第四幕 義経千本桜より 鮓屋

あらすじ ( by ひのひの )

 鮓屋では娘のお里が両親から今宵奉公人の弥助と祝言させると云われ、もう女房気取りで弥助と戯れている処へ、勘当を受けた兄のいがみの権太がやってきます。親爺の留守をいいことに店に上がり込み、母親のおくらをだまして三貫目の金をせしめます。そこへ弥左衛門が役所より帰ってきたので、慌ててその金を空の鮓桶の中に隠して権太は家の奥に身を潜めます。弥左衛門は持ち帰った首をやはり空桶の中へ密かに隠し、出迎えた弥助を上座に直します。実は弥助こそが三位中将維盛卿で、弥左衛門はその昔維盛の父、小松内府重盛公に大きな恩を受けたことからその恩返しにと維盛を匿っていたのです。難を逃れてきた若葉の内侍と六代君が偶然訪れ、不意の再会に互いの無事を喜び合い、別れてよりの様子を語り合います。屏風の陰でそれを聞き、叶わぬ恋にお里は泣き悲しみますが、梶原が来るとの知らせがあり、気を取り直して維盛一家を上市村へ逃します。この様子を盗み聞いていた権太がお触れのあった三人を捕まえて金にすると云い、金を隠した鮓桶を抱えて駆け出していきます。
 梶原が弥左衛門一家を詮議している最中に権太が内侍・六代を縛り上げ、維盛の首を入れた鮓桶を持ってやってきます。梶原は首実検で維盛の首だと認め、権太に褒美の陣羽織を与え内侍・六代を引っ立てて帰りますが、維盛一家を助けられなかった弥左衛門は不肖の倅に怒りの刃を突き刺します。手負いの権太は維盛の首は弥左衛門の持ち帰った偽首で、内侍・若君に見せかけたのも実は自分の女房小仙と倅の善太だったことを語ります。改心した権太が維盛を助けるために打った大芝居だったのですが、結局己の命を縮めることとなったのです。

出番を前に親子のツーショット。
父親が女で娘が若君って逆だぁ   

           

     ちょっとおすまし           「今宵弥助と祝言さすと云わしゃん
    可憐なお里               したが、ありゃ嘘かいなぁ。」


          

「弥助さん、お前夫婦ごと知って        母おくらから金を騙し取る権太
 いやしゃんすかえ。」              「それでふっつり性根を直せよ。」

                

「此の枕は誰の枕、主のない此の枕      若葉の内侍・六代君  
 どこぞそこらに捨てとこか。」     「一夜の宿をお頼み申します。」

 
         

         維盛卿と六代君     お里の口説き(切々と心情を語ること)の場面 
                      「これまで義理に契りしとは情けないお情けに」 

       

「一生の頼み、どうぞ見逃してくだしゃんせ」 「ええ、きりきり面を上げねえか」  

          

 偽首と知りつつ詮議する梶原景時   父弥左衛門に誤解され斬られた権太
     「維盛が首に相違なし」      「あ、ありゃこの権太が女房、倅。」


「謀ったりと思いしが、あっちが何も皆合点、
思えばこれまで騙ったも果ては命を騙らるる
種と知らざる浅ましさ。」 南無阿弥陀仏

 義経千本桜は滅亡した平家の武将平知盛、維盛、教経の三人が実は生きていたとの設定で繰り広げられる壮大なストーリーで、仮名手本忠臣蔵、菅原伝授手習鑑と並んで三大歌舞伎の一つとされる人気狂言です。題名とは裏腹に主人公は平知盛、いがみの権太、狐忠信の三人で、殊に鮓屋の含まれる三段目では義経とは全く関係の無いところで話は展開します。主人公の悪党権太が、劇中で善人に立ち返るもどりと呼ばれる手法が使われており、関西地方で今でも性悪者を「ごんた」と呼ぶのはこの芝居に由来しています。
 ところで鮓とは今日私たちの食べる握り寿司や押し寿司等とは違い、塩漬けの魚を米飯に漬け込み飯がボロボロになるまで長期間発酵させその魚を食べるという、今日滋賀県に伝わる鮒鮨のような「熟れ鮨」の一種です。したがって舞台の作りも現代の寿司屋の構えとは全く異なっており、小道具で使われる鮓桶も底の深い物となっています。

配役

いがみの権太    浜野良一
弥助実は平維盛   松江義人
弥左衛門      八木成道
お里        樋出 誠
おくら       川崎保志
若葉内侍・小仙   北方晋幸
 六代君・善太    樋出有紀子
梶原平三景時    大森裕樹
 村役人・捕り手   浜野雄一郎


振付師   矢田 徹
太 夫   中村 巌
 三味線   島崎フジエ


         

  第三幕・池田中学校女子による      第五幕・中山農村歌舞伎保存会による
「大石東下り・島田の宿」            「恋飛脚大和往来・新口村」

 

 なお、本ページの舞台写真は友人中村 徹君、土庄町助役木曽秀平様のご厚意によります。

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