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るろうに剣心・宗次郎編
感情を封印していた宗次郎が、剣心と戦ううちに動揺しはじめます。
それは、弱肉強食という、志々雄に教わった宗次郎の心の支えがぐらつくことと
同義でした。(強いものが正義という理屈ですから、自分より強い相手、
もしくは自分が勝てるか不明な相手と戦えば、当然生じる動揺ですが、
宗次郎の場合、動揺の原因はそれだけではないようです。)
そして、明かされた過去。
笑ったような顔は、いじめから自分の身を守るために知らず知らず身についた
防衛方法でした。(同様に、あのすざまじい脚力や才能も、米俵を運ぶことで
知らず知らず身につけたのかもしれません。)
気性の穏やかな宗次郎は、身内にいじめられるという過酷な生活の中で、
その日その日を、考えることを止めて生活しているようでした。そんな中、志々雄真実に
出会いました。恐ろしい形相、恐ろしい場面、しかし、宗次郎はなにより
志々雄の強さに興奮しているようでした。
米蔵にかくまううち、不思議な連帯感が二人の間に生じます。
「しょせんこの世は弱肉強食」という志々雄の言葉が
最初は否定的に捉えていた宗次郎の心にじわじわと染み込んでいきます。
その度に思考を止め、「でも、ぼくは...」と思い直す日々。
弱肉強食というのは、ある意味真実です。だから、この理屈を全否定してしまうと、 なにかのきっかけで、全肯定にころんでしまう危険があります。(宗教の全否定者が ころっと宗教に全信頼をよせるのもしかりです。)たいていの人は、そういう失敗を 繰り返しながら、ひとつひとつ慎重に価値を選んで行くものではないでしょうか。 幼い宗次郎には、幼さゆえの危うさと、いじめられるなかで心の安定を求める 装置ができ上がっていたようでした。それは、簡単な理屈に飛びついて、考えを やめるということです。(いじめられるのは、自分が不幸なのは)どうしてなのか、 考えるときりがなく苦しいものです。どうしてが次のどうしてを生み、おだやかな 気持ちではいられなくなる、そして、優しい宗次郎でもいられなくなるでしょう。 きっと、宗次郎は恨みごとをぶつけたりする自分が嫌いなのだろうし、 どろどろした感情をぶつけても大丈夫と思えるほど人間を信頼できなかったのでしょう。 人当たりをかえるよりも、すがる理屈を変えるほうが簡単だったのです。
そして、事件は起こりました。狩りを楽しむかのように宗次郎を追い詰める親族。
助けて、助けて、と言いながら人(志々雄)の所に行かなかった宗次郎。
志々雄が、求めに応じて助けてくれる人物かどうかは不明だし、宗次郎は志々雄が助けてくれる人物ではないと思っていたのかもしれませんが、こういうところにも宗次郎の人間不信が表わされていたように思います。
その宗次郎が頼った先には、剣が...。
追い詰める親族が奪いとったのは、刀のさやでした。
瞬間、宗次郎の中で、封じ込めていたものが爆発しました。
家族全員を殺しうなだれる宗次郎。しかし、その顔は微笑んでいました。
そこから志々雄についてきて現在に至った...という訳でした。 そんな宗次郎が、目に憎悪を宿らせはじめていました。恨みごとを口走るように なっていました。「あなたはあのとき僕を助けてはくれなかった...。」
死などどうでもいいと思っていた自分を命を捨てて守ってくれた体験を持つ剣心、 死にたくないと思っていた自分を誰も助けてくれなかった体験を持つ宗次郎。 その二人が、剣を通して語りはじめたのです。
天剣対奥義。先戦いの刃こぼれが利いたのか、心の勝負だったのか、... 因果関係は不明ながら結果は剣心の勝利でした。
自分が間違えていたと、剣心に新たな理屈のより所を求める宗次郎に、 剣心は、答を与えませんでした。 答は与えられるものではない、自分で探して行くものだ...それが剣心の“返事” でした。 志々雄の理屈にすがった遠いあの日、笑っていたんじゃない、本当は泣いていたんだ.。 自分が自分で考えることを止めていた間に、罪のない人を何人もあやめてきた..。 自分のこれまでを一度に考えると、きっと胸がつぶれる思いでしょう。 ( だからこそ、一気に問題を解決できる答にとびつきたくなるです。) でも、それに飛びつけば、同じことの繰り返しだということに、気付いたようでした。 (気付くことと、できるようになることは別です。^^;)
宗次郎の抱える問題は剣心とは別ものです。安易に答に飛びつきやすいのも事実です。 ですが、やはりこの10年をかけて剣心が辿ってきたように、1から、何年もかけて、 (そしてあるいは一生かけて)答を作り上げていくのでしょう。
宗次郎が志々雄全否定で終わらなかった姿は、奥義の秘密を伝えた所でも分かります。 どんな理由にせよ、やはりあのとき助けてくれたのは志々雄だった...と。 志々雄の中にある、宗次郎がひかれた部分を、それはそれで認められるということは、 宗次郎の心が答を求めて働き出した証拠にも感じられました。
そして、ついに剣心は志々雄のもとへ...。
これまで志々雄という怪物の心の模様が明らかにはなっていません。
彼を復讐に駆り立てる原動力になっているものは何か。
最後の大勝負なので期待している太真樹でした。(97.8.3 niftyにupさせたものを転載)
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