恋女房染分手綱 重の井子別れの場

解 説
近松門左衛門原作。中山歌舞伎では実に65年ぶりの上演です。三吉は歌舞伎の子役の中でも一番の大役で、その巧拙が芝居の出来を左右します。一方、重の井は子役の三吉の演技に喰われてしまわないよう、又逆に三吉を引き立てる事が出来るかどうかも重の井の演技にかかっています。調姫(しらべひめ)は「いやじゃいやじゃ」と言い張るところから「いやじゃ姫」とも言われ、また弥惣左衛門も赤い羽織を着ているところから「赤じじい」と呼ばれるなど、脇役にすらあだ名が付く程人気のあるお芝居です。
あら筋
丹波の大名、由留木(ゆるぎ)家の息女調姫は親の約束により入間家へ嫁入りすることとなり、乳母の重の井達をお供に東海道を下っていきます。水口の宿にやってきたとき入間家の家老本田弥惣左衛門が東から姫の出迎えにきましたが、幼い姫は東へ行くのはいやじゃと駄々をこね始め出発できません。一同が困り果てているところへ、門前で馬子が道中双六という面白い遊びをしているとの知らせが入り、馬方の三吉を御前へ呼び入れます。弥惣左衛門も巻き込んで皆で双六遊びをしたところ、姫の機嫌が直り早く東へ行こうと言い出して出立の用意にかかります。
一人取り残された三吉のところへ重の井が褒美の菓子を持って現れますが、三吉は重の井の実子与之助であることがわかります。重の井は意図せぬ再会に胸迫りますが調姫の乳母という大事な役目であり、姫への忠義と母としての情愛との板挟みになり、心は千々に乱れます。心を鬼にして親子の名乗りを拒む重の井ですが、我が子を思いやる気持ちも消す事が出来かねません。しかしそんな重の井のいたわりに対して三吉は「母さんでもない人に、金貰うはずもない」と与えられた金子を投げ返して泣きじゃくります。
そんな折り、姫君の出立の用意が調い、三吉は馬子唄を謡いながら名乗りの許されぬ母を見返りつつ去り、重の井は身を切られるような想いで我が子を見送るのでした。

 

       

「いやじゃ、いやじゃ、いやじゃわいなぁ。」            アイと答えて三吉は、片肌脱いで捌き髪

 

       

「聞けばそなたは道中双六とやらを持っていやるげな。」          「さあ道中双六の始まり、始まり。」    .

 

       

「ハイシ、ドウドウ、お馬が通る」「コレそれは身共の刀じゃ」     「返して欲しくば赤と言え?しからば、赤。」「ベー。」

 

       

「ご褒美とあって、これなる御前のお菓子を遣わす」       「重の井様とはお前かえ、そんならわしの母さんじゃ」

 

       

草鞋作り、母さん父さん養いましょう        飛び付いて懐に抱き入れたさ  .

 

       

   「人に見られぬうち、さあ早よう、早よう行きや」         「コレ三吉もう行きゃるか、マ一度、マママ一度顔を」  

 

       

       見れば見る程胸迫り                「山川で怪我しやんなや、必ず患わぬようにしてたも」

 

       

「親でも子でもないならば、病もうと死のうといらぬお構い」    「エエ胴欲な母さん、よう覚えていらっしゃれやアアア」

 

       

「オオお乳殿、是に御座ったか。三よワレもいたのか」             「坂は照る照る、鈴鹿は曇る」      

 

       

「お立〜ち〜」                                     .

 

配 役

乳人重の井        樋出 誠
馬方三吉          空林祐里
  調姫        
     中畑あいみ
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本田弥惣左衛門    久保 政
奥女中若菜        早倉知晶
吉田文吾左        大森裕樹
腰元1            箭木和則
腰元2            矢田良和

 

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