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○十和田市現代美術館                          青森県十和田市

1.視察の意図

「アーツ・トワダ」。
 現代美術館が単体でそこに存在するのではなく、同市のメイン道路である
 「官庁街通り」全体をアートととらえ、
 ・アートな通りづくり
 ・現代美術館
 ・アートイベント
 の三者で街ごとアートにしてしまうというコンセプト。
 05年から5年がかり、10年春にグランドオープンを迎えます。
 現代美術館を持つ丸亀市に参考になればと思い、視察を行いました。

2.概要

 @街のアート作品
 
  通りの空地や歩道ににもアートを設置。鑑賞や体験を通じて、
  来訪者に「楽しさ」「面白さ」「驚き」を提供。

 A現代美術館
 
  08年4月にオープン。
  この美術館のために造られたアート作品22点が、展示室の中だけでなく
  中庭にも廊下にも。
  通りに開かれた「窓」としての美術館。
  通りからは作品そのものに見える美術館。
  大小さまざまな形状の16個の「箱」がつながってできている。
  基本的に「1箱1作品」。
  ほかに企画展示室1〜3、市民活動スペースを備える。

 Bアートイベント(街中美術館)
 
  商店街、十和田湖、集落など市内各所で展覧会を開催。
  まちの魅力を最大限に活かす文化交流の場、アートと街と人が
  出会う場をつくる。

3.十和田市現代美術館の詳細
 
 @運営概要
 
  開館時間 展示スペースは9〜17時
         休憩スペース等は9〜21時  月曜休館
  入館料 一般500円、高校生以下無料

 A設計者 西沢立衛(にしざわりゅうえ)氏。
  プロポーザルで選定。

 B館の特徴
  ・アートを体験する場としての常設展示室
  ・芸術文化活動を行う場としての企画展示室
  ・地域情報を発信する場、休憩スペース。ショップでは地元特産物も販売
  ・市民活動スペース。ワークショップや趣味の教室を開催できる。(1時間330円)
  ・「アートで通りを活性化させたい」。館のスタートは「まちづくり」
  ・ゆえに館長室とか収蔵庫を持たない。
 
 C運営
  ・総工費(土地含む)15億円、維持費年間5000万円
  ・市職員4人、専門職員2人、計6人体制

 D入館者の状況
  ・県下市外からの来場者が4〜5割、県外からの来場者が3〜4割、市民は2割程度
  ・20年度入館者は17万人。当初見通しは45000人(150人/日×300日)だった。

 E担当者の弁
  ・未だ姿のないものを市民に理解してもらうのは難しかった。
  ・そもそもの発想は空地活用策だった。市民アンケートでは、駐車場にすべきとか、
   コンビニがいいとの意見も出た。そこにアートの拠点を作るというところまで、
   紆余曲折。予算は毎年度、議会で修正を受けた。
  ・入場料を安く設定した。気軽に来てもらうため。気に入ってもらって口コミで拡大。
  ・情報時代ではあるが、人々は何にでも公平に関心を持っているのではない。好きな
   ものしか見向きもしない。見向きもしないものの中にも知らない価値、知らない世界が
   ある。気軽に入ってもらえる雰囲気と設定にして、アートを体験し、価値を知ってもらう
   こととした。
  ・教育委員会でなく観光商工部が所管。
  ・美術館のオープンを機に、これまで低迷していた十和田電鉄の営業がVターン。
   バス利用者もこれまでの3〜4倍になった。

4.感想

 NHKの美術番組「迷宮美術館」に取り上げられ、私はこの美術館に関心を持ちました。
 ネットで調べると、館の一角に「市民活動スペース」が設けられています。私の議会活動の中で、「ミモカをもっと身近に」との声をしばしばいただきますが、ここに何かヒントがあるのではないかと、視察させていただきました。
 そもそもは空地対策、と聞いて驚きました。そこにアートの拠点を、と発想した当時の市長さんをはじめ、関係者の先見性に心打たれます。作品はすべてこの美術館建設のための言わばオーダーメイド。奇抜で、とっつきにくくて、意味がわからず、美しいわけでもない、と言った市民の当惑が、私にも聞こえてきそうです。それを乗り越え、アートのまちづくりを標榜した当時のリーダーたちのご苦労がしのばれます。
 現在のところ、滑り出しは好調、というより望外の入館者と全国への話題性でうれしい悲鳴といった状況のようです。その結果として、かつて反対していた市民や議員の皆さんも少しずつ、理解者になってくれているようです。
 上記のように、現代美術館が単体で立っているのではなく、この通りをメインとして市のあらゆる場所をアートの場にしてしまうという発想。美術館の建設と運営が、このような壮大なグランドデザインのもとで位置づけられていることは大きな説得性を持つと思います。いわば市の総合計画の一角として、そのコアとして位置づけられた美術館というのは、確かな裏づけがあってすばらしいと思います。
 ひるがえって丸亀市ですが、猪熊弦一郎現代美術館の設立意図は意図として、これを市のまちづくりにどのように取り込むのか、再構築するのかが重要だと思います。もちろん、十和田市のマネをして足りるはずもありません。「教育委員会ではなく観光商工部」というところにも、ひとつのヒントがあるのではないでしょうか。
 ちなみに、あちこちでチラシを収集する癖のある私は貴重な一枚をもらって帰りました。題して「アートまちづくり協賛店 ショップ&グルメガイド」。ポケットサイズに8つ折りできるようになっており、広げればマップ。ウラ側には協賛店がズラリ。「美術館の半券ご持参の方には色々なサービス」とあり、各店それぞれ「お楽しみプレゼント」とかお食事するとコーヒーサービス、とか、お会計時10%オフ、などなどアピール。電車バスタクシーの電話一覧に十和田電鉄の時刻表まで。発行者は「十和田市商工労政課。
 大きな、まちづくりデザインもこうしたコーヒーサービスに裏打ちされているのだと、感じ入ります。
 担当者からいただいた説明の中には、アートを通じてのまちづくり、というコンセプトのほかに、アートを通じての人づくり、文化のチカラを信じ、発信することの大切さを強く確信しておられる、そんな自信が感じられました。イノクマ芸術をさらに宣揚しながら、それが丸亀市民のアイデンティティとなり、市民の誇り、強力な発信アイテムとして「市民権」を得るところまで、館関係者だけでなく私たちまちづくりに絡むすべての人たち、そして市民がテーブルに着く、そのような場作りがまず急がれると思います。
 美術館が面している「日本の道路百選」に選ばれている官庁街通りについて一言付け加えます。
 昭和30年、いわゆる昭和の大合併のときに、この広々とした道路が整備されたそうです。通りには看板類が必要最低限しか許されません。昭和30年の大英断が、今日のこの美しい通りを残させたのです。
 政治というのはこのようになければならない、と考えさせてくれました。昭和の英断に続き、この平成のアートのまちづくりが将来、大きく評価され、新しい十和田の礎となることと思います。私どももはるかな将来の市民に評価いただけるよう、いま、せっかくのアートの資産、ミモカを活用してのまちの再構築を構想するべきではないでしょうか。視察を終えた後も、映画の上映会やコンサートなど、ミモカは市民に足を運んでくれる施設にと、脱皮を試みているようです。その動きを大いに歓迎し、さらに枠組みの大きな、構想構築が必要と思います。


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