JM-S7の写真
Victor JM-S7
STEREO FET POWER AMPLIFIER ¥230,000

1975年にビクターが発売したパワーアンプ。業務用機のようなシンプルでかつ機能をそのまま表したよ
うなデザインの中に強力な電源部と当時最新のFETを投入し,温かみのある音を出す実力派のアンプで
した。

増幅部の初段には,定電流用を含めて3個の素子をワンチップに封入した熱安定性のよい複合型FETを
採用していました。以下,出力段までNFBループ内に低域の時定数をもたないDCアンプ構成としていま
した。DCアンプの問題点,中点ドリフトについては,初段と2段目の差動アンプ部を定電圧電源化するこ
とで対処し,入力部にはDCショックを防ぐためコンデンサーを使用していました。
出力段は,PチャンネルとNチャンネルの高耐圧縦型FETを2石ずつ厳選して組み合わせたピュア・コンプ
リメンタリー・パラレル・プッシュプル構成となっていました。縦型パワーFETは,3極管特性であることと
超高域でのスイッチング特性がよいなどオーディオ用として優れた素子でした。高い周波数帯域で入力イ
ンピーダンスが低下する性質に対しては,ドライブ段にコンプリメンタリー・トランジスターを用いて十分な電
流を流し,歪みなくドライブできるようにしていました。また,パワーFETは,3極管特性で,電圧変動により
バイアス電流の変化が起きるため,つねに適正バイアスを保つ自動制御回路が備えられていました。パワ
ーFETには,約400mAの十分なアイドル電流を流してAB級動作とし,小音量時のA級動作によるクリア
な音質と,大音量時の伸びやかな音質を両立させていました。

高効率電源トランス内部

電源部は,縦型パワーFETの出力段を支える強力な構成となっていました。電源トランスには,2次捲線
に平角銅線(リボン銅線)を用いた大型で高効率のトロイダルトランスが搭載されていました。高性能な
オリエントコア(新日鉄Z-8H)とあいまって,従来のトロイダルトランスをしのぐ高いレギュレーションを確保
し,全負荷連続450VA時の電圧低下は3%以内,温度上昇も28℃以下という性能を実現していました。
コンデンサーは,22,000μF×2の大容量で,新しい電極構造と電解液の改良によって出力損失を抑え
ペアーになる2個の容量誤差を5%以内に抑えるという,当時世界でもはじめてという精度で,容量のバラ
ツキによる出力波形の不揃いを解消していました。この高精度なペアー特性により,±2電源の内部インピ
ーダンスが等しくなり,過渡特性,リニアリティのよい電源部となっていました。

JM-S7の大型ヒートシンク

縦型パワーFETは,大型のアルミダイカスト製ヒートシンクに取り付けられ,最大出力時の温度上昇も30℃
以内に抑えられていました。また,ヒートシンクの温度が85℃を超えた場合には負荷を切り離して,出力電
流を制御する保護回路が備えられていました。
スピーカー出力は2系統装備され,ヘッドホン端子も装備されていました。

JM-S7の写真2

以上のように,JM-S7は,高性能な素子とそれを生かす電源部等からなる,オーソドックスに煮詰められた,
パワーアンプでした。真空管アンプにも通じる特性を持つ素子と,その外観デザインは,見事に音の方向に一
致し,ビクターらしい温かみのある音をもった実力機だったと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


縦型FET採用,
そして電源重視設計の集大成。

●アンプの根底を支える電源部

◎リボン捲線トロイダル・トランスと
 縦型フィルター・コンデンサー
◎FET差動入力のDCアンプ構成
◎縦型FETパラレル・プッシュプルの
 ハイパワー出力段
◎自動バイアス回路
●JM-S7型規格●


回路方式 DC構成全段直結FETピュア・コンプリメンタリー・パラレル・プッシュプルOCL
実効出力
(両チャンネル動作)
1kHz=110W+110W(8Ω)THD0.1%
     147W+147W(4Ω)THD0.1%
20Hz〜20kHz=100W+100W(8Ω)THD0.1%
            135W+135W(4Ω)THD0.1%
全高調波歪率
(8Ω両チャンネル動作)
100W出力時1kHz=0.03%以下
50W出力時1kHz=0.02%以下
1W出力時1kHz=0.03%以下
混変調歪率(8Ω負荷) 100W出力時=0.10%以下
1W出力時=0.05%以下
パワーバンド・ウィズス(8Ω負荷) 両チャンネル動作=6Hz〜50kHz(THD0.1%,−3dB出力時)
周波数特性 7Hz〜80kHz(+0,−1dB,8Ω,1W出力時)
ダンピングファクター(8Ω,1W出力時) 1kHz=80以上
DC〜20kHz=40以上
SN比(入力ショート) 101dB以上
入力端子
(入力感度/入力インピーダンス)
1.0V/47kΩ以上
出力端子 SPEAKER=SYSTEM-1or2(4〜16Ω)
         SYSTEM-1+2(8〜16Ω)
HEAD PHONES=8〜2,000Ω 
使用半導体 8縦型FET,44トランジスター,39ダイオード,2IC
定格消費電力 230W
ACアウトレット 電源SW非連動1(MAX300W)
寸法 180H×490W×240Dmm
重量 20.0kg
※本ページに掲載したJM-S7の写真,仕様表等は1975年8月の
Victorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作
権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等す
ることは法律で禁じられていますのでご注意ください。
    
 

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