MX-2000の写真
YAMAHA  MX-2000
NATURAL SOUND STEREO POWER  AMPLIFIER
                             ¥300, 000


1988年にヤマハが発売したパワーアンプ。CX-2000とペアを想定されたパワーアンプで, 超弩
級機MX-10000の流 れを受け継ぐチタンカラーのパネルに大型のパワーメーターをもつヤマハら
しい繊細で美しいデザインが印象的なパワーアンプでした。

MX-2000には,MX-10000で開発された「HCA回路」が搭載されていました。これは,ハイパー
ボリック・コンバージョン(双曲線変換)A級動作の略で,A級動作をより広範囲(全負荷・全出力)で
実現するものでした。純A級動作は,原理的にスイッチング歪みやクロスオーバー歪みがなく,パ
ワーアンプとして理想的な動作方式ですが,反面,出力素子が全振幅の増幅をまかなうため,ハイ
パワーが得にくく,特に低インピーダンスドライブを難しいものにしていました。また,純A級動作にお
いても,基本的には直線の合成のため,どこかでカットオフし(図5),出力電流がアイドリング電流
の2倍を超すとAB級に移行して歪みの発生に至るという弱点がありました。HCA回路は,トランジ
スタのIc-VBE特性がもつ対数特性を利用して全出力帯域でカットオフせず,しかも完全な合成特性
を得るもので(図6),パワーバッファ前段のドライバー段にデュアルトランジスタ2個によるカレントミ
ラー構成の変換回路を組み込むのみというシンプルな回路でアイドリング電流に依存せず,全負荷
全出力で純A級動作を可能にしていました。このHCA回路は,フィードバックループもゲインも持たず
純粋な変換器として働くため,過渡応答性にもすぐれていました。

HCA動作

パワーバッファー段の出力素子には,パワーMOS FETが採用されていました。パワーMOS FETは
入力インピーダンスの高い電圧制御素子であり,ドライバー段の負担を減らし回路のシンプル化が図
れるなどのすぐれた特徴がり,音質的にも独自の魅力があるといわれています。
MX-2000では,パワーMOS FETを片チャンネルあたり8個使用した4パラレルプッシュプル構成で
A級定格出力150W+150W(6Ω)が余裕を持って確保されていました。そのため,HCA回路とも
相まって,A級ダイナミックパワーは600W+600W(1Ω)という高出力が実現されていました。

MX-2000のパワーブロック

電圧増幅を行う初段のボルテージアンプには,デュアルFET差動入力・カスコードブートストラップ回路
が採用されていました。電流リークの少ない高利得FETと広帯域トランジスタの組み合わせで広帯域と
過渡入力に強いハイスルーレイトを実現していました。また,このボルテージアンプ基板は,入力端子の
間近に配置され,高S/N比を達成していました。

MX-2000では,スピーカー端子はあえて1系統のみとされ,スピーカーシステムとのマッチングとドライ
ブ能力の安定が図られていました。スピーカー出力を1系統のみとしたことで,入力から出力に至るオー
バーオールの歪みを排除する独自のエラーコレクションアンプの搭載が可能となっていました。これは,
スピーカー出力端子のホット/アース両端子から,直接歪みをボルテージアンプに反転入力するアンプを
新たに設けたもので出力素子のわずかな歪み,スピーカーリレーや出力コイルのノンリニア成分,さらに
配線材の直流抵抗分のため生じる入力端・出力端アース間の電位差もキャンセルできるというものでし
た。そして,MX-2000は0.003%(8Ω・20〜20,000Hz,130W時)という低歪率とダンピングファ
クター1000という特性値を実現していました。

電源部は,EI型コア使用の420VAの大型の電源トランスと20,000μF×2の低歪率アルミ電解コンデ
ンサが搭載され,すぐれたレギュレーション特性,ノイズ特性を実現していました。特に,平滑用アルミ電
解コンデンサは直径76mmという大型のものが搭載されていました。このコンデンサは,低倍率アルミ電
極箔の使用や電解液の改善で,イオン性ノイズも低減され,高音質な電源部となっていました。

MX-2000の内部

パーツ,内部コンストラクションにもしっかりと配慮が行われていました。パワーブロックが搭載される
ヒートシンカーには新たに低共振チムニー型が採用されていました。このヒートシンカーは放熱部に
鋭角を持たないオーバル形状により,共振によるヒートシンカーの鳴きを排除し,アルミ押し出し材の
一体成型により構造強度も高いものとなっていました。パワーステージ基板には金メッキバスバーが
埋め込まれ,電力・出力ラインの低インピーダンス化も行われていました。ケミコンにはオーディオ用
ケミコンが全面的に採用されていました。

全体のコンストラクションは,ステレオパワーアンプとして理想的といわれる左右対称のコンストラクシ
ョンがとられていました。電源トランス,平滑用ケミコンをシャーシの中央に,L・Rの各パワーブロック
を左右に配置して,セパレーションを確保していました。また,この配置は重量バランスもよく脚部の
安定化にもつながっていました。パワーブロックは,放熱部を内側に,パワーステージ基板を外側の
サイドウッドパネル側に対するように配置することで,電源トランスから伝わるフラックスの影響も防い
でいました。さらに,微弱信号を扱うボルテージアンプ基板と,大電流の信号が通るスピーカーリレー
&出力コイルは,上下に分離された2BOXコンストラクションが採用されていました。ボルテージアンプ
基板を上側に,スピーカーリレー&出力コイルを下側に収納することにより,入出力信号の干渉を排
除していました。また,フロントパネル,トップカバーには高剛性のアルミ押し出し材を使用し,内部シャ
ーシ&フレームは,すべて非磁性・銅メッキ処理が施されており,高剛性な筐体と,磁気歪みの影響の
低減を実現していました。

以上のように,MX-2000は,中級クラスのパワーアンプとして,超弩級機MX-10000の技術を受け
継ぎ,しっかりした作りがなされたコストパフォーマンスの高い,実力派の1台でした。外観のイメージ通
りの明るくすっきりとした透明感のある音は,ヤマハらしいものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



低インピーダンス・ドライバビリティを
徹底重視。
理想のA級動作を実現した
最新鋭パワーアンプ。


◎全負荷,全パワー領域に対してA級動作。
 HCA(双曲変換増幅)回路搭載。
◎ハイパワーを誇る4パラプッシュプル。
 MOSFET採用パワーバッファ。
◎広帯域,ハイスルーレートを実現。
 デュアルFET入力ボルテージアンプ。
◎リレー,出力コイルの歪みも排除。
 ダイレクトエラーコレクションアンプ。
◎低共振チムニー型ヒートシンカーなど
 随所に凝らしたクオリティ設計。
◎420VA大型マッシブ電源トランス。
 20,000μF×2低倍率ケミコン採用。
◎出力レベルを正確に読みとれる
 高速ピークレベルメータ装備。




●MX-2000主な規格●

定格出力
130W+130W(8Ω・20〜20,000Hz・歪0.003%)
150W+150W(6Ω・20〜20,000Hz・歪0.003%)
180W+180W(4Ω・20〜20,000Hz・歪0.01%)
パワーバンド幅
10〜100,000Hz(8Ω・65W・歪0.02%)
ダンピングファクタ
1,000以上(1kHz・8Ω)
入力感度/インピーダンス
1.2V/20kΩ
周波数特性
20Hz〜20kHz(+0〜−0.3dB)
全高調波歪率
0.003%(8Ω・20〜20,000Hz・130W)
S/N比
125dB(IHF-A入力ショート)
残留ノイズ
15μV(IHF-A)
チャンネルセパレーション
95dB(1kHz・入力ショート)
電源電圧
AC100V,50/60Hz
消費電力
350W
外形寸法
473W×170H×469Dmm
重量
28kg


※本ページに掲載したMX-2000の写真,仕様表等は1988年6月の
 YAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等す
 ることは法律で禁じられていますのでご注意ください。
        
  
 
 
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