(幅)×105(高さ)×485(奥行)mm
重量 13kg

※ 本ページに掲載したTA-E901 の写真,仕様表等は1982年6月のESPRITの
 カタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したがって,
 これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますので
 ご注意ください。  
      
  
 
 
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