町のあちこちにパブリックアート/富山県高岡市



○視察の概要

   高岡市は古くから美術工芸の町、伝統的鋳物技術の銅器の町。「ものづくりのまち」として
  その名が知られている。アートに対する思いも強く、すでに昭和50年代から「芸術の森」「彫
  刻のあるまちづくり」といった構想を進めてきた。
   この構想をさらに進めて、@歩いて楽しいまちづくり A「ものづくりのまち」を情報発信 
  B市民の参加と協働による市民のための都市空間の創出 を掲げ、市民参画によるアート
  なまちづくり、すなわちパブリックアート構想を進めている。

○視察の内容

  ・「高岡市パブリックアートまちづくり懇話会」を発足(平成12年)
   市民、アートの専門家、産業界が参画してこれからの構想を策定、5回の審議を経て「パブ
   リックアートたかおか構想」を市長に提言した。
   基本的な考え方は「市民の参画」と「地場産業振興」
  ・これに基づき平成13年度から10年計画で推進。
   「高岡市パブリックアートまちづくり市民会議」を設置(平成13年)。事業推進の立案、
   協力を行う。構成は専門家と公募の市民など53名、5つの部会を設ける。年間6回の全体
   会のほか、連絡会、各部会を開催する。市は費用弁償として全大会に3000円、部会に
   1000円を負担している。5つの部会は、@企画推進部会 A創作部会 B教育研究部会
   C情報広報部会D管理支援部会
  ・事業の展開
   H13事業として「伝えの扉」を製作 (1995万円)
   H14事業として「アルチザン」を製作(1986万円)
   H15事業は現在推進中。
  ・アーティストの選定基準
   海外アーティストでもよいが、富山県内で連絡が取れること。
   地場産品を使用すること。
   できるだけ、市内で製作すること。
  ・市民の関与
   アートマップを作成、散策会を実施。また市民は作品の寄付、民有地の提供、作品や周辺の
   点検清掃というかたちで参画する。
   スタンプラリー、まちづくりワークショップを展開する、など。

○視察の感想(文責内田)

   商店街のアーケードを出たところに、H13年度事業で完成した「伝えの扉」の作品があり
  ます。
   鳥獣戯画のなかのポピュラーな1シーン、ウサギとカエルが天秤棒でなにやら食物の入った
  釜をかついで行くところを、立体的に鋳物で製造。その行く手には大きな扉が半開きとなって
  おり、扉の上には地元ゆかりのサルが座っていて、そのまた行く手を望遠鏡で探っている姿。
  その先には階段状のものがあり、その最上段で、今度は小さな金色のウサギがさらに駆け
  上がろうとしている姿が現されています。
   これはそれぞれ、過去、現在、未来を表しており、地面にはメッセージボードが埋め込まれる
  ことにされていて、ここには市民から募集した「未来に伝えたい言葉」が、埋め込まれます。
   企画立案から作品の清掃管理まで、市民を巻き込んでのアートの創作。高岡市がこの構想
  で目指すものを見事に取り込んでいると思われます。
   担当者の話では、「アート」ならわかるが「パブリックアートとは何なのか」、市民にはなか
  なか理解してもらえなかったとのこと。まさしく、商店街を抜けてこの物体?に出会ってとして
  も、そうした「解説」をしていただかないと、その真意は理解できないものがあると思います。
  こういうことに税金を投入することに、賛否もあるでしょうし、また作品そのものへの好みもあ
  ると思います。
   そこからほど近い公園の中に、翌14年度の作品「鎮守の杜のアルチザン(職人、の意)が
  展開されています。公園の中心にそびえるケヤキの大木を作品の部分と捉えて、市民が憩
  うスペースをメルヘン感覚のあふれる空間にしています。
   斜面に施された絵画は小学生の手になるもの。市民も製作の一員となり、訪れた市民が
  それぞれに物語を作り出すことができるような工夫がされています。
   視察を終えて、夕暮れの時刻までさまざまに町を歩いてみました。
   昭和50年代から取り組まれた「芸術の森」で19基、「彫刻のあるまちづくり」で15基
  と、市内にはいたるところに作品があり、歴史と伝統に根ざした観光資源である土蔵造り
  の建物の保存地区、赤レンガの銀行、高岡大仏、瑞龍寺、前田利長墓所などと相俟って、
  新しい観光資源を形成しています。彫刻による観光資源といえば境港市の水木しげるの
  彫刻が思い浮かびますが、ここ高岡市では、「市民の参画」「地場産業の振興」という
  コンセプトでさまざまな彫像、モニュメントに出会うことができます。
   ひるがえって丸亀市のことを考えたとき、城内をはじめさまざまなところに、確かに散発的
  に、彫像、歌碑などが設置されていますが、それがアートとして体系づけられ、観光資源と
  されたり、市民の足を運ぶ場所として喜ばれたりしてはいません。ましてそこには市民が参
  画するという視点はありません。一方、アートという面では、猪熊美術館のほか2つの立派
  な美術館を擁しており、決して芸術面で他市にひけをとるものではありません。
   高岡市が、伝統産業である鋳物と、市民の参画というふたつのことを結びつけて発想した
  とき、そこに「パブリックアート」という構想ができあがったのでしょう。丸亀市がただちにこ
  れを追従して成功するとは考えませんが、丸亀市も芸術と市民との関わりを深める努力を
  これからしていく中で、市民パワーを発揮できるまちづくりに取り組むことが大切であり、
  そのための参考になるのではないかと思いました。
   先日、「猪熊弦一郎生誕百年記念回顧展」が始まり、その開催記念行事に参加する中で
  さまざまな方々と話をする機会に恵まれました。
   丸亀の発展を親身に考え、憂えておられる方も少なくなく、太助灯篭をスタートに、近く
  にはうちわのミュージアムもあり、お城までの散策路を作ってまさしく本市や近隣市町にゆ
  かりの作家の作品を並べ、アートな町を演出する、またこんぴら街道も重要な資源であり、
  参道に点在する道案内の石の標識なども活用する、などのビジョンもあり、また現代アート
  で世界に名をはせる猪熊芸術と美術館の存在をそこにどう位置づけるか、などなど、考え
  るだけで楽しいまちづくり構想なのですが、いざ現実にとなると、予算面をはじめいろいろな
  困難に立ちはだかれます。
   わたしが以前から憂慮していることは、市の施策がいま大きく欠いているのは、「市民
  参画」という視点だということです。言葉上では「市民とのパートナーシップ」という言葉は
  言い古されるくらい使われていますが、そこに不可欠な市と市民との「双方向」のあり方づ
  くりには、市は現時点で、まったく成功していないと、わたしは思います。近年の丸亀市の
  大きな争点であった「学校2学期制」と「合併問題」の二つを取り上げても、これはまったく、
  市民を置き去りにした市の独走が目立ち、市民不在のままに進められた、という印象が否
  めません。担当者には申し訳ないですか、市のホームページを見たとき、それはどなたにも
  納得していただけると思います。
   わたしは高岡市のパブリックアートを訪問して、市民が参画している、市民が参画できる
  ようなしくみがある、市は市民を参画させようと懸命になっている、そういう姿勢をまず強く
  印象に残しました。丸亀市においてアートがどう位置づけられるのか、またどこにどんな彫
  刻を立てるのか、という議論の前に、わたしは、市がもっともっと市民を前面に出す、主人公
  として立ってもらう、自覚してもらう、そのための努力をしなければならない、ということを思
  いました。このことをさらに声高に、行政に訴えてまいります。
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