D-3300Tの写真
KENWOOD D-3300T
SYNTHESIZER TUNER ¥140,000

1986年にケンウッドが発売したFM専用シンセサイザーチューナー。当時のケンウッドの高
級機のシリーズ,「Dシリーズ」のシンセサイザーチューナーとして,完成度の高い高性能チュ
ーナーでした。ケンウッドとして最後の高級チューナーともなった1台でした。

D-3300Tは,KT-3030との類似点が多く,KT-3030からの発展形ともいえる内容をもっ
ていました。そして,最大の改良点は,電源供給に目を向けた「ペンタクルサーキット」の開発
搭載でした。
「ペンタクルサーキット」は,電源を中心として各ステージを配し,電源とステージを最短距離で
つなごうというもので,従来のチューナーの電源が,出口の復調回路から入口のフロントエンド
シンセまで順次供給の列車のような形になっていたのに対し,水平に周りに直接供給する形
になっていました。

ペンタクルサーキットD-3300Tの内部
D-3300Tの内部

ペンタクルサーキットの核となる電源部には,厚手のシールドケースに入った17VAの大型の電
源トランスと大容量ケミコンを搭載し,銅製の放熱板も搭載していました。パーツ等の面でも高級
機らしくコストがかかった内容をもっていました。フロントエンドは銅製のシールドケースに納められ
ていました。

フロントエンドには,チューニング電圧の揺れの影響を全受信周波数帯域にわたってリニアにし
て,IM特性の改善と相互変調を抑えてSN比を向上させた「ダイレクト・リニアレセプション・シンセ
サイザー方式」を採用し,全受信帯域で100dBの高SN比を実現していました。

IF段には,KT−3030にも搭載されたDLLD(ダイレクト・リニアループ・ディテクター)とDCC(ディ
ストーション・コレクティング・サーキット)が搭載され,低歪み率を実現していました。 
DLLDは,10.7MHzのIF信号をダイレクトにリニア化して閉ループ検波器で検波,さらに,閉ルー
プ内に,IFフィルターで発生する高調波歪みを低減する歪み補正回路を設けて高SN比の検波を行
おうというものでした。DCCは,このIF歪み補正回路のことを指します。IF段では,妨害波を除去す
るためには帯域の狭い急峻なIFフィルターを通す必要があります。しかし,それはオーディオ的には
歪みの原因となります。そこで,高選択度と音質の両立を図るために,急峻な特性のIFフィルターで
まず妨害波を取り除き,通過した信号から高調波歪み成分だけを抽出して4次歪みまでキャンセル
しようとする方式がDCCでした。
これらの方式により,ステレオ時の歪み率を0.007%まで低減させていました。

MPX部には,DPD(ダイレクト・ピュア・デコーダー)MPX方式を採用していました。これは,通常の
38kHzの方形波を使ってスイッチングするステレオ復調と異なり,38kHz以外の成分を全く持たな
い正弦波で検波出力と掛算する方式でした。38kHzの方形波を用いる方式では,どうしても高調波
成分が含まれているため,これを除くクリーンレセプション・フィルターなどのフィルターを用いていま
したが,フィルターを通すことにより,どうしても位相まわりなどにより,高域のセパレーションを劣化
させることになります。DPD MPXでは,ローパスフィルターを必要としないため,この点が改善され
ていたといわれています。D-3300Tでは,従来のアナログ掛算器を高性能,高集積度に改良し,
さらに定電流回路を組み合わせて,71dB(WIDE・1kHz)という高セパレーションを維持したまま
低歪みとステレオSN比92dBを確保していました。
オーディオアンプ系には,低雑音,高スルーレイトのオペアンプを多用し,MPX部以降,単体として
100%変調時SN比95dB,対過変調耐性400%,ダイナミックレンジ107dBを実現していました。

その他,強電界と弱電界に対応したRF段の切換,受信中の放送のモジュレーションレベルを表示し
てエアチェック(死語?)の際のレベル合わせの基準とする機能,基準信号を発するRECキャリブレ
ーション機能,遠距離受信時に対応したオートクワイティング・コントロール(オートブレンド)&マニュ
アルクワイティングコントロールなどの機能が搭載されていました。

以上のように,D-3300Tは,ケンウッドが積み重ねてきたすぐれたチューナー技術が集大成された
ような内容を持つ最後の高級チューナーでした。これ以降,ケンウッド自身このような本格的高級チュ
ーナーを出すことはなくなり,FMチューナー自身大きな話題となることはなくなっていきました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介しましょう。 



Dの時代。
前触れ。もしくは進化の結晶。

伝送空間を意識させないCDの音。
デジタルソース放送時の
情報量の多さを聴いて欲しい。


◎より,オーディオ的発想により完成された
 ペンタクルサーキット
◎主要な部分に豪華なパーツを採用
◎SN比100dBをマーク
 ダイレクト・リニアレセプションシンセサイザー
◎ステレオ時のひずみを0.007%まで低減
 ディストーション・コレクティング・サーキット
◎400%過変調にも耐える高ダイナミックレンジの
 ステレオMPX部とオーディオアンプ部
◎高SN比,低ひずみ率を実現した新検波方式・
 ダイレクト・リニア・ループ・ディテクター
◎セパレーション71dB,ステレオSN比92dB。
 クリーンレセプションフィルター・レスの
 DPD MPX
◎テレビ局からの干渉を排除した
 受信特性にすぐれたフロントエンド
◎あらゆる電界強度で高音質受信を可能とした
 RFセレクター

●先進のマルチディメンション・チューニング
●エアチェックミスを許さないRECキャリブレーション
 &モジュレーション・レベルメーター
●16局プリセット
●留守録に便利な3局プログラム機構
●FM多局化に対応したアンテナA/B切換
●IF・WIDE/NARROW切換
●オートチューニング機構
●遠距離受信に有効なオートクワイティング
 &マニュアルクワイティング機構




●SPECIFICATIONS●

●FM部●

受信周波数範囲 76MHz〜90MHz
アンテナインピーダンス 75Ω不平衡
感度 DISTANCE(75Ω) 
    DIRECT(75Ω)
0.95μV 10.8dBf
10μV   31.2dBf 
SN比50dB感度 DISTANCE(MONO) 
           DISTANCE(STEREO) 
           DIRECT(MONO) 
           DIRECT(STEREO)
1.8μV  16.2dBf 
24μV   38.8dBf  
18μV     36.3dBf 
240μV   81.8dBf 
高調波ひずみ率 
   (100%変調) 
    
         
WIDE    100Hz      0.006%(MONO)0.009%(STEREO) 
        1kHz       0.004%(MONO)0.007%(STEREO)      
        50Hz〜10kHz 0.009%(MONO)0.03%(STEREO) 
NARROW 100Hz      0.02%(MONO) 0.03%(STEREO) 
        1kHz       0.01%(MONO) 0.02%(STEREO) 
        50Hz〜10kHz 0.02%(MONO)  0.1%(STEREO)
SN比 
  (100%変調85dBf入力)
100dB(MONO) 92dB(STEREO)
キャプチャーレシオ 0.8dB(WIDE) 2.0dB(NARROW)
実効選択度(IHF) NARROW 100dB 
WIDE    70dB
ステレオセパレーション 
  
WIDE     1kHz        71dB 
         50Hz〜10kHz   60dB 
         15kHz       50dB 
NARROW  1kHz        60dB 
         50Hz〜10kHz   50dB
         15kHz       45dB
周波数特性 20Hz〜15kHz  ±0.5dB
イメージ妨害比   84MHz  90dB
IF妨害比      84MHz  110dB
スプリアス妨害比 84MHz  100dB
AM抑圧比 70dB
サブキャリア抑圧比  75dB
出力レベルおよび出力インピーダンス FM 1kHz 100%変調 固定出力   0.6V/2.3kΩ 
                   可変   1.2V/1.0kΩ



●電源部その他●

電源電圧・電源周波数 100V  50Hz/60Hz
定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) 20W
最大外形寸法 475(W)×88.5(H)×327(D)mm
重量 6.0kg


※本ページに掲載したD-3300Tの写真,仕様表等は1986年のKENWOOD
 カタログより抜粋したものでケンウッド株式会社に著作権があります。したがっ
 て,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
 でご注意ください。

 

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