T-7の写真
YAMAHA T-7
NATURAL SOUND AM/FM STEREO TUNER ¥69,800

1980年に,ヤマハが発売したFM/AMチューナー。前年に発売された高級チューナーT-9の弟機といった
モデルで,デザイン的にも内容的に共通点が多く,中級機としてしっかりした性能を持つチューナーでした。

T-7の基本的な構成は,ローゲイン・アンチサチュレーション・フロントエンド→ユニレゾナンスセラミックフィル
ターによる, AUTO DX回路付き IF段→ウルトラリニアダイレクトディテクタ→C MOS DCNFB+アンチイン
タフェアレンスPLLシステム+ トラッキングサーボパイロットキャンセル回路によるリアルタイムダイレクト・デ
コーダー→低歪率オープンロードタイプノルトン変換型ローパスフィルターとなっていました。回路構成はT-9
と類似点が多いものとなっていました。
AM部は,カスコード接続によるRFアンプ→差動ミキサ→トリプルチューンIFTといった,音質重視の回路構
成がとられていました。さらに,デジタルシンセサイズドメモリーによる,モー タードライブ方式・FM5局,AM
5局のプリセットチューニング回路が装備されていました。

フロントエンドには,高精度ワイドギャップ4連バリコンとデュアルゲートMOS FETを採用し,段間をダブル
チューンとしていました。RFアンプには,アンチサチュレーション回路を付加して,強電界での高選択度受信
を拡大していました。

IF段は,単共振構造と特殊な電極パターンによって帯域内の微分利得偏差を極小に抑え,妨害排除特性と
オーディオ特性のハイレベルでの両立を図ったユニレゾナンスセラミックフィルタとリミッタ特性に優れた高性
能IFアンプとによって構成されていました。IF回路は,電波環境に合わせて適切な動作をさせられるように,
妨害検出型のAUTO DX回路を持つLOCAL・DXの2系統を装備していました。
LOCAL IF段は,ユニレゾナンスセラミックフィルター3素子と8段差動増幅器で構成され,50dBという選択
度を確保しつつ優れたオーディオ特性を実現していました。
DX IF段は,ユニレゾナンスセラミックフィルター5素子と7段差動増幅器とで構成され,実効選択度90dBを
確保しつつ歪率0.4%(1kHz),セパレーション30dB(1kHz)を得ていました。
T-7には,ステレオセパレーションをコントロールしてノイズを低減するAUTO-BLEND回路も装備されてい
ました。しかも,AUTO DX回路と連動されて自動的にコントロールされているため,ステレオ受信エリアの
拡大が実現されていました。

検波段には,ヤマハ自慢の新開発「ウルトラリニアダイレクトディテクタ」が搭載されていました。10.7MHz
のIF信号をダイレクトに広帯域レシオトランスに入力して検波する,従来のヤマハのチューナー「Tシリーズ」
に登載されていた「ワイドレンジ・リニアフェイズディテクタ」をよりワイドレンジ化,高SN化,低歪率化し,さら
にDCスタビライザを装備したものでした。当時のヤマハの資料によると,ダイレクトに検波することで,パルス
カウント検波に比べて情報の伝送能力は5〜10倍,復調周波数特性はDC〜1400kHzと10倍の広帯域を
誇るとうたわれていました。

ステレオ復調を行うMPX段には,「リアルタイムダイレクト・デコーダー」が搭載されていました。これは,それ
までの「Tシリーズ」でも採用されていた完全DC化が特長のDC・NFB・PLL・MPXステレオデコーダーに,さ
らにC MOS・DC・NFBスイッチング回路を搭載してより高性能化したもので,ヤマハの基本特許であるNFB
スイッチング平均値復調方式を,スイッチング速度がきわめて速いC MOS(コンプリメンタリィMOS)双方向
アナログスイッチとハイスルーレイトDCアンプICを組み合わせたものでした。ここでもトリオなどが採用していた
「サンプリングホールド方式」に対する優位がうたわれ,当時のヤマハの自信が表れていました。

19kHzのパイロット信号を同振幅逆相のサイン波でスイッチング回路の入力でキャンセルするための「トラッキ
ングタイプパイロットピュアキャンセル回路」を備えていました。放送局によってパイロットレベルが異なる場合に
も強力にレベル追従してパイロット信号をデコーダーにはいる前にキャンセルすることができ,キャリアリークが
極めて少なく,デコーダーにはコンポジット信号のみが入力され,混変調歪が抑えられていました。
また,19kHzのパイロット信号から,コンポジット信号を復調するために38kHzのサブキャリを発生するための
PLL回路には入力に同調型の妨害除去フィルターを付加し,ステレオ信号によるサブキャリア信号の乱れが極
めて少ないAuto Interference PLL Systemが採用されていました。

AM部は,2連バリコン非同調RFカスコード増幅段→差動ミキサ→トリプルIFT(中間周波トランス)などによって
高感度,高ダイナミックレンジを確保し,さらにRXモードスイッチを切ることで,AM部においてもLOCAL−DXの
切換ができるようになっていました。背面パネルには,AM用のHi-Q型ループアンテナが搭載されていました。

T-7の内部

 T-7では,T-9に初搭載された「モータードライブ・プリセットチューニングシステム」を搭載していました。これは,
バリコン式のチューナーにシンセサイザー式チューナーのメリットの一つ,周波数プリセット機能を持たせたユニー
クな機能で,受信したい周波数に対応するバリコンの回転角度を10ビット(1024分の1)の分解能でデジタル値
に変換してメモリーに記憶させておき,選局時に希望する局のチャンネルキーを押すと,メモリーされている10ビッ
トのデジタル値を呼び出して回転角度に対応したアナログ信号に変換して出力し,サーボモーター回路に送られて
モータードライブによるチューニングが行われる機能でした。サーボモーター回路は,メモリーから送られてきたア
ナログ信号とバリコンの回転角度信号を比較し,その差がゼロになるようにバリコンの回転角度を調整し,この動
作が終わると,サーボ回路からの信号に代わってIF回路からの中心周波数に対応したセンターチューニング信号
により制御されて,バリコンが補正ドライブされて最適同調点に微調整されて止まる仕組みになっていました。
周波数のずれを補正するAFCのON/OFFはチューニング操作と連動して自動的に行われ,その動作状態をLED
によって表示する機能を持ち,OTS(Optimum Tuning Syst-em)という名称が付けられていました。

T-7のシルバー,ブラック両モデル

以上のように,T-7は,ヤマハ・チューナーの「T1桁シリーズ」の最上級機・T-9の弟機として,ほぼ技術的にも準
ずる内容を備えた,コストパフォーマンスの高い1台でした。シルバーパネルのモデルに加え,ブラックパネルのモ
デルも発売されていました。私も縁あって入手し,ヤマハらしい洗練されたデザインとすっきりした音質,ユニーク
な選局機能など,気に入ってサブチューナーとして使っています。使いやすい実力派の1台だと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



10.7MHzをダイレクトに検波する
ウルトラリニア・ダイレクトディテクタ
C MOS DC NFBスイッチングによる
リアルタイム・ダイレクトデコーダ
秀れた音質と快適な操作性を両立させた
プリセッタブルFM/AM機

◎Ultra Linear Direct Detector
 ◆復調周波数特性DC〜1400kHz(−3dB)のワイドレンジ
 ◆10.7MHzをダイレクトに検波するウルトラリニア・ダイレクト
   ディテクタ
 ◆情報伝達能力はパルスカウント検波の5〜10倍
◎Real Time Direct Decorder
 ◆n(ナノ)Secオーダーのハイスピードスイッチング
  −C MOSディバイス
 ◆トランジェント特性にも秀れたリアルタイム・ダイレクトデコーダー
 ◆トラッキングタイプパイロットピュアキャンセル回路
 ◆アンチインタフェアレンスPLLシステム
 ◆低歪率オープンロードタイプノルトン変換型ローパスフィルター
◎IFステージ
 ◆秀れたオーディオ特性を実現するLOCAL IF段
 ◆妨害の多い受信環境で威力を発揮する実効選択度90dBの
   DX IF段
◎AM部
 ◆音質重視のAM部
 ◆新開発Hi-Q型ローインピーダンスループ アンテナ
◎モータードライブプリセットチューニングシステム
 ◆秀れた音質・受信性能と快適な操作性を両立させたデジタル
   シンセサイズドメモリ・モータドライブFM5局,AM5局プリセット
   チューニング
◎OTS
 ◆OTS(Optimum Tuning System)
 ◆AUTO-BLEND回路
◎メータ回路
 ◆マルチパスも表示するデュアルモードシグナルクオリティメーター
 ◆オプティカルバランスタイプチューニングインジケーター




●T-7の主な規格●

■FMチューナー部■

受信周波数
76〜90MHz
50dB SN感度 MONO    3.2μV(15.3dBf:DX)
STEREO  20μV(31.2dBf:DX・BLEND ON)
        38μV(36.8dBf:DX・BLEND OFF)
実用感度
(IHF・MONO・84MHz)
300Ω 1.7μV(9.8dBf)
75Ω  0.85μV(9.8dBf)
イメージ妨害比(84MHz) 100dB
IF妨害比(84MHz) 100dB
スプリアス妨害比(84MHz) 100dB
AM抑圧比(IHF) 67dB
実効選択度(±400kHz) DX     90dB
LOCAL  50dB
SN比 MONO   90dB
STEREO  85dB
全高調波歪率               (LOCAL)   (DX)
MONO   100Hz  0.03%     0.1%
         1kHz   0.04%    0.3%
         6kHz   0.07%    0.7%
        10kHz   0.05%     0.1%
STEREO 100Hz   0.05%    0.5%
         1kHz   0.04%    0.5%
         6kHz   0.07%    0.8%
         10kHz   0.08%    1.5%
IM(混変調)歪率(IHF)               (LOCAL)   (DX)
MONO          0.04%     0.5%
STEREO         0.04%    1.0%
ステレオセパレーション               (LOCAL)   (DX)
        1kHz    60dB    30dB
  20Hz〜10kHz    52dB     25dB
周波数特性 50Hz〜10kHz±0.3dB
20Hz〜15kHz+0.3dB,−0.5dB
サブキャリア抑圧比 70dB
ミューティングレベル DX 5μV(19.2dBf)
AUTO-DX動作レベル 50μV(39.2dBf)




■AMチューナー部■

受信周波数
525〜1605kHz
実用感度 IHF
15μV
選択度

DX    27dB
LOCAL 17dB
SN比 52dB
イメージ妨害比
50dB
スプリアス妨害比
50dB
全高調波歪率
0.3%




■オーディオ部■

出力レベル/インピーダンス             (FIXED)       (VARIABLE)         
 FM(100%高調・1kHz) VR センタ    1V/600Ω     500mV/3.3kΩ
VR Max                   1V/60Ω
 FM(30%変調・1kHz)
VR センタ    300mV/600Ω 150mV/3.3kΩ 
VR Max                  300mV/600Ω
REC CAL信号
 (333Hz:FM50%変調に相当)
FIXED      500mV/600Ω
VARIABLE   250mV/3.3kΩ(VRセンタ)




■付属機構■

DCサーボモーターによるAM5局,FM5局プリセット選局機構
RXモード切換(AUTO-DX−LOCAL:AMはマニュアル)
FMミューティング&OTS
デュアルモードシグナルクオリティメーター
オプティカルバランスタイプ・センターチューニングインジケーター
オートブレンド
レコーディングキャリブレーター




■総合■

使用半導体等 IC20,FET5,Tr87,ダイオード36,LED14,ツェナーダイオード3,
セラミックフィルタ5,AMセラミックディスクリ1,ニッカド電池1
ACアウトレット 1個(300W・MAX)
定格電圧・周波数 100V・50/60Hz
定格消費電力 14W
外形寸法 435W×95H×335Dmm
重量 5.2kg

※本ページに掲載したT-7の写真,仕様表等は1980年4月の
 YAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に
 著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・
 引用等することは
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