SONY ST-J88
DIGITAL SYNTHESIZER FM STEREO TUNER
                          ¥160,000

ソニーが1978年に発売した高級チューナー。88シリーズのセパレートアンプとのペアを想定した製品で,後にエスプリ
ブランドで売られていたまさに高級チューナーでした。ソニーが本格的にシンセサイザーチューナーに取り組んだ第1号
でもあったと記憶しています。

ST-J88の最大の特徴は,「クリスタルロック・シンセサイザー方式」の採用にありました。クリスタルロックの名の通り,
水晶発振子の安定した発振周波数を分周して0.1MHzを作りだし,これを整数倍することにより,安定した局発を作り
出すという技術で,水晶精度で非常に安定した同調させることが可能になり,かつチューナーの小型化・薄型化が可能
になりました。シンセサイザーチューナーが登場して数年のこのころは,そのデジタルの周波数表示とプリセットできる
チューニングが便利でかっこよかったものでした。(今では当たり前になりましたが・・・。)

ST-J88では,7局までのプリセットチューニングが可能になっていました。プリセット機能は,「マルチ・プロセス・メモリ
ー」と称し,受信周波数の記憶だけでなく,モード(stereo/mono),ミューティング(on/off),セレクティビティ(選択
度・normal/narrow)といった受信状態も同時に記憶させる機能を持ち,受信放送局を切り換えるたびにファンクション
を操作する必要がないというものでした。
さらに,シンセサイザー方式ならではの,両方向のオートチューニング,マニュアルの0.1MHzごとのステップチューニ
ング機能が搭載されていました。

フロントエンド部は,デュアルゲートMOS FETによるRF増幅により高感度を実現していました。IF部は,NORMAL,
NARROWの2段切換になっていました。NORMALポジションでは,2素子が1パックになっており,サーモバランスが
よく,群遅延特性に優れたユニフェイズフィルターにより,高選択度と低ひずみ率の両立を実現していました。NARROW
モードにすると,さらに特性がシャープで位相特性の良いSAWフィルターが加わり,より高選択度(65dB・300kHz離調)
となりました。

MPX回路は,MPX復調用スイッチング信号とパイロット信号を位相比較して常に同位相になるように制御するPLL・IC
を採用し,温度や湿度,経年変化にも強く,安定して低ひずみ,高セパレーションを発揮していました。

ST-J88は,高級機らしく電源部も強力で,大容量のトロイダルトランスを搭載し,VCO制御電圧用の30V,コントロー
ル部用の+5V,チューナー回路用の+15Vを独立させ,各々にICによる定電圧回路を挿入して動作の安定化を図っ
ていました。

ST-J88の内部

以上のように,ST-J88は,ソニーのシンセサイザーチューナーの第1号機として,先進的な内容を持つチューナーでし
た。後のソニーのシンセサイザーチューナの基礎的技術はすべてここで見られ,まさに,原器的存在だったといえるでし
ょう。その筐体,作りは,薄型ながら重厚なものがあり,パーツにもハイクオリティなものが投入され,後にエスプリブラン
ドでロングセラーを続けた高級チューナーでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

ソニーのチューナー技術と
デジタル技術を総結集した。
クリスタルロック・デジタル
シンセサイザー・チューナー。

◎クリスタルロックデジタル周波数シンセサイザー
◎マルチ・プロセス・メモリーの7局プリセット・チューニング
◎88シリーズの設計ポリシーが受信性能,音に生きています。
◎デュアルゲートMOS-FETのフロントエンド部
◎SAW/ユニフェイズフィルター採用の中間周波(IF)増幅部。
◎PLL・IC採用のステレオ復調部。
◎人間工学的に工夫した,数々の使い易い機能。
◎両方向オートチューニング。
◎ステップチューニング(マニュアル)
◎受信状態が一目でわかる
 5ステップのデジタルチューニングインジケーター。
◎メモリーしてある局が表示できる局名表示板付属。
◎出力端子は,FIXEDとVARIABLEの2系統出力。
●ST-J88の仕様●


FM実用感度(IHF) 1.8μV(IHF),10.3dBf(新IHF)
SN比 80dB(モノ),75dB(ステレオ)
キャプチュアレシオ 1.0dB(NORMAL),1.7dB(NARROW)
実効選択度 NORMAL 25dB(300kHz),65dB(400kHz)
NARROW) 65dB(300kHz)
イメージ妨害比 110dB
IF妨害比 110dB
スプリアス妨害比 110dB
高調波ひずみ率 NORMAL 100Hz      0.04%(MONO) 0.07%(STEREO) 
        1kHz       0.04%(MONO) 0.07%(STEREO)      
        10kHz      0.04%(MONO) 0.15%(STEREO) 
NARROW 100Hz      0.08%(MONO) 0.3%(STEREO) 
        1kHz       0.08%(MONO) 0.3%(STEREO) 
        10kHz      0.08%(MONO) 0.15%(STEREO) 
ステレオセパレーション(1kHz) NORMAL   100Hz       50dB
         1kHz        50dB 
         10kHz        45dB 
NARROW  100Hz       45dB
         1kHz        45dB 
         10kHz        40dB
大きさ 480W×80H×370Dmm
重さ 約7.0kg
消費電力 25W
※本ページに掲載したST-J88の写真,仕様表等は1978年10月のSONY
 のカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したが
 って,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていま
 すのでご注意ください。
 

★メニューにもどる       
 
 
 

★チューナーのページPART2にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。 


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp